第26話 何故に添い寝なんだ

 ふと思った。何気にベッドがでかい。

 何故気が付かなかったのだろう。

 恐らくクイーンサイズとか言う奴だ。もしかしたらキングサイズか?

 これがスキルホルダー御用達の仕事なのだろうか?


 そう思ったのもつかの間、どうやら俺と竹嶌さんのこれからを補佐してくれる職員がやってきたようだ。

 さっきまでは帯野さん付きの擁護教諭、天城さんだったかな?彼女ともう1人、藤記さんという職員が行ってくれていたんだ。


 だからある意味安心したんだが。


「本日只今より、岩ケ谷様及び竹嶌様付の職員として今後行動を共に致しますので、どうぞよろしくお願いいたします。」

 俺と竹嶌さんに、それぞれ2人づつ、計4人の若い女性職員がやってきた。何故全員女性なんだ?しかも若い。

 さらに突っ込めば全員・・・・俺好みのルックスなのだ。

 単なる偶然?それともこれには深い意図があるのだろうか。

 そう思ったが、口に出す前に新しい女性職員が発言する。


「色々疑問に思う所もあると思いますが、ここの職員は基本全員女性です。スキルホルダーの半数は女性である事を考慮し、こうした人事となっております。どうしても男性職員がよい、との事でしたら今から再手配を行います。」

 すると反応したのは竹嶌さん。

「男性が来るのは困る。このままでいい。岩ケ谷先生、いいですよね。」

 よくわからんが竹嶌さんがそう言うのであればそうなるのだろう。

「竹嶌さんがそれでいいというのであれば構いませんよ。ではお願いします。そう言えばずっと4人が今後僕達に?」

「そうなります。他に別の職員が24時間近くに控えておりますので、何かあればドア付近に待機していますので、遠慮なくいつでも指示して下さいませ。」

「はあ、そうですか。今のところ今から行う事で頭が一杯なので、そのうち質問したりはあると思います。」


 ちなみに4人共名札、つまりプラカードを胸につけていたので名字だけは分かった。

 今はいいだろう。


「では今からスキルをカードへ【抽入】する作業を開始いたしますが・・・・何故お2人は別のベッドなのでしょう?」

 俺達に聞かれてもわからんぞ。そして本来答えを持っている帯野さん付きの天城教諭と藤記さんはいつの間にか去っていた。


「先程引き継ぎをいたしましたが、もう一度確認の為説明を致します。スキルを注入する一連の作業を開始すると最初は身体が馴染んでいませんので、皆さま魔力切れで意識を保てなくなって、つまり気を失ってしまいますので、こうしてベッドで最初から寝て頂きますが、これには誰かが添い寝を行う必要がございます。」

「一寸待て、最後のは聞いていないぞ。」

「成程そうでしたか。では竹嶌様、こちらへお越し下さい・・・・そうです。そしてそのまま岩ケ谷様の隣へ・・・・いえ、もっと密着を。」

「こ、こうか?」

 どうして疑問に思う事なく竹嶌さんは・・・・うわ!密着といったが、俺に抱き着いているじゃないか!嬉しいがこれは困った!

「本来スキルホルダーの最初に行う抽入作業時は、こうして職員や恋人が添い寝を行います。今回は竹嶌様がその役目を行います。そして岩ケ谷様が意識を取り戻せば次が竹嶌様の番で御座います。当然ながら竹嶌様の添い寝は岩ケ谷様が行う事となります。」

 何だこれは。色々突っ込みどころ満載だ。

 これでは恋人でもない竹嶌さんが困るじゃないか。俺みたいのに抱き着くとか抱き着かれるとか。

「わかりました。それでは岩ケ谷様先生、私の時はしっかりと抱きしめて下さいね。」


 竹嶌さんの信頼しきった眼差しが俺には眩しすぎる!

 どうやら俺の心は穢れていたようだ。

 そして俺が問題と思った色々な事態を解決する前に、事態はどんどん進展していく。

「ではこれを。」

 俺はヘッドホンみないなのを手渡された。

 そして今回2人の職員、1人は実技指導員という役割分担、もう1人は医師だったようだ。医師の方は俺の様子を確認し、実技指導員が直接器具を操作したり装着してくれるようだ。


「では、このヘッドホンを頭に装着して下さい。こちらの装置へ繋がっているのは見えますか?ええそうです。そしてここに私が数枚のカードを手にしています。見えますか?」

 俺は見た。普通のカードと同じ大きさだな。

「これをこの装置に差し込みます。すると岩ケ谷様の装着しているヘッドホンを経由し、スキルの経路が開かれます。これはスキルを使った事が無くても使い方を知らなくても勝手にしてくれますから。そのため傍に医師が控えております。すると岩ケ谷様の魔力がこのカードへ吸い出されます。で、どうなるかと言えば、岩ケ谷様が所持しているスキルがカードへ抽入されます。」


 成程よくわかったような分らないような。だが今の俺は複数のスキル持ちのはず。どうなるんだ?

「ひとついいかい?」

「なんでしょう?」

「確か帯野さんのスキルは【抽出】だったと思うが、どうやって抽出スキルを選ぶんだ?俺は今複数のスキル持ちなんだが。」


「それに関しては一応こちらの装置で選択可能となっております。スキル名が表示されますので、それをこちらで選択できます。しかし過去に例がございません、若しくはそう言った事例の引継ぎがございませんので、実際マニュアル通りに目的のスキルをカードへ抽入できますかどうかは、試してみませんと何とも言えない所がございます。申し訳ございません。」


 まあ当たって砕けろって事だろう。

「岩ケ谷先生でしたらきっと上手くいくと思います。」

 竹嶌さんが俺へ向ける信頼の眼差しは俺には眩しすぎる!

 やはり俺の心は穢れているようだ。

 そしてそっと手を握りしめてくれる竹嶌さん。

「では竹嶌様、もっと心を込めて抱きしめて下さい。」

「わかった。では岩ケ谷先生、失礼します。」

 俺は竹嶌さんの感触と、竹嶌さんから発する何とも言えないいい匂い?に頭がクラクラしそうになった。そして反応しようと口を開く前に、

「では開始いたします。」

 どうやら装置が起動したようだ。暫くして俺はボーっとして・・・・意識を失ったらしい。

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