第3話 メール
俺は「センター問い合わせ」をしてみた。
すると、1件のメールを受信した。
なんと、沙紀からだ。
画面に沙紀の顔写真が表示された。
あまりのかわいさに思わずドキッとしてしまう。
「やっほ~! さっき、おいしいご飯を食べたよ^^ 裕也は元気にしてる?」
女友達らしき人物とランチを食べている写真が添付されて送られてきた。
俺は、ちょっといたずらがしてみたくなった。
裕也に成り代わって、このメールに返信してみようと思った。
「沙紀~ 俺は元気だよ!!」
そう書いて、送信ボタンを押した。
しばらくして、返信が来た。
「そっか~、裕也、元気なんだね~ 夜に電話してもいいかな?」
これはまずい……
さすがに、電話に出たら、俺が裕也ではないことがバレてしまう。
急いで返信した。
「いや、今日は仕事が長引きそうだからゴメン あとでまたメールする」
どうやら、俺が書いたメールを、沙紀は裕也のものだと信じているようだ。
過去のメールのやり取りを見る限り、沙紀は今、友達と旅行に行っているようだ。
しばらくは帰ってこないとのこと。
直接会ってバレる可能性は、今のところはないだろう。
メールでやり取りをしてしまったがゆえに、俺はますます沙紀のことが気になってしまった。
沙紀が旅行をしている間、俺が裕也に成り代わってメールを楽しもう。
しかし、いつか、持ち主の裕也が気づいて、携帯の利用にストップをかけるかもしれない。
もしそうなったら、落ちてきた場所に携帯をこっそり戻しに行こう。
それまでの間は、俺は裕也を演じるという背徳感のある遊びを楽しむことにした。
夜になった。
いまだに、携帯が止められる気配もないし、誰からもかかってこない。
俺は沙紀にメールを送った。
「今日もつかれた。沙紀、旅行は楽しんでいるかな? 俺はもう寝るよ。おやすみ」
返信が来た。
「おつかれさま~ 旅行、楽しいよ! しばらく裕也に会えないのさみしいけどね 明日もいい日になるといいね! おやすみ~」
沙紀本人から電話がかかってくることは、何とか回避できた。
写真のかわいい女性から、おやすみなんてメールで言われたことで、なんだか嬉しくなってしまった。
リアルの恋愛ゲームをプレイしているような感じだ。
どこまでバレないでやれるか、そのスリルを俺は楽しんでいた。
次の日の朝、沙紀からのおはようメールで起こされた。
こういう生活も、なんだかいいものだ。
その後も、俺は沙紀とのメールを楽しんだ。
しかし、一晩経っても携帯を落としたことに気付かない裕也のことが気になった。
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