第25話 前代未聞の出来事

 俺と竹嶌さんの結果は殆ど一緒だった。

 出力された紙には、俺と竹嶌さんが得たスキルが記載してあったのだが、まあ結果を言えば同じスキルだった。


【複製】スキル

【修復】スキル

【総合武術】スキル

【抽出】スキル

 何と4つものスキルを得たのだ。

 一寸待て。

 【複製】と【修復】は分かる。

 だが最後の【総合武術】ってなんだ?

 確かに余った時間で俺と竹嶌さんは色々な武器を用い訓練を行ったが、単に複数の武器を扱って行った模擬戦的な訓練だったはず。

 そこに武術の何たるかが発現する余地は・・・・無かったはずなんだが。

 後は【抽出】スキルだ。何もやっていないぞ?


「帯野さん、これはどういう事でしょう?」

 さてここで帯野さんが困った顔をしている。

「あーその、もしかして2人とも結構早くにノルマをこなしちゃいました?」

「私、そして岩ケ谷先生も最初のノルマは3日で終わり、お互いの作業を双方やってみたのだ。それも3日で終わり、実質残り2日余ってしまった。そこで私と岩ケ谷先生は模擬戦を行いお互いの得物を取り換え、更には複数の武器を用いて色々と打ち合っていた。それが影響したのだろうか。」

 竹嶌さんが説明してくれた。


「【総合武術】・・・・そんなスキル今まであったかなあ?」

 帯野さんは知らないようだ。俺も色々なカードは見ていたが、【総合】と名の付くカード自体見た事あったっけ?

「俺も記憶にない・・・・ああ、それよりも帯野さんは今から何かするんでしたっけ?」

 すると天樹という、確か養護教諭らしい・・・・彼女が割って入ってきた。

 それにもう1人いる藤記という女性職員だ。

 2人とも帯野さんのパートナー。

 うん、やっぱりスキルホルダーはこんな美女を・・・・けしからん!

 おっと思わず本音が漏れる所だった。


「本来の目的は帯野さんが1週間時間を得る事なので、早速で悪いのですがお2人にはカードの【注入】を、若しくは帯野さんのカードを【複製】及び【修復】して頂きたいのです。」


 確かスキルホルダーは、自身のスキルをカードへ抽入する事が義務つけられていたとか。

 で、それを行うと行動不能に陥るからと、こうして俺達が帯野さんの【抽出】スキルが注入されたカードを複製してほしいって事だよな。

 カードを【複製】でもいいし、使用済みのカードを【修復】・・・・できるのか?

 まあ、ようは帯野さんが本来カードへ抽入する分のノルマをこうやって得ておけば、帯野さんも色々と出来る訳なんだな。

 まあこうして俺もスキルを得たし、お安い御用さ。


「では説明も兼ねて実際に行って頂きますので、こちらへお越し下さい。」


 俺と竹嶌さんはベッドに案内され、何かヘッドホンのような装置を装着するよう促された。


 どうやらこれを用いてカードへスキルを注入するようだ。

 だが毎回こんなのを行うのだろうか?


 そしてあまり嬉しくない話が後に続く。


「これは国家機密になりますので、家族にも、親しい人にも打ち明けないよう願います。幸い双方独身なうえに恋人ですので恋人、配偶者への配慮は不要ですね。今から装置を起動しますと、対象者の魔力は尽きてしまいます。その為にベッドで寝て頂きます。」


 一寸聞き逃せない単語がいくつか出たが、あまりにも事が大きいので突っ込むのもやめた。そして竹嶌さんは顔を真っ赤にさせている。

 もしかして俺と恋人と思われ怒っているのか?

「まああれだ、竹嶌さん。こんな冴えない俺が恋人と思われてはさぞ・・・・」

「いえ!そこは問題ありません!恋人と言われ、意識してしまって恥ずかしかっただけです!私達似合っていると思われているんですよね?」

 そうなのだろうか?

 でも竹嶌さん曰く、帯野さんは手を出さないと言っていたけれど、パートナー登録しているしなあ。

 まあ勘違いが尾を引くと後が面倒だしここはそう、はっきりとしておいた方がいい?

「まあそう思わせておけばいいさ。」

「そうですね。いずれ一緒に住むとして、周囲にはどう説明をすればいいのでしょう?」


 うん?何か微妙に会話がかみ合っていない気もする・・・・だが今はスキルをカードへ【抽入】する作業に集中だな。


 俺と竹嶌さんは言われるがままベッドに寝て、装置を起動するのを待った。

「では、開始します。」

 まさか痛くないよな?聞くのを忘れていたよ。

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