第37話 何故ここに来ようとする

 菊次郎達がチャレンジを行っている間・・・・この中には10名のハンター以外にも一般人カテゴリ?魔力的な分類でだが・・・・の人も何人か一緒にやってもらっている。


 こちらも男女10名だ。

 女性3人は既に顔を知っているが、男性5名と残りの2名は何処から引っ張って来たんだ?

 万が一ハンターどまりだったら辛いどころじゃないぞ?

 ハンターになってしまえば、今までの社会的地位を全て捨ててハンター業に専念しなくてはいけない。

 帯野さんのパートナー登録をしている2人はまだいい。イザとなれば帯野さんと子作りに励んで、妊娠すればハンター業をしなくて済むからな。

 今更ながらとんでもない法律を作ったもんだな。

 当時の首脳陣は何考えてんだか。

 人権問題とか考えていたのか?

 因みに女性陣10名は一樹が面倒を見ている。

 但し、スタートしてからアドバイスはしない。

 アドバイス有り無しでどういった効果があるか分からないからだ。


 で、俺がそんな事を考えながら総勢10名を見守っていた時、慌ててスキル学校の職員が駆け付けてきた。


「岩ケ谷さん、それに竹嶌さん、至急此方へお越し下さい!」

 今、作業をしている人達の行動を止める訳にはいかない。

 俺は一樹と共にその場を離れた。


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・

 案内された部屋に入ると、ボロボロのスーツ姿の人間が治療を受けていた。

 大型生命体の襲撃に遭ったのか?

「何があった?」

「そ、総理が・・・・」

 総理?

「総理がどうしたんだ?」


「ちょ、直接話を聞いて現場を確認したいと申しまして、我々はこちらに向かっていたのですが、あと10キロ程の場所で襲撃に遭いまして・・・・」

「そんな話は聞いていないぞ?タイミングが悪すぎる!今主だったハンターは奥で作業をしている!途中で止める事もできない。何でこんな時に連絡も無しに!」

 これは困った。多分俺が動く事になるんだろう。幸いにしてカードに不自由していないし、装備も充実している。

「護衛や近隣のハンターはどうした?」

「護衛は全て戦闘不能に陥っておりまして、何とか私だけがここへ駆け付ける事ができたんです!」

「何でハンターギルドへ連絡しないんだよ!」

「ここらにあるハンターギルドの連絡先なんて知りませんよ!ここに国立スキル学校が建っているというは知っていたからこうして来た訳で・・・・」

 ここは一樹と行くか。

「校長、ハンターギルドへ連絡は?」

「もうしてある・・・・まさかと思うが向かうのか?今の貴殿達はスキルホルダーだ。断じて危険な場所へ向かわせる訳にはいかない!」

「いや、俺はここの生徒ではありませんし、一樹もそうです。法律が俺達の居場所を用意していないので、暫定的にここで世話になっているだけですから。」

 俺は急いで準備を始める。おっと、何が出現しているのか聞いていなかったな。


「なあ、一体何に襲われたんだよ?」

「たぶん・・・・カピバラだ。」

 おいおい、カピバラって元々かなりデカいネズミじゃないか!あれが10倍とか・・・・10~13メートルクラスのバケモンじゃないか!しかも通常動きが遅く、温和な性格だが、大型化すると今までの性格が嘘のように真逆になるからな。

 かなり強暴だった記憶がある。

 あと、歯がやばい。あの歯で噛まれたら鉄の板程度じゃあっさり噛み千切られてしまうな。

 それに毛並みだ。あの毛は相当固いと聞いている。不味い、不味いぞ。


 しかも水辺を住処とするから、最悪水辺に引きずり込まれ、そのまま水死・・・・

 動物園で管理されている個体は可愛いんだが・・・・

 何せ動物園というのは建前の名で、実際は大型生命体対策での研究対象を研究する施設さ。


 仕方がない、何とかしよう。

「で、何処だ?襲撃を受けたのは。」

「ああ、それはだねえ・・・・」


 ここから10キロ程度の場所。しかも水辺付近。


「俊也さん、カピバラを相手にした事は?」

「何度かある。一頭だと大した事はないのだが、あの巨体で群れられると厄介なんだよなあ。そういう一樹は?」

「一度だけあります。それに最近フェレットを相手した事があって・・・・カピバラも臭い袋あるんですかね?」

 のほほんとした表情のカピバラ。

 癒しのはずなんだが大型生命体になってしまうと恐ろしい生き物となってしまうんだよな。

「ああ、確かオスにあるよな。メスの場合粘液が厄介な気がした。」


 話を聞いて色々確認した俺と一樹は、【韋駄天】カードを用い移動を開始した。


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