第28話 何やってんだか

 い、息が・・・・苦しい!

 俺は何かしらんが息苦しさを感じ、急に目が覚めた。

 どうやら俺はまた気を失っていたようだ。で、何故息苦しいかと言えば、どうやらずっと、俺の口は竹嶌さんが塞いでいたからのようだ。


「気が付かれたようですわね。では竹嶌様、上に向いて下さいませ。」

「・・・・わかった。では岩ケ谷先生、そのまま支えていて下さいね。」

 そう言って竹嶌さんは上を向いた。

 俺の頭は混乱していた。

 これは一体どういう事なんだ。


 しかし俺は頭の中を整理する事ができなかった。何故ならば次の指示が来たからだ。

「ではこれより竹嶌様のスキルをカードへ抽入する作業を開始いたします。手順は先程の岩ケ谷様同様で御座います。」


 そう言って装置を操作、というよりカードを挿入する女性職員。

 挿入が終わると一瞬竹嶌さんの身体がビクッとなって、脱力したようだ。

 俺は慌てて竹嶌さんの身体を再び強く抱きしめた。

 暫くして竹嶌さんは気が付いたようで、

「気を失っていた?」

「はい、先程同様ほんの数秒程度ですわ。そして確認中で御座いますが・・・・全て良好ですわ。これで今回カードへスキル注入する作業は一通り完了いたしました。それでは暫く体力、魔力を回復させつつ、この場でごゆっくりお過ごし下さいませ。」

 そう言って俺達の傍に居る事になっていた女性達は皆引き上げていった。

 残されたのはベッドの上で抱き合って?いる俺と竹嶌さんのみ。

 いやいや一寸待ってくれ!付き合ってもいない男女が成り行きとはいえ抱き合ったまま、しかもベッドの上で・・・・どうしろと?


 見つめあう俺と竹嶌さん。

 だから俺達付き合っても居ないし、まさか竹嶌さんが俺みたいな冴えないハンターをこんな風に・・・・仕方がないは言え抱き合っていたんだ。困るよな?

 だが俺が困惑しているのとは裏腹に竹嶌さんは、

「岩ケ谷先生、いえ、 俊也としなりさん、今後も末永くお願いしますね。」

 いきなりそんな事を言って来たんだ。俺は混乱したまま、

「ああ、まあその、こっちこそ歓迎するよ。」

 この時俺は、竹嶌さんの俺に対する呼び方が変わっていた、という事実に気付けなかった。

「あ、ありがとうございます。で、これからどうしましょうか。」

 さてどうすべきか。

 そう思っていたが、俺が次の行動を起こす前にドアが再び開いた。


「岩ケ谷さん!それに竹嶌さん!成功したんですね!よかった!!」


 帯野さんがやってきた。そう言えば帯野さんの方はどうだったんだろう。

「ああうん、多分成功したと思う。帯野さんはどうだったのかい?」

「つい嬉しくって来ちゃいましたが、とにかく反復しないといけないので戻ります!結果は1週間後ですね!」


 そりゃそうだ。俺と竹嶌さんの時もそうだったし。

 1週間という期間に、決められた事を決められ手順で数をこなす。只々そんな作業を只管やっていたからね。

 それは帯野さんが経験済みだと思うんだけど。

 そして再びドアが開いた。

「すいません、肝心な事を伝え忘れていました!お2人は今日よりスキルホルダーとして登録していますので!それに伴い僕と竹嶌さんのパートナー登録は解除、岩ケ谷さんと竹嶌さんでのパートナー登録となっていますから!」

 嵐のように去って行く帯野さん。


 なん・・・・だ・・・・と!

 俺と竹嶌さんがパートナー登録?

「俊也さん、どうしたの?」

「あーその竹嶌さん、何だか今日は色々変化があり過ぎて、付いていけそうにないなあ、と思っただけさ。」

「そうですか。それととうとう私達スキルホルダーになったのですね!そしてパートナー登録!そういう事ですので、今後私の事は一樹いつきと呼んで?」

 何これどう言う展開?

「あ、ああたけし・・・・い、いつ・・・・き?」

「名実共にパートナーなのですから、今後色々な困難や障害があると思いますけれど、2人で乗り切っていきましょう!」

 おかしい。何かがおかしい。

 俺と竹嶌さんの認識がおもいっきりずれているのだが、この後世界が大きく揺れ動いてしまう事に、この時はそこまで気が回らなかった。

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