第44話 尋問
さてここに【封印】という何とも恐ろしげな名称のカードがある。
その名の通り封印をする訳だが、まあ普通はスキルやカード、若しくは魔力を封印する、つまりスキルを使えなくする為もカードだと思うよな。
今この場にスキルホルダーが混じっていればカード無しでも自分のスキルを使う事ができるが、そうでなければ基本カードを通してでしかスキルを使えない。
俺と一樹は、俺達を取り囲んできた全員を、こうして地中に半分埋めた状態で拘束する事に成功。
所持品を全て奪い取り、事実上無力化させる事に成功した。
後はこいつ等をどうするかだ。
尋問する?
素直に喋ってくれたら痛い目に遭わずに済むんだが。
それと一応【認識阻害】を使っているから顔や姿が正しく見られているかどうか。
馬鹿正直に素顔を晒すつもりはない。
一樹は仮面を持っているが、俺はない。
そうそう、防毒マスクならあるぞ?
【収納】で、探す。
何か・・・・ヘルメットがある。
ヘルメットを手にし着けておく。
声はどうするか・・・・そう思っていると、
『これを使えば声が変わるわ。』
声帯変換の魔道具らしい。受け取り喉につけた。
{ど、どうだ?}
一樹に声を聴いてもらった所、
『全くの他人ね。』
正常に機能したようだ。
・・・・
・・・
・・
・
襲撃者20人全て顔と左手だけを地面から出した状態にして、一応会話ができる状態にした。
一樹は【記録】カードを取り出し、カメラにセットした。
まあ何にセットしてもいのだが、何処からカメラを用意していたんだ?
カメラと言っても昔のカメラだ。
フィルムを使って撮影していた時代の骨董品だ。
尤もレントゲンなんぞはフィルムだ。
電子機器が発展していた頃はデジタルで撮影していたそうな。
今もスキル学校に表示できる装置が機能しているそうだ。
何処かで発掘した?
帯野さんと2人の女性スキルホルダーは、とある部屋に設置してある装置を見つけ、鑑賞したらしい。
信じられない事に動画だったようだ。
しかも音声付き。
随分興奮したらしいが一体何を視聴したのだろう。
『岩ケ谷さんも竹嶌さんと一緒に見れば盛り上がりますよ?』
だそうだ。
まあ機会があれば一度一緒に見てみようと思うが、何だろう。
さて、あまり楽しくはない尋問の時間だ。
俺は20人の前に姿を現した。
{やあ諸君、襲撃失敗、残念だったが俺達を取り囲んで何をしようとしていたのか確認させてもらってもいいかな?}
一応首を上下左右に振る余裕はあるはず。
まだ声も出ると思われる。
誰も答えない。
{私も鬼じゃないから、ちゃんと答えてくれればこの場から出してあげようと思っていたが、協力してくれないのであれば私はこの場を去る。ついでに言えば素晴らしいスキルがあるんだ。地面をガッチガチに固めておくから、放っておけば1日足らずで君達は肌呼吸ができないまま死ぬから。}
「何て事をするんだ!だからこんな事をしたくなかったんだ!」
「俺もそうだ!妹を人質に取られて・・・・だから権力者って嫌なんだ!」
おっと、勝手に喋り始めたぞ。
「お、おいコラ喋るんじゃない!人質が殺されてしまうぞ!」
「その前に俺達が死んじまう!」
「そうよ!まだ死にたくない!だけど家族を人質に取られたらどうしようもないじゃない!」
20人中5人が女性だ。女性までこんな事に巻き込ませるとは。
{なあ、総理はもう失脚しているが、まだ従うのか}
まあ大体の見当はついているから、かまを掛けてみる。
「お、俺は喋ってないぞ?誰だよ依頼主の事喋った奴!」
「私喋ってないわ!」
「俺何も言ってないが、バレバレじゃないか。」
チョロいぞこいつら、分かりやすい。
「まあそういう訳で察してくれ。だからその、そういうスタイルで聞いてくれると俺達もまあ、そんな感じだ。」
どうやら喋れないが分かるようにすれば答えてくれるらしい。
{これは答えてくれ。あんた達全員ハンターか?}
誰も答えない。
{気が付いていると思うが、片掌だけ出ているよな?まあ人差し指だとイエスとか人差し指と中指だとチョッキチョキ、つまり切っちゃうって言う・・・・}
するとどうだろう、全員今ので理解したのか、人差し指だけを立てている。
総理、人望なさすぎ。
そして人質使ってハンターに何かをさせるって・・・・もう終わったな。
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