第27話 想定内の出来事らしい

 スキルホルダーがカードへスキルを注入する仕組みをおさらいすると、

 ①スキル所持者がヘッドホンを装着

 ②装置と経路を繋ぐ

 ③カードを装置へ挿入する

 ④スキル所持者から装置へスキルが発動

 ⑤スキルの発動条件がカードに書き込まれる仕組み

 ⑥スキル所持者には何も流れない


 まあこんな流れらしい。

 因みにスキルと言っても、魔力としての形で、だそうだ。よくわからんな。


 で、スキルホルダーがこの装置を最初に使うと、魔力を自身の意思とは関係なく流されてしまうので、気を失ってしまうのだとか。

 で、俺も例外に漏れる事なく気を失ったという訳だ。


「岩ケ谷様、気が付かれましたね?何処か違和感のある場所等ありませんか?」

 皆心配そうに俺を見ている。竹嶌さん中は俺の真横で抱き着いているから、実際近すぎて困惑してしまう!

 俺は首を左右に振り・・・想いっきり近くで竹嶌さんと目が合って更に困惑してしまったが、そのまま正面に戻り、今度は手足を動かしてみた。

 何ともなさそうだが、いかんせん右側は竹嶌さんが抱き着いているので殆ど動かす事ができない。

 だが少しは動くから問題ないだろう。

「あー、声も出るな。どうやら問題なさそうだ。で、俺はまだ寝ている必要があるのか?というかどれぐらい気を失っていたんだ?それに成功したのか?色々知りたいが、順を追って説明してくれると有り難い。」

 すると俺の担当になった女性が、

「ではそのままで宜しいので、説明致します。先ず寝ている必要があるのか、で御座いますが、引き続き竹嶌様のスキルを抽出いたしますので、そのままでお願いいたします。次に気を失っていた時間ですが、ほんの10秒程度で御座います。次に成功したか失敗したかですが、成功いたしました。岩ケ谷様が所有するスキルの一覧が装置に表示され、こちらでどのスキルをカードへ抽入するか選択できました。カードへも選択したスキルが抽入している事は確認済みです。そして気を失った理由ですが、たんに魔力が自分の意思とは関係なく強制的に流れた事による、一時的な精神バランスの不調で御座いますので、今後は気を失う事はない、と思われます。」

「じゃあ次から同じ事をしても気を失ったりはしないんだな。」

「100%とは申し上げられませんが、他のスキルホルダーによる今までの実績では、もう気は失いません。しかし岩ケ谷様と竹嶌様は複数スキル持ちで御座います。ですので過去のデータがない以上100%と断言できず申し訳ありません。」

「そうか。それはまあ仕方がないな。で、今度は竹嶌さんの番か?」

「はい。では竹嶌様、岩ケ谷様を解放して下さいませ。」

「わかった。」

 やっと離れた竹嶌さん。一寸?名残惜しいが仕方がない。

「では今度は竹嶌様が仰向けで、ヘッドホンを装着下さいませ。」

「ヘッドホンは専用のを使うのか。」

 竹嶌さんは新たなヘッドホンを受け取り、頭に装着した。

「では岩ケ谷様、先程の竹嶌様同様、竹嶌様を抱きしめて下さいませ。」

 俺は未だ横にいる竹嶌さんを見た。う、抱きしめられた時はまだよかった?のだが、こっちから抱きしめるとか、いいのだろうか?

「岩ケ谷先生、さあ早く。」

 何故か催促する竹嶌さん。いいのか?

「わ、わかった・・・・俺なんかが抱きしめていいのか?」

「むしろ岩ケ谷先生以外は私、受け付けませんし・・・・もっと強く抱きしめて下さい!」

 俺はそっと抱きしめてみたのだが、竹嶌さんはそれでは満足しなかったらしい。

 しかも俺の時と違い、竹嶌さんは俺の方に顔を向けているので、必然的に竹嶌さんの顔が近くに来るわけで。

 うう、なまじ俺好みで、しかも整っている顔だから緊張してしまう。

 それにだな、これ以上近づくとその、キスをしてしまうぐらい近いんだが。既におでこが当たっている。


 俺の名は 岩ヶ谷いわがや 俊也としなり

 28歳独身彼女無し。


 こんな経験今までない。ついでに言えば素敵な女性がハンターと付き合うなんて事はまずない。

 なので恐らく今の俺は顔を真っ赤にさせながら緊張しまくっているはずだ。

 そしてその時はやってきた。

 俺はあまりにも身体を固くさせてしまったために、必要以上に竹嶌さんを引き寄せてしまったようだ。

 俺の唇に少し湿った何かが触れた。

 つまりあれだ、竹嶌さんとキスをしてしまったって事だ。

 驚いたように目を見開く竹嶌さん。う、すまん。不可抗力とはいえ相手の意思を確認する事なく・・・・

 だが何がどうなったのか、竹嶌さんがより強くキスをして来るではないか!あれ?俺は何か変になっているのか?


 そして俺はこの日2度目になる、意識を手放すという間抜けな事をやらかした。

 意識が遠のく時、

『嬉しい。』

 と聞こえた気がしたが、幻聴まで聞こえるとか俺はどうにかなってしまったようだ。


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