第46話 解散総選挙

 俺がこの【自白】カードをどう使えばいいのか考えようとしたところ、それどころではなくなった。

 見覚えのある女性が肩で息をしながら走ってやってきて、

「今入ったニュースです!遂に国会が解散しました!解散総選挙です!」

 これはどう言う事だと思ったが、

「解散した?じゃあ俺達もう権田のくそ野郎を恐れず家族を助けに行けるんじゃないか?」

 拘束している20人からそんな声が上がった。

 権田のくそ野郎とは、どう考えても総理だったあいつの事だろう。


 因みにニュースは国立学校の職員がもたらしたようで、俺達に付いていた女性達まで駆け付けてきたようだ。何でこんな場所までスキル学校の職員が?


「お久しぶりです岩ケ谷夫妻。」

 ・・・・何故知っている?

「隠しても仕方がありませんので先に行ってしまいますが、私達はずっと岩ケ谷夫妻を見守っておりました。撮影もしていたんですよ。」

 知らんかった。

そしてお前達か!と思ったが言わないでおこう。

言った所で世に広まっってしまった事実は変わらないからな。

「そういう訳で、一度スキル学校へ戻りましょう。」

「それはいいのだが、あいつ等どうするんだ?」

「こちらで処理いたします。勿論切り刻んだりはしませんのでご安心下さい。先ずは改編・・させ岩ケ谷様に忠誠を誓う頼もしいスキルホルダーに必ずなっていただきますのでのであわせてご安心下さい。」


 何故改編なんだ?なんだか不穏な気配がしてきたぞ?

 まあ色々突っ込みどころはあるが、先ずは落ち着くためにスキル学校へ戻るか。


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


 スキル学校へ戻ると、帯野さん達から祝いの言葉を沢山かけられた。

 特に女性からは一樹に祝いの嵐がすさまじく、暫く身動きができなかった。


 そして何故ハンター達が大型生命体と戦えていないのか、ここに戻ってすぐにわかった。


 ハンターもそうだが、【清掃人】【解体人】【運搬人】として活動してくれている人々まで件の作業を黙々とやっていたのだ。


「岩ケ谷さん!元ハンターで新たなスキルホルダーとなった方々の住まいや活動に関してですが、数が多いのですぐには解決できませんが、スキルを駆使し新たな建物を急遽建造中なので、もうすぐ住めるようになりますよ!」


 どんなスキルを使っているんだ?

「そうか、そう言えば俺って居場所がとか言って出ていったんだよな。放置して済まなかったな。」

「いえいえ!もとはと言えば僕が実験したかったのを岩ケ谷さんが受け止めてくれたお陰ですからこれぐらい大した事ないですよ!」


 スキルが増える作業、問題点も出てきたらしい。

 個人のキャパを超えてしまうと、急に体調不良になるとの事。頑張っても5つ程度にしておく必要があるそうな。

 増えすぎたスキルを【没収】スキルで取り上げれば解決するのだとか。


「いよいよ解散総選挙ですよ!岩ケ谷さん!今後の(日本の)為に頑張って下さい!」

「俺の頑張りで何が変わるかは知らないが、できる範囲で頑張るさ。」

「より良い(日本の)未来のため、岩ケ谷さんなら期待以上の事をやってくれると確信しています!」

「煽てても何も出ないぞ?それより権田はどうなったんだ?」

「ああ、それですがもう駄目ですね。それよりも【修復】と【複製】スキルのお陰で街中快適になりつつあるんですよ!こうなると我々(が推す政党)が圧倒的ですよ!」

 何が圧倒的なんだ?とも思ったが、暫く現状の確認をしていると、

「近くに大型生命体が出現したようです!」

 と連絡が入った。

 皆が俺を見る。

 何で俺を見るんだ?

 ここには元ハンターが沢山いるじゃないか。それなのになんで俺を見る?

「まあ岩ケ谷さんがリーダーみたいなものですから、将来の(政権を担う)為にもここはガツンと行きましょう!」

 俺はこの時、俺の立場というのを理解していなかった。

 1ヶ月の間一樹と2人っきりで過ごしている間に起こった変化、特に俺に関する変化を知らなさ過ぎたんだ。

 そして知る間もなく事件が次々と起こりどんどん深みにはまっていく、という名状しがたい状況に陥ってしまっている。


「大型生命体を放置するのはまずい。行ける連中は俺も行くから仕留めに行こう!」

 そう声を掛けると相当数が、

「「「「「おお!!!!!」」」」」

 と応えてくれた。

 言っておくが俺にリーダーシップはないぞ?

 そんな性格でもないし。

「大丈夫、俊也さんならうまくやれるわ。」

 一樹がそんな言葉を掛けつつ、先行していった。

「そうあってほしいね。」

 俺は何でこんな事をしているんだろう。




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