第55話 VS宇宙艦隊
「艦長!大変です!」
「何事だ?」
「巨大な彗星が突如現れこちらに向かっております!」
「何をいっている?この宙域にそんな存在は無い。彗星が通過する軌道上でも無いはずだ」
「回避不可!まもなく衝突します!」
「ばk」
その言葉を最後に彼らは宇宙の藻屑となった。
一方別の艦隊でも同じことが起きていた。
「彗星発生!?こちらに向かって来ます!!」
「彗星だと!?」
「回避間に合いません!」
「……」
画面に映し出された敵艦隊、そこにも彗星が写り込んでいた。同じ運命をたどるのだろう。
艦隊総司令である彼の思考はそこで終わっている。
「うん、この宙域の艦隊は残り僅かかな」
流石と言うべきか、宇宙艦隊の展開範囲は渉の思考を超えていた。彗星により破壊できたのは、およそ5分の4。
「宇宙規模って難しいよね~、途中で爆破して破片で攻撃でも良かったかな」
数万の艦隊を一撃で追い込んだ人物が何か言っている。
「残りは各戸撃破で行こう」
そう呟くと渉は宇宙を駆ける。その速度は物理法則の限界、光の速さであった。ほんの数秒で左側の残存艦隊へと辿り着く。
「んじゃま、他世界の害悪は消滅してもらいましょう」
両手を前に突き出すと、魔力が集中していく、強烈な熱の塊が発生し、その大きさを拡大していく。
言い換えるならば太陽。
「う~ん、太陽フレアかな」
そのまま残存艦隊へとその熱の塊を解き放つ。
「ここで、こうっと」
艦隊中央へと向かった熱は中心部で爆発した。その衝撃は凄まじく、熱と余波とで艦隊を消滅させていった。
「よし!こっちはこれで終了だな、向こうの艦隊を殲滅すればここでの役目は終わりだな」
振り返り相手残存艦隊を確認すると、今度は両手に雷を纏う。
「氷、熱、とくれば今度は風とか言いそうだけど、宇宙空間に風無いから雷でいきましょう」
両手にそれぞれ一つ、合計二つの雷の塊を生み出す。今までと違い大きさは手のひらサイズ、だがそのに内包された破壊力は計り知れない。
そのまま正面左右へと解き放つ。
扇状に広がる雷の塊、広がりながら中心へ向かい雷が発生している。まるで投網である。
逃さずすべて殲滅する為に生み出されたソレは、見事に敵艦隊を残らず殲滅していた。
「うし!これでこの宙域は終了だな、後どれくらいこの世界の宇宙で展開してるんだろう……まっ、のんびり行きますかね」
渉は宇宙の彼方を見つめながらそう呟いた。
●〇●〇●〇●〇●〇●
(サイド メイガス帝国)
「第1080、1082、1085艦隊消滅!惑星ルルイでの軍施設も消滅したとの事です!」
「これで何件目だ!残存艦隊と軍事施設の状況を報告しろ!」
怒声を浴びせながら、指令室で部下へと唾を飛ばす男。数日前から発生している謎の事件。
艦隊が一隻残らず消滅していると報告を受けた。
突然消滅した艦隊。当初は何かの減少に巻き込まれたのではないか、そう考えられていた。
だが、メイガス帝国に所属する各惑星の軍事施設が破壊され始めてから状況は変わった。
一連の事件が始まったのは一月ほど前、それは突然軍司令部に持ち込まれた。
「指令、第569から901艦隊が、ラパノクラ宙域で間も無くイヤイラの艦隊と接触します」
「そうか、そんな時間か」
指令にそう伝えて来たのは副指令、今回の戦争は300以上の艦隊による大規模戦となる。
派遣された戦艦は大小合わせて5万を超えている。
この銀河大戦が発生してからすでに300年余り。
多くの惑星を支配下に置いてきたメイガス帝国、侵攻する先に敵は居なかった。植民惑星を増やし、我が物顔で支配地域を拡大していった。
この宇宙に敵は存在しない。
それほどまでに力を拡大していたメイガス帝国。だが、310年ほど前メイガスと同等の力をもつイヤイラ帝国が立ちはだかった。
「前回の戦闘、相手にも相当なダメージを与えているが、こちらの被害も大きい。例の計画は何故か頓挫してしまったからな。ここで相手にダメージを与えたいところだ」
