24. ひまわりさんの農業指導
洞穴暮らしを卒業した日から三日が経過した。ひぃすけたちが確保してくれた木材で防壁も作ったから、拠点近くではかなり安心して過ごせる環境も整ってきたね。
当面の目標はユニット生産。今のところ、食料ポイントの収支には余裕がある。二、三体くらいなら増やしても大丈夫だろう。
ただ、ちょっとした懸念はある。最近になって、食料の確保に時間がかかるようになってきたんだよね。理由はわかっているんだ。単純に、拠点周辺の食料を取り尽くしてしまっただけ。豊かな森だけあって、探索範囲を広げればまだまだ食料はあるんだけど、移動に時間がかかるので採取効率が落ちるんだよね。移動が増えると魔物と遭遇する機会が増えるから安全面でもあまりよろしくない。
対策としては、野菜作りでもしようかなと思っている。すぐに結果が出るようなものじゃないけど、この辺り一帯の食料を取り尽くした後に慌てて始めるよりはいいだろう。上手くいけば、ちまちま採取しなくて済むようになる。ついでに、石けんやシャンプーのために、薬草園なんかも作れたらいいな。
「というわけで、まずは労働ユニットを増員しようかな」
『でしたら、おすすめのユニットがいますよ。“陽気な農家”です』
「へぇ、生産系のユニットもいるんだ。コストは?」
『生産時に食料20と植物20ですね。維持コストは食料1ですが、普段は必要ないと思います。光合成するので』
光合成ということは……植物のユニットってことか。維持コストがかからないのはいいね。
植物ポイントは服と交換するのに必要だから余っているとは言えないけど、20くらいなら問題ない。一番優先すべきなのは食料だしね。
「じゃあ、お願い!」
『はい。ではいきますよ!』
ぼわんといつもの演出。
煙が晴れた後に見えてきたのは……ひまわり、かな?
「お花?」
「……と言ってもいいのかしら?」
そばで見ていたルドとミアの反応はこんな感じ。まあ、無理もないかな。
見た目はひまわりによく似ているけど、明らかに違う部分も多い。花の部分が顔のようになっていて、何故だかサングラスをしている。背の高さは僕と同程度。茎から生えた二枚の葉っぱが手のような形になっていて、それを伸び縮みさせて器用に動かせるみたいだ。
「君の名前は……サンファにしよう。ええと、よろしくね?」
僕の言葉に、サンファは右手でグッドサインを作って答えた。了解ってことらしい。意思疎通はできるみたいだね。
ミアたちはまだビックリして硬直しているけど、僕はもう慣れたものだ。というか、日本には昔、あんな感じの玩具があったらしいし。音に反応して、ひまわりみたいなクリーチャーがうねうねと踊るんだったかな。実物は見たことはないけど、画像は見たことがある。そのせいか、それほど違和感がない。
「早速だけど、サンファ。あの辺りに食糧確保のための農地を作りたいんだ」
拠点となる家の周りは、ひぃすけたちの頑張りによって、かなり切り開かれている。また、家を囲む防壁はすでに設置済みだ。ひとまず、家の周囲20mほどを囲むように作った。材料はあいかわらず土と木だけど、家の壁よりは分厚くしてあるので耐久性は増している。出入り口は普通の木の扉だから、そこだけは脆いんだけどね。とはいえ、見張る場所をかなり制限できるわけだから、防衛はしやすくなっている……はず。
今回農地を作るのは、防壁の内側のスペース。これなら魔物に食い荒らされるリスクも少ない。比較的安全に食糧確保に取り組めるはずだ。
僕の要望を聞いたサンファは、大きく頷くと根っこを足のように動かして歩き始めた。人と同じようにとはいかないものの、移動速度は意外にも素早い。
指定の場所に到達すると、サンファはそこに根を下ろした。こう、ずぼっと土の中に根っこを突っ込んだんだ。それで土質が分かるみたい。
しばらくして、サンファが両手を頭の上に掲げて、大きな丸を作った。栽培に問題は無いみたいだ。
それから、何を育てるか僕とブランとサンファで相談した。といっても、僕は要望を伝えるくらいだけどね。
その結果、育てるのはさつまいも、トマト、大根ということになった。種はもちろん資源交換でブランに出してらう。おかげで、植物ポイントはすっからかんだ。ひぃすけたちに草刈りを頑張って貰わないと。
育てるのはサンファにお任せだ。あと補佐役としてフェアを指名しておく。まあ、実態は水やり要員だけどね。今のところはこじんまりした畑だから、フェアに水を出して貰えばなんとかまかなえる。とはいえ、将来的に畑を広げるなら難しくなるだろう。湧水の祭壇もできるだけ、早く確保したいところだ。
ああ、そうそう。農業の話をしていてわかったんだけど、今の季節は夏が始まる直前ってところらしい。寒くなる頃には食糧確保も難しくなるだろうから、少しだけ心配していたけど、まだまだ先の話みたいだね。野菜作りがうまくいけば、その心配もなくなるかな。
「ん? あれ、この鳴き声は」
『グレナですね。戻ってきたようです』
探索に出ていたグレナが戻ってきたようで、防壁の向こうからニャアニャアと声がする。「見つけた! 見つけた!」と言っているみたいだね。
扉を開けてあげようと思ったんだけど、その必要はなかった。グレナは近場の木を使って、防壁を飛び越えてきたんだ。着地も鮮やかで怪我一つ無い。
防壁は3mくらいの高さがあるんだけどなぁ。あんまり過信しない方が良さそうだ。防壁のそばの木は切っておいた方がいいかもしれない。
それはさておき。
「どうしたのグレナ。そんなに慌てて」
「ニャー! ニャニャ! ニャー!」
普段からあまり落ち着きがないグレナだけど、今日は一段と興奮しているようだ。探索中に何かがあったんだろう。
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異世界十二日目昼(サンファ召喚後)
食料pt:223
木材pt:992.4
金属pt:1.7
土材pt:たくさん
薬効pt:8.7
植物pt:194.5
動物pt:132
マナpt:113
旧神pt:1
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