23. 憧れのマイホーム

物語冒頭に短いエピソードを挿入しました!

神様への見方が変わるかも?

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 ひぃすけたちの頑張りのおかげで、ついに家づくりの木材が集まった。まあ、“ついに”なんて言い方したけど、お願いした日を含めても三日しか経ってないけどね。


 彼らは極めて優秀だった。一人あたり、一日に十本くらいの木を切り倒してくれる。おかげで、今日までに八十本分の木材ポイントが集まった。必要最低量は四十本だったけれど、思いのほかハイペースで伐採してくれるので、ちょっと欲張って二倍の量を集めて貰ったんだ。


「家を作ります!」


 僕が宣言すると、周囲のみんながガヤガヤと騒ぎ立てる。周囲の探索に出かけているキマとグレナ以外は集まっているので、とても賑やかだ。


「どんな家かな?」


 ルドは無邪気に喜んでいる。一方で不安そうな表情を浮かべているのがミアだ。


「私たちで作るんでしょうか……?」


 うーん、ブランに出してもらうという話はしたはずだけどなぁ。さすがに、信じられなかったのかな?

 まあ、本当に作れるかどうかは僕も知らないんだけどね。とりあえず、試してみないと。


『作るのはいいのですが、どこにですか?』


 ブランに言われて少し考える。

 洞穴も何かに利用するかもしれないし、できればこの近くに家を建てたい。となれば、家を建てることができそうなスペースは伐採によって拓いた場所くらいしか候補がなかった。


「それは……やっぱりひぃすけたちが木材を切り出したところかな」 

『そうですよね。では、その前に切り株を取り除いてください』

「切り株……!」


 やっぱり取り除かないと駄目か! 気付かないふりをしたらブランが上手いことやってくれるかなと思ったんだけど。


「これ、取り除くの大変なんだけど……」


 とりあえず、足でぐいぐいと押してみたけれどビクともしない。これ、下手したら伐採するよりも大変なのでは?


「ああ、そうだ。ブランは、例の黒い球体を下方向には出せるんだよね?」

『出せますよ。ああ、木の周りの土を吸収するわけですか』

「そういうこと。試しにひとつやってみよう」

『わかりました』


 ブランが切り株の上に乗って吸収を試みると、その周囲2m四方くらいの土がごっそりと消えた。その結果、切り株は陥没。簡単に取り除けるような状態になった。と言っても、重いだろうから持ち運ぶのはそれなりに手間だけど。僕はもちろん、そんな面倒なことはしない。


「それじゃあ、切り株もついでに吸収しちゃって!」

『わかりました!』


 ブランに吸収して貰えば、木材ポイントにもなって一石二鳥だ。あとは、土材ポイントをただの土と交換して埋め戻せば平たい地面のできあがり。


「上手くいったね」

『そうですね。残りも同じように処理しますか?』

「うん。よろしく」


 お願いすると、ブランは次々に切り株を取り除いて整地してくれる。切り株はたくさんあるとはいえ、このスピードならすぐに準備は整いそうだね。というか、これならわざわざ伐採しなくても良かったんじゃないかな。もっと早く気が付けば良かった。


 ブランの吸収能力を使えば、井戸も簡単に掘れそうな気がしてきた。とは言っても、飲み水には使えないかな。掘るだけで周囲を固めたりするわけじゃない。周囲の土が崩れると、水が濁っちゃうだろうからね。


 まあ、どのみち、掘ったところで水が出るとは限らないんだけど。そう考えれば井戸を掘るよりも、湧水の祭壇を手に入れるためにマナポイントを集めた方が確実か。


 そうこうしているうちに、ブランの整地が完了して結構広いスペースが確保できた。今度こそ家を作ることができる。


 ブランと相談して、出入り口は二カ所作ることにした。一つは、崖に面した洞穴の前。もう一カ所はその反対側だ。洞穴側が裏口だね。その他の条件としては、ライムの部屋……という名のトイレを用意すること。トイレといっても、単に下に穴が開いた狭い個室だ。難しいことはないはず。そのほかのことは、ブランにお任せだ。


『じゃあ、家を作ります。離れていてくださいね』

「わかった」


 ブランの指示に従い、少し離れた位置にみんなで移動する。


『もっと離れてください。確保したスペースの外まで下がらないと駄目ですよ』

「えっ、そんなに?」


 簡素な家と言っていたから、ちょっと広めのプレハブ小屋くらいを想像していたんだけど。ああでも、材料を二倍用意したから、その分は広くなるのか。


 とにかく、ブランの指示に従ってさらに距離をとる。さきほど整備したエリアから出たところで振り返ると、ようやくブランからOKが出た。


『では、いきます!』


 宣言してブランは高くまで飛び立つ。だいたい、僕の背丈の三倍くらいの位置で止まると、『それ!』とちょっと気の抜ける声を上げた。


 変化はすぐだった。ポンという軽快な音が響くと、地面からミニチュアサイズの家が生えて、みるみるうちに大きくなっていく。まるで高速再生で植物の成長を観察しているような感じだった。


「思った以上にでっかいなぁ」

『そうですか? 広さはマスターにわかりやすく言えば畳100枚分くらいですね』

「百畳!?」


 よくわからないけど、かなり広いと思う。ちなみに僕が一人暮らしを始めた1DKの学生向けアパートが全体で13畳とか14畳とかだったはず。およそ、その七倍ってことだ。


「わぁ! すごい! ここ僕たちのお家なの? すご~い!」

「こんな大きな建物が一瞬で……」


 ルドは大きな声で喜んでいるね。ミアもかなり驚いているみたい。目をまん丸になるくらいに見開いている。まあ、ビックリするよね。辺境の森の中にある規模の建物じゃないもの。広さで言うなら弱小貴族のお屋敷レベルはあるんじゃないかな。材料が木と土だけのせいか、見た目はそんなに立派なものじゃないけどね。ブランが簡素といったのは、それが理由かな。


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異世界十日目夕

食料pt:169

木材pt:490.1(家づくり後)

金属pt:1.5

土材pt:たくさん

薬効pt:8.7

植物pt:199.3

動物pt:114

マナpt:97

旧神pt:1



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