「システムが例の惑星を補足できなくなったとききましたが」
「うむ、期日前日。突然のシステムダウンした結果。例の惑星が補足できなくなったと聞いた」
「その惑星、それ程重要だったのでしょうか?」
例の作戦、それは地球人を大量に兵士として補充する作戦である。
「何といえば良いのか、文明レベルは我々に遠く及ばない。だがな、そこに住む原住民の潜在能力は計り知れないのだ」
「惑星カラムスでの報告は伺いましたが……、本当なのですか?」
「うむ、他世界より召喚された勇者、アレは危険だ。己が身体一つで中型戦艦を五隻粉砕し居った」
「にわかには信じられません」
そう、それは偶然なのか偶々なのか、惑星カラムスに侵攻した際相手どった人物。
勇者と呼ばれた存在。
年齢的には50を超えていると聞いた、だがその力はまさに脅威であった。振う剣で戦艦の装甲を貫き、魔法の力で部隊を殲滅していく。
「我々が惑星ごと破壊する手段に出なければ、甚大な被害が考えられたな」
「流石の勇者も、星ごと破壊されては生存できなかったのですね」
「さよう、カラムス破壊前に多くの原住民を確保した。原住民共の話の中で判明したことだ。地球と呼ばれる星からその存在、勇者を召喚した、とな。そこで我々は考えた、文明レベルの低い奴らが召喚できたのであれば、我らにも可能ではないか、と」
「一個人の力で艦隊を相手どれる、確かに戦力として申し分ありませんね」
「うむ、あの力は我らにこそ相応しい」
「納得しました。お話しいただき有難うござい…」
「お話し中失礼します!緊急です!」
司令官と副指令の会話に割って入って来た部下。
「ラパノクラ宙域に展開している部隊より報告です!突如現れた彗星により展開していた艦隊の5分の4が消滅!被害甚大!指示を求めるとの事です!」
「何を…何を言っている?彗星…彗星だと?どこにそんな物があった!?残った艦隊の被害状況は?イヤイラの奴らは!?」
「残存艦隊の被害も甚大、彗星の衝突の余波でまともに機能している戦艦は3000も無いかと…、それとイヤイラの艦隊にも同様に彗星が衝突したとの事、状況は五部ではないでしょうか」
報告を聞いた指令は頭を抱えた、状況は五部?状況だけ見ればそうなのかもしれないが、被害が甚大過ぎる。こいつは頭が悪いんじゃないか、そう八つ当たり死相だった。
「大至急撤退命令を出せ!これ以上「報告!ラパノクラ宙域に展開していた全部隊との通信途絶!信号すらありません、全滅したようです」……」
あまりの出来事にパクパクを口を動かす指令、彗星衝突の報告を受け、全部隊全滅までにかかった時間僅か4分程度。
たった4分で5万を超える艦隊が全滅したのだった。
そんな一大事件の4時間後、別宙域に展開していた部隊がまたしても消滅する事なる。
こんな偶然があるのか?そう司令部で考えていた頃、ある惑星の軍事施設が襲撃を受け、破壊されたとの報告が入った。
「何か解った事は?」
「全くもって不明であります……」
「軍事施設の状況は確認できたが……、あれでは更地ではないか」
「はい、ご丁寧に地下施設まで破壊されています」
不可解な艦隊の消滅、それだけならば自然現象で片付いたかもしれない。だが、軍事施設は違った。どう考えても目的を持った人為的な破壊である、破壊ではあるのだが……。
「これは人が成せる事なのか?」
そう、施設は砂と化し土地は更地となっている。ご丁寧に地下施設があった場所は湖となっている。不気味なのは雨が降っていないのにも関わらず、水が有った事、そして水生生物が存在していない事であった。
「我々はいったい何に手を出したんだ……」
報告を受けた皇帝は卒倒して倒れたと聞く、得体のしれない敵、メイガス軍は唯々戦々恐々としていた。
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