29. 順調な戦力増強

 冒険者たちがやってきたあの日を境に、拠点周りでもゴブリンを見かけるようになってきた。おそらく、どこかにゴブリンの集落ができているんだろう。大抵は四、五体でグループを組んでやってくるみたいだ。


 拠点付近まで近づいてきたゴブリンたちは殲滅できていると思う。だから、彼らの本拠地にこちらの拠点の情報は渡っていないはずだ。でも、毎回同じ方向を探索する小隊が戻らないんだから、何かがあることはバレているだろうね。


 危険な状況ではあるけど、ゴブリンの死体が手に入るのはありがたい面もある。人型ユニットが作れるんだから。あれから一週間でユニットもかなり増員している。戦力は十分だ。


 というより、増やしすぎを心配する必要があるかもしれない。今はよくても、冬になると食糧不足になる可能性もあるからね。これ以上の増員は様子を見ながら必要に応じてやっていこう。


 戦闘要員として増やしたのはゴブリンをベースにした探索者ユニットだ。今のところ、コストと戦力のバランスが一番いいのが探索者なんだよね。全部で15体呼び出したから、かなり賑やかになった。


「イーニャ隊、アーニャ隊、サンニャ隊はいつも通り五人組で隊を組んで哨戒任務をお願い」

「「「ニャー!」」」


 指示を出すと、隊長格の三人が敬礼のポーズをとった。

 ゴブリンベースの探索者ユニットは二足歩行する猫って感じの見た目。背丈はゴブリンと同程度で小柄だ。ミアはケットシーみたいだと言っていた。といっても、ケットシーは妖精の一種で、人前に姿を現すことはほとんどない。当然、ミアも見たことがあるわけじゃないので、あくまでイメージだ。ちなみに、僕は猫人ねこにんと呼んでる。


 ゴブリンは個体ごとに能力がまちまちなので、その死体を素体として作った猫人たちの能力にもばらつきがあるみたいだ。なので、特に能力の高い個体を選んで隊長に任命した。イーニャは身体能力が高く、アーニャは索敵や隠密行動に優れている。そして、なんとサンニャは魔法が使えるんだ。炎の矢を数回飛ばせる程度だけど、遠距離攻撃ができるだけ戦闘では有利だからね。


 彼らの役割は拠点周辺の見回り。ゴブリンや魔物を見つけたら積極的に狩っている。探索者ユニットは戦闘力が少し強化されているから、同数のゴブリンに負けることはない。というわけで、五人を一小隊として三隊体制で活動して貰っている。


 他に増やしたのは、ゴブリン素体の被験者。つまり、ひぃすけたちの同僚だね。こちらは12体増員した。ひぃすけたちを含めると、こちらも15体だ。ちなみに彼らのことは鼠人ねずみにんと呼ぶことにした。


「ひぃすけ班は草刈りをお願いね!」

「きゅい!」


 鼠人部隊は資源回収が主な仕事。彼らも三小隊に別れて活動している。隊長はひぃすけ、ふぅすけ、みぃすけだ。彼らは先任者だけあってモルットから毒の有無などを伝授されているからね。資源回収班の責任者としては適任だ。


 ひぃすけ班には南方向に向けて草刈り任務を進めて貰っている。これは植物ポイントを確保するとともに、南方への道作りの布石だ。シリルたちの話だと、この拠点に一番近いのが南のハズリル王国らしいからね。


 今のところ交流はないけど、開拓を考えるなら全く接触しないわけにもいかないと思うんだ。やっぱり、人が住んでこその開拓地だからね。不便な僻地だと移住者はやってこないだろうし、道くらいは必要かと思って。


 草刈りしてもすぐにまた草が生えてくるから、中々大変みたいだけど。まあ、急ぎではないので、ポイント集めのついでに地道にやっていけばいいかな。


「次はふぅすけ班か。伐採はもういいから、君たちにも食糧確保に回って貰おうかな。みぃすけ班は引き続き食料採取をよろしく」

「「きゅい!」」


 ふぅすけ班には拠点周辺の木を切ってもらっていた。木材ポイントの確保もあるけど、どちらかといえば、視界確保が目的かな。見晴らしが悪いと奇襲を受ける可能性が高まるからね。安全確保のためにも、近場の木は切ってしまう必要があった。ふぅすけ班の活躍で、周辺の伐採はかなり進んだから、しばらく木を切る必要はなさそうだ。


 みぃすけ班は食糧確保を重点的にやってもらっている。ユニットが増えたから、維持コストも嵩んでいるんだよね。拠点周辺の食料はすでに取り尽くしているから少し遠出しないと食料も確保できなくなっている。僕やミアたちでは食料を確保するのも難しくなっているんだ。


 その点、みぃすけ班はよく頑張ってくれている。ここしばらくは、彼ら単独で僕らの食料消費を支えくれていたからね。ふぅすけ班も食糧確保に回したから、周辺の食料が枯渇しないかぎりは食料に困ることはないだろう。


 鼠人部隊は探索者ユニットではないので、猫人部隊に比べると戦闘は少し苦手だ。といっても、僕なんかよりはよほど強いけどね。死爪兎やマーダーアントなんかは鼠人小隊だけで十分に対処できるから、彼らに護衛はつけていない。同数のゴブリンを被害なしで撃退するのは難しいけど、周辺を警戒している猫人部隊がすぐに駆けつけられる場所で作業しているから、今のところ被害はないね。


 ユニット増員で、拠点一帯の安全は確保できたし、開拓は今のところは順調だ。住人は三人しかいないけどね。


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異世界二十日目朝

食料pt:474

木材pt:22487.2

金属pt:11.1(ゴブリンから鹵獲した武器で増)

土材pt:たくさん

薬効pt:15.7

植物pt:809.3

動物pt:249

マナpt:498

旧神pt:1


住人:3

ユニット:38

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