第15話 スキルを駆使して対応を

【陰伏】とは【人目を避けて隠れていること】

【認識阻害】とは、簡単に言えば自分の存在を認識させる色々な要素を阻害させる。つまり己という存在を認識させないスキルだ。

【地脈】とは簡単に言えば地面の中にある何らかの通り道を利用するスキルだ。

 実際には地面の中を移動すると言う代物だ。

 他にも【影】系のスキルもあるが、今周囲に影はあったりなかったりで使いどころが難しい。


 俺は探り当てた【陰伏】と【認識阻害】を用い、最後には【地脈】を用い己を瞬時に安全な場所へ移動させる事に成功した。


 その頃6名の悪漢は、目の前にあるヘラクレスの外骨格で揉めていた。

【俺は角がいい!】

【いや待て全部売ればいい金になるんだ、売るべきだ!】

【おいおい折角こんないい素材が手に入ったんだ!武具を作ろうぜ!下手に売れば足が付くぜ!】


 岩ヶ谷が消えているのに全く気付いていない6人。

 更に言い争いは続くが、いつの間にか仲間が1人、また1人と消えている事にまだ気づいていない。


 そしてついに3人となった所で周囲の異常にようやく気が付く。

【おい、何であいつら此処にいないんだ?】

【あ?】

【いやいやどー】

 最後まで言えなかった。何故ならばそいつの足元には手首が出現し、そのまま足首を掴まれ地面に引き込まれたからだ。


【な、何が起こってやがるんだ!】

【い、今地面に手が生えていたぞ!】

【お前酔っぱらってるのか?】

 だがリーダー格の目前で、仲間がやはり地面に吸い込まれていくのを目撃した。

【げ!俺は酔っぱらっているのか?人が地面に吸い込まれるとかありえねえ!】


 地面にはヘラクレスの外骨格と本体があるのみとなっていた。


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


【ひどい目に遭った。そして頭が痛い。】

 俺は6人を地面に引きずり込んで身の安全を確保、そのまま1人地上へ出た。

 6人はどうなっているかって?

 あいつ等は既に地面の中に埋まっている。

 恐らく自力では身動きができないだろう。


 だがまあカブトムシの幼虫は土を喰って大きくなるんだ。頑張って土を喰えばその分身動きが出来て自力で・・・・

 ないな。

 呼吸もままならなくなり、そのうち窒息死だろう。

 さてどうするか。

 一応頭だけ出してやるか?

 ここでこのまま放置しておけば今後の憂いを断つ為にも最善なのかもしれん。


 俺は決して善人ではない。だからと言って悪人にはなりたくないし、犯罪者にはなりたくない。

 そしてできれば人殺しもしたくない。

 6人の悪漢は法の元で裁かれるべきとも思ったが、状況が許してくれなかった。

 ヘラクレスの中身が放置してあったので、それ目当てで魔物がやってきていたからだ。


 因みに厄介な猛禽類、梟だ。

 あいつ等はカブトムシやクワガタ虫を捕食する。

 俺の用いたスキルはまだ有効なので気付かれてはいないようだ。

 再び地に潜り、ヘラクレスの本体を啄ばもうとしている梟の真下に手だけを出し、そのまま捕まえ地中へ引きずり込む。


 暴れるが自身と触れた物体を地面に引き込める便利なスキルだ。もっと広まってもいいが、スキルホルダーが殆んどおらず貴重なスキルとなっているらしい。

 なのでこのスキルは高価なのだ。だが今回このスキルに救われた。


 そのまま頭だけを地面に突っ込んだ状態で手放し、俺は地上へ戻った。


 そして効果の無くなった【収納】スキルをもう一度発動させ、梟を収納する。

 そのまま死ぬからこうした時非常に有用だ。


 あ、6人をどうするか決めかねていた時にこの戦闘があったので放置してしまった。


 恐らくは窒息死しただろう。

 一応死体は回収しておくか。

 俺は地脈スキルの効果が残っているうちに、6名の死体を地面から少しだけ出した状態で地上へ出た。

 万が一生きていてまた襲われでもしたら厄介だからな。

 その後収納スキルで全員を収納した。


 バカな奴等だ。

 今回は証拠の音声記録もある。

 それに不可抗力だ。

 ああしなかったら俺は脱出できなかったんだ。そう思うと同時に俺は遂に人を殺てしまった。しかも6人もだ。


 俺は深く考えないようにし、周囲に残った素材を回収し、その場を後にした。

 今深く考えると危険だ。

 少なくとも街に戻ってからだ。

 朦朧とした状態だったし、あまり考えられない。とにかく街に戻って休みたい。


 そうして戻ろうとしたが、こういう時に限って知り合いに出会ったりする。


 竹嶌一樹さんだ。

「ご無沙汰しています。」

 俺はそんな彼女を見て緊張の糸が切れたのだろう。

「あ――――うげえ!」


 俺はその場で胃の中身をブチまげ、そのまま倒れた様な気がした。


「きゃああ!ど、どうしたんですか?【状態異常】・・・・って意識が!それによく見れば頭から血が!」


 不幸中の幸いな事に、ここは既に街中で安全だ。


 気が付けば見知らぬベッドの上だった。


 注:頭に攻撃を受けた影響で記憶の一部に違いがあります。

 実際には誰も死んでいません。

 詳しくは次の話で。


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