第41話 ストライキ

 大型生命体を倒すと、ハンター以外の【清掃人】【解体人】【運搬人】が大抵やってきて、後片付けをしてくれる。


 ハンターは戦闘後に相当体力や魔力を消耗するので、こういうのは先程述べた人達が担う事になっているのだが・・・・

 誰も来ない。


 仕方がない。近くのハンターギルドへ向かってみるか。


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


 中に入ると、ハンターでごった返していた。

 うん?いるじゃないか。

 何で近くに大型生命体が出現したのに誰も戦闘に向かわなかったんだろう。

 俺は受付に聞いてみた。因みにここに集っているハンターは、たんに集っているだけで、受付に用がある訳じゃなさそうだ。


「なあ、これはどうした事だ?」

「え?どうした事とは?」

「さっき大型生命体が街に出現したと大騒ぎになっていたんだが、誰も来なくてさ、たまたま俺達が居合わせていたから仕留めたが、一体どういう事なのかと思って聞きに来たんだよ。」


「知らないのですか?」

「何の事だかわからんな。」

 一体何を知らないんですか?だ。


「ハンターは総理の行動に対し、ストライキで応えました。」

 応えたって、一般人に犠牲が出かねないやり方はまずいんじゃないか?


「そうですか。因みにストライキはハンターだけですか?」

「ハンター以下、【清掃人】【解体人】【運搬人】と我々は呼んでいますが、ようは大型生命体を対処する人々全員ですね。」

「それで誰も来なかったんですね。あの総理は確かに愚かですが、だからと言って一般人が犠牲になるのはどうかと思いますが・・・・もっと違うやり方は無かったんですか?」

「それについてはそうなのですが、総理のせいで我々の希望が行方不明なままなのですよ。」

「行方不明?それは何の事ですか?」

「それもご存じありませんか?そもそも内閣不信任案を成立させる発端となった人物ですよ。そして我々は彼を次の選挙で押し上げたいと考えているんです。」

 俺達が出て行ってから1ヶ月しか経っていないが、そんな事になっていたのか。

 でもそんな大物って誰だろう?

「行方不明でも押し上げたいというのは、生きているんですか?」

「生きていると信じています。彼は岩ケ谷俊成と言って、ハンターからスキルホルダーになる事に成功した2人のうちの1人で、もう1人はまだ若く残念ながら次の選挙に立候補できないのですけれど・・・・知りませんか?」

 俺は思わず黙っている一樹を見た。

 驚いているようだ。

 俺も驚いているがどうしてこんな事になっているんだ?

「彼は政治利用に応じますかね?」

「応じるも何も、彼はハンターの立場向上を常々訴えていたそうですから、私共は彼がこれを好機にやってくれると信じています。」

 勝手に信じてもらってもなあ。だが・・・・政治家。

 政治に興味はないが、あんな総理みたいな政治家にはなりたくないな。だが・・・・

『俺にできると思うか?』

『分からないわ。でも誰がやるよりも、あなたがやった方がハンターの立場はよくなるんじゃないかしら。でもその前にスキルホルダーになれる可能性がある事をどうするか・・・・どうなっているのかしら。』

「俺達1ヶ月旅行していたので最近の事に疎いんですが、スキルホルダーになる方法って公開しているんですか?」

 すると受付の女性が身を乗り出し、

「それなのよ!、岩ケ谷さんが折角準備していたスキルホルダーへの道が公開されないまま、馬鹿な総理のせいで彼を行方不明に追い込んだのよ!そのせいで情報は闇のまま!」


 まだ帯野さんは高校3年生だから、投票権はあっても・・・・18歳になっていたよな、確か・・・・立候補はできないんだっけな。

「分かりました。少し考えます。貴重な情報ありがとうございました。それと申し訳ありませんが、いくらストとはいえ、一般人が困っているので何とかしてあげて下さい。」

 俺は一樹と共にこの場を去った。


 そして暫くして後ろから、


『おい、さっきのってひょっとして本人だったんじゃないか?』

『そ、そう言えば名前を聞いていなかったわ。だ、誰か追いかけて!』

 俺は落ち着いて考えたかったので、一樹と共に【韋駄天】カードを使ってこの場を去った。



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