第14話 本当に恐ろしいのは

 身体の節々が痛い。

 俺は戦闘時には必ず身体強化のスキルを使う。

 防御力も上がるので便利なスキルだ。

 万が一不意打ちがあっても対処とまではいかないが、一撃を耐えうる対策としてはこれが今のところ一番有用と思っているからだ。


 それが功を奏したのか、頭への一撃だったにもかかわらず何とか死なずに済んだようだ。


 俺は今この瞬間まで魔物による不意打ち、そう思い込んでいた。


『おー本当にあったぜ!こりゃあマジモンだったあ!うへへへへ!』

『どうやって外骨格だけ取り除いたんすかねえ?』

『それより早く仕舞えよ!』

『それもそうだがこいつどうするんだ?鈍器で殴っても死ななかったぞ?』

『バカヤロー!そりゃあスキルだろう。』

 俺は身じろぎせず聞いていた。

 どうやら誰かに襲われたようだ。

『身体強化だったらもうそろそろ効果も切れるはずだ。その時殴り殺そうぜ!』

 声からすると6人組のようだ。

 6人か。韋駄天スキルを使えれば何とか逃げ切る事もできそうだが、人を襲うような連中だ。しかも気配に気づかなかった。

 いや、最初は気付いていた。距離があるとは思っていたんだ。

 だがその後だ。

 俺は殴られるまで何者かの接近を気付けなかった。

 人であれば物音等で気付くんだが。


 こいつら隠密系のスキルを使用したか?

 気配に敏感な魔物がいるので隠密系のスキルは別に使っても問題ない。

 なのでカードもそれなりに出回っている。

 それが悪用されたのか?

 しかも今回どうやら俺を、俺の仕留めた獲物を狙ったようだ。

 ハンターギルドで聞き耳を立てていたか?


 くっ!噂には聞いていたが存在していやがった!

 所謂ハンターキラーと言われる、ハンターをターゲットに得物やカードを奪い取る連中だ。装備もだが。

 ハンターは貴重なスキルカードを所持している可能性がある。

 ついでに言えば装備もそうだ。

 だが特に装備は売ってしまうと足がつく可能性が高い。

 何せハンターギルドは俺達ハンターを管理する組織だ。

 今何を装備しているか、得物・つまり武器は何を用いているか等、殆どの事を把握している。

 そうしないと魔物が出現した時誰が最適任者か、今誰を動かせるか選択するのに必要な情報だから、基本ハンターギルドに情報を登録する。

 なのでもし誰かの装備が市場へ流れると、装備していたハンターがどうなったのか調べる事になる。

 もしハンターが死んでいた場合、どうやってそれが市場に流れたか突き止め、流した本人に事情を聴く事となる。

 そして死んだハンターから拾ったのか、殺したのか、譲り受けたのか・・・・


 今まさに俺は死に体のハンターだ。


 このまま相手が油断している隙に急いで脱出すべきか?

 一瞬の判断が生死を決めかねない。

 幸いな事に俺の左手はカードホルダーに触れていた。

 カードに触れれば何となくわかる。

 確かあまり使い道がないと思っていたカード、【記録】というのがある。

 帯野さんから頂いたカードに入っていたので、まだそのまま仕舞っている。

 音を一定時間保存し、保存が終われば何処かで一度再生ができる、そんなスキルだ。

 俺は早速カードを探し当てる事が出来たので、使う。


 そして次に何を使用しようかと思い、カードを物色する。

 概ねカードが何処に仕舞ってあるかは把握しているが、体勢が悪いと分かりずらい。


 その間にも悪党共の会話は記録されている。

 もしこいつ等を始末したとして、人殺しとなるから正当防衛を成立させる必要がある。そうしないと単なる犯罪者だ。

 だが己の欲望の為にハンターを襲う連中に人権はない。

 何せハンターが魔物以外の攻撃で死ぬという事は、ある意味国に多大な損失を与えると言う事だからだ。

 尤も俺一人死んだところで国に損害があるようには思えないが。

 まあ抑止的な意味での決め事だな。


 それよりもこのまま逃げたとして、今後どうなるか心配だ。

 仕方がない。帯野さんから貰ったカードの中には貴重なのがあったが、使うか。

 俺はカードをコレクションする収集癖はない。

 使うために所持する。たとえ億越えのカードであろうと使いどころを間違って死んでしまえば意味を成さない。


 カードの中に特殊な物がある。


【隠伏】スキルと【認識阻害】スキルだ。

 そして【地脈】という変わったスキルがある。




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