部屋割り

 翌朝、私は謎の息苦しさで目を覚ました。

 感覚的には紫音に抱きしめられていて、そのせいで息苦しいのだと思う。

 頑張って目を開けるが、やはり抱きしめられているせいか、視界は暗く、呼吸もしづらい。


(うっ。呼吸できない!それにこの柔らかさ、もしかして紫音、着痩せするタイプなの?!昨日、見た感じはそこまでのような気がしたけど…

とにかく、今は何とか紫音を起こさないと死ぬ!)


 私は、紫音を起こすべく、彼女の腕を叩いたり、揺すったりする。

 しかし、紫音は全然起きる気配がない。仕方ないので、私は紫音の腰に腕を回して抱きしめ返し、そのまま左側に回転。

 私の左側はベットがないため、紫音はそのまま床に落ちた。


ドスッ!


 紫音がいい音を出して床に落ちた。その衝撃で目が覚めたのか、紫音は体を起こして私を見て来る。


「なして私のこと、ベッドからおどしたの」


「紫音が私のことを抱きしめたまま離してくれないし、揺すっても起きないから、最終手段をとった」


「もう少し他の方法ながったの?」


「紫音の胸が意外と大きいせいで、窒息しかけてたから無理だったよ。文句なら自分の胸に言って」


 そんなやり取りをした後、ようやく目が覚めてきたのか、若干訛ってた言葉は標準語になり、しばらくしてから朝ごはんの事について聞いて来る。


「朝ごはんはどうするの?」


「朝ごはんっていうか、もうお昼近いけどね。昨日買えなかった分を買いに行くついでに、どこかで軽く食べようか」


「わかった。今から準備するね」


「なら、私は待ってるよ。…あ、そういえば」


 私は、昨日、寝ぼけながら話してた彼女の訛りが気になったので、その件について聞いてみる事にした。


「紫音、昨日の夜ご飯の時、訛りながらなんて言ってたの?」


「…え?」


 すると、出かける準備をしていた紫音は動きを止めて、私の方を向いてきた。


「私、昨日また訛ってた?」


「夜ご飯を食べてた時にね。たしか、『あぁ。うんめぇ。こすたなうめぇもんがコンビニさ売ってんだ。…あ、はくのー、こっちもうめぇから、はくのもけ』って言ってたよ。何となく分かるものもあったけど、分からないのもあったから教えて欲しいな」


 紫音は、私が昨日、彼女が言っていた事を教えると、羞恥で顔を赤くしながらも、意味を教えてくれた。


「うんめぇは、そのままうまいだよ。こすたなは、こんなにです」


「なるほどね。じゃあ、けっていうのは?これが一番分からなかったんだよね」


「け、は、食べなって意味です」


「そうなんだ。食べなが一文字で済むのは楽でいいね。私も今日から使おうかな?」


「絶対だめ!白玖乃はそのままでお願い!」


 なぜか紫音に全力で止められたため、私は仕方なく了承して諦めた。でも、一文字で言葉が伝わるのは楽でいいと思うんだけどな。


 その後、紫音の準備が終わったので、私たちは昨日買えなかったものを買いに出かけた。





 昨日と同じショッピングセンターに来た私たちは、軽くお昼を食べた後、食器類や調理器具を見ていた。

 すると、紫音は黒猫の絵が描かれた可愛いカップを二つ持って、私のもとにくる。


「白玖乃!このコップ、お揃いで買わない?」


「可愛いね。いいよ、買おうか」


 私が了承すると、紫音は嬉しそうに微笑み、カップをかごに入れた。

 その後も、皿や鍋、包丁にまな板など、料理をするのに必要なものを紫音の意見を最優先に聞きながら選んでいく。

 ひと通り必要なものを買った私たちは、他に欲しいものがないかを確認して、特にないとの結論になったため、帰る事にした。





 アパートに帰って来た私たちは、茜さんから部屋の鍵を貰うため、管理人室に向かう。

 管理人室の扉をノックすると、少ししてから茜さんが扉を開けて出て来る。


「305号室の橘白玖乃と鬼灯紫音です。部屋の鍵を貰いに来ました」


「お帰りなさい、二人とも。今鍵を持って来るから少し待ってね」


 そういうと茜さんは、部屋の鍵を取りに一度部屋に戻り、すぐに鍵を持って来て渡してくれた。


「ありがとうございます。…あ、そういば、去年オープンキャンパスに参加した時に、一緒にいた先輩の方に聞いたんですが、部屋割りは各アパートの管理人がゲームなどで決めるって言ってたんですが、今年はどうやって決めたんですか?」


「競馬」


「……はい?」


「今年は競馬で決めたのよ」


「ど、どういうことですか?」


「競馬って、番号を付けた馬が走るじゃない?

 それで、1レースで走る馬のうち、1番から6番までに今年の入居希望者の名前を割り振って、その1番から6番の馬がゴールした順位を記録しておいて、それを2レース分やるの。


 そして、私が名前を割り振った馬の中で、1レース目の一番だった子と2レース目の一番だった子を同じ部屋にって感じで、ゴール順が同じだった子を一つの部屋に割り振りました!

…ただ、競馬自体は負けてしまったので、お金がなくなりました」


私と紫音は、あまりの決め方に開いた口が塞がらない。


(もしかして、茜さんって見た目は美人なのに、ダメな人なんだろうか。せめて、名前を割り振るだけにして、賭けなければよかったのに)


 どうやら今年も、部屋割りはとんでもな方法で決められたようだ。


 そして私たちは、競馬で負けたらしい茜さんから鍵を受け取り、先ほどの衝撃的な話から立ち直れないまま、部屋へと向った。








◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 どうでもいい話ですが、今日、スライムが主役の映画を見て来ました。


 この作品、私はとても好きなのでもちろん小説も読んでいるのですが、女性キャラがみんな魅力的で可愛くて推しなんです。


 映画で、アニメにまだ登場していなかったキャラが出て来たんですが、そのキャラと声優さんがピッタリすぎて、もはや感動してしまいました。

 アニメ3期をやってほしいです。

 ちなみに、アニメ版の一推しは竜皇女です。

あの元気さがたまらなく可愛い。


 皆さんもお時間がある時に、是非見てみてください。


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