第32話 偉いさん方がやってきた

 俺の危惧する事の1つが、翌日にやってきた。

 つまり国からの調査機関だ。


 どうやって調べるのかは分からないが、国にはそのような魔道具があるのだろう。

 昔は電波?周波数?そのような目に見えない何かでやり取りをしていたそうだ。

 だが俺は知らなかった。

 その昔通信を目的としたケーブルが地中深くに、しかも幾重にも張り巡らされていた事を。

 それも複数の種類が。

 精密機器が殆んど使えなくなったので、こうしたケーブルを利用できなくなった、そう思っていたのだが、国は総力を挙げて使えるようにしていたようだ・・・・それもハンターの監視とスキルホルダー保護の為に。

 それは海を越えた他国にも繋がっており、情報の共有を図っているようだ。

 然しながら国内であれば電話が便利だ。

 ハンターには常に大型生命体に対処する必要があるからと、設置が義務付けられている。

 ダイヤルを回す黒電話だ。

 電気を使わなくて済む。


 当然ながら日本の中枢にも新たなスキルホルダーが2人誕生した、との一報が入ったが、その時は誰も何とも思わなかったそうだ。

 だが、どういうスキルを所持しているのか確認する必要があるからと担当が2人のプロフィールをチェック、すると年齢が変だと気が付いた。



 Side 国の機関(スキル関連)



「大変です!28歳の男性と、20歳の女性が新たなスキルホルダーとなったようで、しかも元々ハンターとして活動している、と記載されています!」

 まだ若い女性職員が慌てて上司に報告をする。

「あ?なんじゃそりゃ。何かの間違いじゃないのか?どれどれ見せてみろ・・・・うん?スキル学校からの報告だな・・・・あれが間違うはずもないし・・・・うん?なんじゃこれは?何故複数のスキルを所有しているんだ?しかも2人共じゃないか!こ、これは・・・・間違いだと思うが、調査の必要がある!急いで出るぞ!おっとその前に部長へ報告だ!」


 こんなやり取りが官僚の間にあったとかなかったとか。

「おい!これを受けたのはお前なんだ、お前も一緒だ!」

「え?嫌ですよお!何故スキルホルダーになれなかった私が頑張ってここに就職したと思っているんですかあ?いやあ、放してえぇぇぇ!!!!」

 彼女の叫びは誰の心にも響かなかったようで、この2人が急ぎスキル学校へ向かう事となった。

 因みにここは国の機関。

 向かう先も国立学校。

 つまり何の問題もない。


 そしてこの2人の到着が、更に問題を複雑にさせていく事になる。

 そしてこの上司が部長の所へ報告へ行ったのだが、部長は当時離席しており、書類だけを置いて去って行った。


 戻った部長も書類を見て驚き・・・・

 これは問題だ!じ、事務次官へ報告せねば!

 国の最高機関、そこでとっぷである事務次官へ報告が行ってしまい、そのまま総理の所へ情報が伝わってしまった。


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


 国立スキル学校に1台の車がやってきた。

 スキルに関する機関のエリート達だ。


 カードを見せると車は門を通り抜け、学校の敷地内へと入っていく。

 そして勝手知ったる壮年の男性は、若い女性を無理やり引き連れドンドン中へ入っていく。


 そして校長室へ直行。

 アポなし突撃である。

 しかし校長も事前に把握しており、準備は万端。

 件のスキルホルダーは万が一に備え避難させてある。

 但しこちらから呼び出しがあれば直ぐに来られるようにはしてあったりする。


 で、無造作にドアが開けられた。

「おい校長、こんな報告が来たんだが、これ事実か?」

「これは柊木ひいらぎ課長、お久しぶりですなあ。まあ先ずは座って下さい。こちらも実はまだ事実をよくわかっておらんのですよ。」

「どういう事だ?」

「それがですなあ、今年度の生徒会会長ですが、彼が何か思いついたらしく・・・・おっとその前にこの学校が最近魔物の襲撃に遭いそうになった事がありましてなあ、その時魔物を仕留める原動力となった2人をどうした事か校内に入れた様なのですよ。」

「何の事だ?」

「掻い摘んでいえば、この時2人にある実験をさせたらしくてですなあ。」

「それで?」

「結果的に2人の魔力は爆上がり、そして・・・・」

「そして?」

「何と同時に3つものスキルを得たのですよ!4つだったかな?」

「ではあの報告は真実だったのか!」

「そうなのですよ。但しこれはたまたま2人が成功したのか、あるいは誰でもこの実験を行えばスキルホルダーになれるかまだは分かっておりません。」

「むむ・・・・この報告、何処に出した?」

「柊木課長の部署だけですよ。そこ以外に出す理由もありませんし。」

「で、その2人と・・・・生徒会長には会えるのか?」

「会えますが、相手はもうスキルホルダーですからね、我々国の機関と言えどもそう簡単には会えないのはご存知でしょう?」

「それはそうだが・・・・」

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