第38話 救出作戦

 10キロ程度であればものの数分で到着する。

 俺と一樹は最短距離で駆け抜けた。

 韋駄天カードは伊達じゃない。

 速さだけじゃなく、速さを生かした飛距離も強みだ。


 韋駄天カードの効果がある間にジャンプすると通常の数倍高く飛べる。

 なので俺達は建物の屋根を伝って移動している。


 瓦に触れるのは一瞬なので、屋根を壊す事もない。

 壊すのは慣れていないビキナーだけだ。


 そして発見した。

 5頭はいるぞ。

 デカいのが1頭いる。

 あれがオスだな。

 こちらにはまだ気が付ていないようだが、他のハンターが攻撃したのかずいぶんカピバラは血だらけになってる。

 護衛は・・・・粘液で身動きが取れないようだ。

 後は総理だ。

 総理は何処だ?

 そう言えば総理がどうなっているのか確認していなかった!ミスった。

「一樹、まずデカいのをやる。あれはオスだ。」

「同じのをターゲットに?」

「見た所残りはメスだ。メスはオスが死ねば逃げる。逃げてもオスが居なければそのうち死ぬと聞いている。」

「わかった。」

「俺が投擲するから後は頼む・・・・いや待て折角だ、【総合武術】のスキルを確認しないか?」

「そうね、あのスキルはまだ確認していなかったものね。」

 幸い2人共魔力はたっぷりある。

 俺と一樹はスキルを使い、【総合武術】を発動させた。


 すると不思議な事に力がみなぎってきた。

 変だな。

【身体強化】のスキルではないと思っていたんだが。


 だが待ったなしだ。

 俺は【韋駄天】の効果が残っている間に一気に距離を詰め、得物・・・・俺の得物は薙刀みたいなやつで、投擲できるんだ。

 今回はそのまま振り回す。

 するとどうだろう。

 俺の一振りでカピバラの急所にまで攻撃が届いたようで、そのまま倒れてしまった。

 え?そんなバカな?

 俺は何度か戦った事があるが、しかも同じ得物でだぞ?カピバラの毛に防がれ一撃一撃は大したダメージを与えられなかったんだよ。


 数をこなしてようやくってやつだった。

「凄い!では別のを!」

 一樹は近くに居た個体に狙いを定め、剣を一閃。

 一樹の得物は西洋と日本の刀、それをミックスしさせたような剣だ。

 片側は刃が無く、ぶっ叩く。

 もう片方には刃があり、獲物を切る。

 真っ直ぐな剣。


 彼女が通り過ぎると、カピバラの動きが止まった。どうしたんだ?

 まあいい。

 動かないのであれば次のを仕留めるだけだ。

 それぞれ2体目を相手にし、最後は投擲して仕留めた。

 そして一樹が最初に相手をしたカピバラは気が付けば倒れていた。

 まさかと思うが立ったまま絶命していたのか?

 すわ恐ろしい。


 俺達がカピバラを始末し終えて暫くして、ハンター達が駆け付けてきた。

 連絡ミスか?ずいぶん遅かったようだが。

「申し訳ありません。あちらに保護対象が・・・・」

 はあ?一国の総理が何やってんだか。

「それは難儀だったな。それと済まんが後の処理を任せる。」


「【清掃人】、【解体人】、【運搬人】の手配はしてあります!」

「そうか。俺達は総理を迎えに行く。」

「あ、では私が案内しますよ!」

「じゃあお願いしよう。一樹、行こう。」

「うーん・・・・」

「どうした?」

「一寸気になる事というか、違和感を覚えたのでその正体が何だろう、と思っちゃったの。」

 そう言えば護衛が全員粘液まみれになって、1人は逃げ出せたんだが、総理はどうして別方向に逃げたんだ?

 色々と疑問に思わんでも無いが考えても始まらんな。


 俺と一樹は駆け付けたハンターに案内を頼み、総理の元へ駆けつけた。


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


 総理はいた。

 しかも・・・・

「うわーん、怖いようママ―――――!パパ助けて――――――!」

 あんた60歳過ぎじゃないのか?確かあんたの両親はとっくの昔に他界しているはずだ。


 こんなのが日本の未来を築くべき総理なのか?将来が不安だ。

「迎えに来ましたよ。」

 すると今まで泣きじゃくっていたのに、

「遅い!」

 え?

「遅いって言ったんだよ!私を誰だと思っているんだね!」

「ママ――パパ―――って泣きじゃくっていたいい年した爺さんだな。」

「そんな事はしない。」

「どうでもいいからスキル学校へ向かいますよ。」

「ハンター如きが私に触れるな!」

「総理だったらスキルホルダーをハンターと見間違えるな!そしてハンターを軽く見るとは言語道断だ!ここで野垂れ死ぬといい!」

 一樹が怒っている。

 そして俺は一樹に引っ張られ、その場を後にするのだった・・・・いいのか放置して?

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