第40話 墓穴を掘る
俺と一樹はひっそりと挙式を行った。
お互い身内はいない。
その後暫くは温泉につかりながら美味しい食事と酒にありついて、日本の今後を考えていた。
あの総理が日本を率いているようでは未来はない。
かといって俺が代わりに選挙でとっちめるような気概はない。
未だスキルホルダー至上主義を掲げているからな。
少し前までハンターだった俺と一樹だからこそ、スキルホルダーとハンターの立場にとんでもない差がある事を痛感していた。
だからスキル学校で帯野さんの行動に協力していた。
ぶっちゃけ彼は然程深く考えていなかったのではなかろうか。
だが俺は違う。
ハンターの立場は劣悪だ。
ハンターとしての活動は任意でなく強制だからだ。
法律でそう制定されている。
片やスキルホルダーはカードを注入する事を法律で決められているが、他にやる事と言えば子作りだ。
俺はこうした差別を無くしたいと考えていた。
そしてチャンスがやってきたが・・・・総理を見てそのチャンスを棒に振ってしまう発言と行動をやらかしてしまった。
「俊也さんの行動は間違ってないわ。」
一樹がそう言って慰めてくれるが、それでは何も変わらない。
「もう少しだけ様子を見て、俺達の周囲に変化がなければ行動を起こそう。」
・・・・
・・・
・・
・
1ヶ月経った。
てっきり国から追手がかかると思っていたがそれがない。
俺達を捕まえようという気概さえないのかあの総理は。
英気を養ったし、俺と一樹は短いながらも充実した休みを・・・・新婚旅行を終える事にした。
で、大きな街に出て驚いた。
どうやらあの総理、俺と一樹に対する扱いの失敗を相当突っ込まれたらしく、内閣総辞職に追い込まれていた。
しかもそれで収まる気配はなく、解散総選挙が近いとか。
出る杭は打たれた、という所か。
「それ違うわよ。」
「あれれ、違った?」
「ああ云うのは墓穴を掘ったって言うのよ。」
「うう、もっと学ぶ機会が欲しかった・・・・」
そんなバカなやり取りをしていると、いつの間にか俺と一樹はさり気なく囲まれていた。
「人間相手はどうするかなあ?」
「【韋駄天】使う?」
見た所スキルを使える人達ではなさそうだが、一体どうして俺達が囲まれているんだ?
俺はカードを手にし、取り出そうとした丁度その時、
「大型生命体が現れたああ!逃げろおお!!!!!」
何というタイミングだろう。
「一樹、行くぞ!」
「ええ、俊也さん!」
周囲が慌てだしたのを尻目に、俺達2人は声がした方へ向かって駆けだした。
多分近いのだろう。
「先ずは【総合武術】!」
相手が何か分からないからな。
毒持ちだとなるべく早い対応をしないといけないが、そんなに沢山手に入るカードでもない。
だからこその自前のスキルだ。
【総合武術】は身体能力も引き上げてくれるので使い勝手がいい。
まあ使ったカードは【修復】スキルでどうにでもなるから、ぶっちゃけどんなカードでもあまり気にせず使えたりする。
現場に到着した。
・・・・くっさ!
其処に居たのはアメリカザリガニだった。
日本のザリガニだと大型化しないから間違いない。
そしてもうひとつヤバい気配がした。
「カ、カメよ!」
所謂ミドリガメ、何だったかな・・・・ミシシッピアカミミガメだ!
そしてまだべつのがいた。
「カエルかよ。」
ウシガエルという奴だな。何で一度に3種類も出てくるんだよ?
臭いがアメリカザリガニは後回しだ。
あれは本来凶暴だが、大型化すると意外に大人しい。
やばいのはカメだ。普段の動きは遅いが、大型化すると恐ろしく速いからな。
今は首が出ている。引っ込まれると厄介だ。
「カメとカエルどっちがいい?」
「カメ!」
「じゃあ俺はカエルをやる!」
俺は得物を投げた。
そしてそのままカエルの頭に突き刺さり、
「グゲ―――――――――――――――!!!」
っと気持ち悪い大きな鳴き声を発し、そのまま倒れた。
一樹はいつもの如く剣を一閃。
あまりもの素早さにカメは自分の首が切られた事に気が付かないまま、首を引っ込めた。
そして暫くすると甲羅から血が出てきた。
後はザリガニだな。
殻が硬いんだよなあ。
だが目を狙えば何とかなるか。
俺は再び得物を投げた。
眼に突き刺さり、ザリガニが暴れる。
「そこです!」
暴れた拍子に腹を見せたザリガニ。
それを一樹が見逃すはずもなく剣を一閃。
ザリガニは己が切られたのを悟ったのかどうか、そのまま倒れ動かなくなった。
得物が刺さったままだったので、俺は力いっぱい引っこ抜いた。
しかし遅いな。
地元のハンターは何をしているんだ?
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