第39話 国の象徴そのものだな
「おいこら!私を置いていくのか?」
「帰ったら鍋食べたいなあ。」
「私は熱燗と一緒に・・・・」
俺と一樹はそんな話をしながらゆっくりと歩いていた。
「私は権田、権田だぞ!権田内閣総理大臣だ!その私を置いていくというのかね?」
俺は一瞬で戻った。一樹もだ。
本当は一瞬ではない。走ったんだが。
だがまだ【韋駄天】スキルの効果が残っているので、素人目には瞬間移動に見えたに違いない。
「・・・・あんたが内閣総理大臣というのであれば、日本の未来は絶望ですね。」
俺は反吐が出た。このでっぷりと肥えた、油ギッシュな全てがムカついた。
別に肥えている人を否定している訳ではない。
いや、否定しているのか?
ハンターには肥えている人は例外なくいない。
肥える=死につながるからだ。
俺も何度か見た。ハンターなのにでっぷりした奴等を。
そうした連中は例外なく短命だった。
速度に勝る大型生命体に出くわしたが最後、追いつかれ食い殺されていたからだ。【韋駄天】スキルを使おうが、腹がつっかえてはスキルを活かせないのだ。
だから俺達ハンターは体型維持に気を遣う。
「何を言うか!私は選挙でだなあ!」
「金でしょ金!」
「ハンターのくせに生意気言うんじゃない!」
・・・・人の話を聞いていなかった?
「先程も言いましたが、私達はスキルホルダーです。」
一樹の怒りは恐ろしい。静かに喋る時の方が数倍怖い。
「なん・・・・だ・・・・と?何故スキルホルダーがハンターの真似をするんだ?」
「総理、あなたは恐らく僕達を見に来たのでしょう。つまり私と彼女がハンターからスキルホルダーになった、多分国内初の事例ですよ。折角今後に続けば、と思い色々と情報提供をやってきましたが、あなたが総理であり続ける以上、これ以上の情報公開はしません。さあ行こうか。」
「ええ、私の素敵なパートナーさん・・・・素敵だったわ。」
今度こそ去ろう。
取り残されたハンターが可哀想だが仕方がない。
「後は頼んだよ!目的地は分かるね?」
「あ、はい!スキル学校ですね!」
「そこで待っているよ。待てればだけれどね。総理も早く来ないと俺達本当に日本を出てしまいますからね。」
「そんな事が許されるとでも思っているのか!」
「アメリカなら大手を振って受け入れてくれるでしょうね。」
「私フランスがいい。」
「あーヨーロッパもいいな。ドイツやイギリス辺りも喜んで受け入れてくれるぞ?」
「分かったから!待ってくれえええ!!!!!」
俺は本当にやばくなったらどうしようと内心ドキドキしながら総理をその場に置いてスキル学校へ戻った。
・・・・
・・・
・・
・
「え?スキル学校を出ていくんですか?」
俺は戻って直ぐに帯野さんと会った。
「日本の総理はクズ過ぎた。俺と一樹はかなり嫌われただろうから、もうこの国にはいられないさ。」
「そういう訳で、後の事はお願いしますね。」
「そ、そんな!まだスキル発現の確証が得られないんですよ?それを放置するんですか?」
「・・・・帯野さん、いえ、
「それにね、さっき大型生命体と戦って分かった事があるのよ。私達の居場所はここじゃないって。」
すると俺と一樹に付き従っている女性達がやってきた。
「あーその、色々済まないね。ただ、今作業をしている連中に君達は必要だから、このままここに残ってくれると有り難い。」
「そ、そうですか・・・・分かりました。では、行ってらっしゃいませ!」
「「「「「行ってらっしゃいませ!」」」」」
「・・・・ああ、行ってくるよ。」
「い、岩ケ谷さん!お、俺!2人の居場所をちゃんと確保しますから!戻って来て下さいね!」
俺は手を振りスキル学校を後にした。
「なあ、温泉行かないか?」
「この辺りにあるかしら?」
「分からないなあ。小さな所から大きな所まであるからなあ。」
「折角だから美味しい食事とお酒も付け加えて欲しいわね。」
「一樹は本当に酒が好きだなあ。」
俺達が去って数分後、総理が到着したが既に時遅し。
この失態が後に大問題となり、内閣は総辞職。
しかもそれでは収まらず解散総選挙となった。
そして現職の総理大臣は・・・・選挙区で落選するという、国民総すかん状態。
スキル優遇民権党は第二党に没落。
ハンター民主政党が第一党に躍り出た。
後のハンター優遇政権の誕生である。
ちなみにこの時、政権を担っていたもう一つの党、明確公平党は今回、総理の行動に見切りをつけ解散総選挙となった時からハンターの立場向上を公約に掲げ、ハンター民主政党と共闘すると表明し、第3党へと躍進した。
流れは完全にハンター優遇へと突き進んでいく・・・・はず?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます