21. 水を確保するには

 ひぃすけたちが思った以上に優秀だったので、伐採は彼らに任せることにしよう。石斧を追加で二つ作って三人全員で伐採できるようになれば、作業スピードは三倍だ。丸太四十本だなんて、途方もない時間がかかると覚悟していたけど、思ったよりも早く確保できそうだ。これは実に助かる。


 こうなると、ゴブリンの死体がもっと欲しくなるなぁ。

 結構危ないこと言っている自覚はあるけど、それでも人型で道具を使った作業ができるユニットは便利すぎる。いや、探索者型にするのもいいかもしれない。多少は戦闘力も上がるはずだし、何より武器が使えるようになるのは大きい。思った以上に利用価値が高いな。もし、ゴブリンを見かけたら積極的に倒すことにしよう。


「さて、僕たちはどうしようか」


 木材集めはひぃすけたちに託したから、またやることがなくなってしまった。ひぃすけたちの代わりに草刈りをしてもいいけど、肉体労働系は僕がやっても効率がよくない気がする。いや、正直に言えば、疲れそうだからやりたくないだけなんだけど。


「ミアとルドは何か困ったことはない? まだ色々と不便だとは思うけど」

「んー? ご飯は美味しいよ!」


 ルドがニコニコと答える。貴族の生活と比べると不自由が多いだろうに、あんまり不満はないみたいだ。それに対して、ミアは何かあるみたいだね。まだ少し遠慮があるけど、促すとおずおずといった様子で答えてくれた。


「水があまり使えないのが……ちょっと困りますね」

「水かぁ。そうだよね」


 このディルダーナの地にやってきて八日目だったかな。まだ水場が見つかっていないんだよね。食料ポイントがあればミネラルウォーターと交換できるから、飲み水には困らない。とはいえ、生活用水にじゃぶじゃぶと使えるほどの余裕はないんだよね。だから、洗濯もできないし、水浴びなんてもってのほかだ。飲み水以外には、体を拭くために少しずつ使うくらいに留めている。


「水かあ。どうやって確保すればいいかな」

「井戸を掘る、とかでしょうか」

「ああ。井戸か……」


 それなら水場を見つけなくとも、水を確保することができる。とはいえ、適当に掘って水がでるものなのかな。掘るにしたって、僕では厳しいのでひぃすけたちに頼ることになる。今は家づくりを優先してもらいたいから、そうなると井戸は後回しになっちゃうね。


『井戸を掘るよりは、魔道具やユニット生産で対処した方がいいと思いますよ』


 困っていると、ブランがアドバイスしてくれた。資材ポイントさえあれば簡単に道具を作れるのは僕らの大きなメリットだ。それを活かさない手はない。


「どんな魔道具があるの?」

『水を生み出すという目的でしたら“湧水の祭壇”が一番でしょうね。とはいえマナポイントが1000必要となるので現状では手が出ません』


 湧水の祭壇は、水を生み出すことに特化した魔道具らしい。設置しておけば、無限に水を出し続けるそうだ。無限とは言ってもユニットたちと同じように維持コストが必要みたいだけどね。それでも、一日に必要なポイントはマナが1だけ。まとまった水量を確保できることを考えるとかなり格安みたい。長期的なことを考えると、是非とも手に入れたい魔道具だね。


 僕が所持しているマナポイントは100に満たない程度だから、入手できるのはもうしばらく先かな。今のところ積極的に魔物狩りをやっていないから仕方が無い。トラキチに頼めば一日でそれなりに稼いでくれそうな気もするけれど、護衛戦力として僕らの傍から離れないようにしてもらっているからね。もう少し戦闘要員が増えれば、積極的に魔物狩りも考えることにしよう。


「手頃な魔道具はないの?」

『今のポイントでしたら使い捨てがせいぜいですね。効率を考えるならユニット生産がいいのではないかと』


 ブランのオススメはユニット生産みたい。そのユニットとは“悪戯好きな魔法使い”。生産コストは食料10とマナ20なので、今すぐにでも作れる。注意点としては維持コストが食料ではなく、湧水の祭壇と同じくマナであること。とはいえ、ユニットは食事をとればエネルギーを補給できるので、魔物狩りが滞ってユニットが維持できないなんてことにはならないだろうけど。


『オススメする一番の理由は水の生産以外もできることですね。簡単な魔法なら使いこなしますから、生活が便利になると思いますよ。戦闘は得意ではないですけど、できないわけでもありませんし』

「ああ、それはいいね」


 何ができるかはわからないけど、火を生み出すことくらいはできるはず。今のところ、暗くなったら寝るって生活だけど、明かりがあればもう少しくらいは活動時間が伸びるだろう。それに、冬がくれば暖をとるために火は必要だ。自力で火起こしするのは大変そうだから、それだけでもありがたいはず。


 加えて戦闘までできるというのなら、言うこと無しだ。魔法使いというくらいだから正面戦闘は苦手なんだろうけど、攻撃手段が増えれば戦闘は確実に有利になる。


 これはもう“悪戯好きな魔法使い”を生産するしかないね!

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