4. 何事にも先立つもの(ポイント)が必要
あんパンだけだと喉が渇くので、追加で果物を取って飲み物と交換する。なんとなく、あんパンには牛乳ってイメージだけど、ちょっとお腹が弱いからやめておいた。代わりに選んだのは麦茶のペットボトル。大容量の600mlなのでたくさん飲める。
「あ、容器はどうしよう」
『私が回収しますよ』
思った以上に体が水分を欲していたみたいで、気がつけば麦茶を飲み干してしまった。空になった容器はブランが例の黒い球体で回収してくれるらしい。
『これでプラスチックカテゴリのポイントが0.1になりましたよ』
「そんなのまであるんだ……」
空のペットボトルも資源扱いになるんだね。エコではあるけど……この世界にもプラスチックはあるんだろうか。異世界転移だから無意識に古代から中世あたりの文明レベルを想像したんだけど、そうじゃない可能性もあるよね。
まあ、今はブランの能力の確認を優先しよう。どんな文明レベルだったとしても、この森にはあんまり関係がなさそうだし。
「じゃあ、次は道具作成について教えて」
『道具作成は資源ポイントや素材を使って、道具を作り出す能力ですね。資源交換と違って、基本的には複数資源のポイントが必要になります。例えば、木材ポイントと石材ポイントを使えば石斧が作れますよ』
なるほど。道具作成は資源を使った道具が作れるってことみたいだ。
「木材って、そこら辺に落ちてる木の枝でもいいの?」
『もちろんですよ。ただし、得られるポイントは少ないですけど』
こういうところも便利だよね。道具作りに使えない半端な素材でも、集めてポイントにすれば活用できるわけだから。
さて、問題は素材を集めるためにはこの木から降りないといけないってことだ。近くに虎の姿はないけどちょっと怖い。道具作りは一旦保留にして、最後の能力を確認しようかな。
「それじゃあ、ユニット生産っていうのは?」
『様々な能力を持つユニットを生み出す能力ですね。ユニットごとに必要な資源の種類と量が違いますから注意してください』
「うーん? ユニットって結局なんなの?」
『そうですねぇ……配下となる特殊な生物といったところでしょうか』
ユニットってそういうこと!?
戦略ゲームのように味方ユニットが作れるってことみたいだ。それは心強い。
「どんなユニットが作れるの? 虎に勝てるユニットはいる?」
『様々なユニットが存在しますが、強力なユニットはロックされているため、生産できません。特定の目標を達成することによって、制限が外れていく方式ですね。これは道具作成に関しても同様です』
「……えぇ? 何でゲームっぽいの?」
『それは私の創造主に聞いてください』
ああ、怠惰な神様の仕業か……。
享楽の神でもあるそうだし、面白そうだという理由でゲームっぽい仕様にしてそうだね。そんなところにこだわるくらいなら、僕を異世界転移させないで、自分で物語を書いて欲しい。
「特定の目標っていうのは?」
『すみません、具体的な内容は私にも伏せられています。おそらく、交換したポイントの総数だとか、能力の使用回数だとかがトリガーになると思いますが……』
ぐぬぬ……!
神様め、徹底しているな。ブランにもわからないなら、手探りでやってみるしかなさそうだ。
「それで……虎を倒せるユニットはいるの?」
『そうですね。現状でも条件を整えれば勝てるユニットはいますよ。ですが……』
ブランは半開き状態になりながら言葉を濁す。短い付き合いだけど、ちょっとずつわかってきた。元気なときはページが思いっきり開いて、逆に気まずかったりすると半開きになるようだ。なかなかわかりやすい。
「ですが?」
『ユニット生産はコストが重いんですよ。あれを正面から倒すほどのユニットを生産するコストを集めるのは難しいと思いますよ、今のところは』
むぅ、ユニット生産で安全確保するのは無理か。
「ちなみに一番コストの安いユニットは?」
『“献身的な被験者”というユニットですね。コストは食料ポイント5です』
「木の実25個分か。集められなくはないけどね」
『まあ食料ポイントは集めておいて損はありません。余裕ができたら生産してみるという方針でどうですか?』
「それもそっか」
ある程度の状況が整うまで、ブランとの交換で得た食べ物以外を口にするつもりはない。手に入れた食べ物は全てポイントに変換するつもりだから、食料ポイントの状況を見て判断すればいいか。
ひとまず、手が届く範囲の果物は全て回収してブランに吸い込ませる。ちょうど20個あったらしくて、食料ポイントは4になった。
「このまま木の上で暮らせないかな」
『飛び移って移動できるなら可能かもしれませんが……木の上が安全だとは限りませんよ』
虎に襲われたトラウマで地面に降りるのが怖くなっている。ちょっとだけ現実逃避してみたら、ブランに無慈悲な正論を叩きつけられてしまった。凶暴な猿とかいそうだもんね、この森。
仕方がないのでおそるおそる木を降りる。周囲の草木が風にざわめく度にビクリとしてしまうけど、特に何かが襲ってくることもない。無事に地面に足がついたところで、思わずふぅっと息が漏れた。
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本日は二話更新です。
明日以降は一日一話ペースで更新します。
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