第48話 修学旅行⑦

 修学旅行2日目。俺らは知覧の方に来ていて、戦争の悲惨さを学習した。


 人間と言うのは本当に悲しい生き物だな、と思う。どの年代でも色々な問題が起き、平和な時はないと感じる。俺も頑張って今を生きよう、そう思った。



 近くの和食の店で俺らは昼食を食べることとなった。お土産が売っている店も近くにあり、早く食べてお土産を買いに行きたいところだ。


「うわっ、めっちゃ美味しい」

 と思わず声が出てしまう。鹿児島県の郷土料理の鶏飯というものを初めて食べたが、鶏むね肉とスープがマッチしてとても美味しい。


「九州って何かと美味しい食べ物多いよな」


 俺の隣に座っている祐樹が言うように、確かに九州に美味しいものが多い気がする。よく九州食べ物フェアとかやってるし。あれ、不定期に開催されてるけど何なんだろうな。



 その後、食べ終わった俺と祐樹はお土産を見に行く。どうやら知覧はお茶が有名らしい。試飲させてもらったが、少し甘味があって飲みやすくて美味しかった。これは買いだな。親用っと。抹茶のお菓子とかも買っておくか。


 そんな中、俺はとある事を思い出す。


「えーとあれとこれとそれと……」

「何やってるんだカラメル」

「あっ、斗真」


 そうだ、カラメルはよく何でも買っちゃう癖があったんだ。


「明日も自由行動時間あるんだし、考えて買えよ」

「そ、そんなのわかってるし」

「ならよし」


 こうやって久しぶりにカラメルとこう話せたことが心地いい。


「なんで私に構うの?」

「別に大嫌いになったわけじゃないし。それにどうこう言う前に友達だしな」

「そっか」


 そうだ、俺とカラメルはまず親友なんだ。関係が全て壊れたわけじゃない。


「斗真さ、明日よければゆっくり話したいかな」


「俺もだよ」


 俺たちは恋愛の難しさという壁に苦しんでいる。でもそれをブチ壊せたら……もっと良い関係になっているだろう。



 その後、生徒会でお世話になった先輩の分や生意気な後輩の分のお土産に悩む。あれこれ悩んでいると肩をトントンと叩かれる。東雲さんだ。


「やほやほ。何買う?」

 東雲さんのカゴの中を見ていると、ご当地のキーホルダーがたくさん入っていた。


「そういう東雲さんはご当地に弱すぎでしょ」


「えーなんか良いじゃん。あっ、後で安佐川君にもあげるね」


「それはどういうことなんだ?」

 いやどういう関係性? てか同級生に渡すものなのか?


「俺は結構見てみて、良さそうなモノを買うかな。あとは値段との相談」

 もし安く済めば、趣味につかえると思いつつ。


「安佐川君は冷静だねぇ」


「冷静じゃない時もあるけどな」

 

 実際、自分の趣味になると大きく変わる。新作に手を出したり、新しいアニメにハマって原作が欲しくなったり、そしたら買っている続刊が追い付かくなって……あれ? オタクの皆はどうしてるのこれ。




 知覧の後は、ホテルに戻って体験学習などがある。簡単な陶芸教室みたいなもので、小皿とかを作るらしい。半年後ぐらいに焼かれて皿になった奴が自宅に届く、と言った感じだ、

 まぁホテルまではまた長い移動になるので、ネット小説でも読んで時間を潰した。皆も疲れていたのか、寝ている人ばかりだった。



 ホテルに着き、体操服に着替えて陶芸教室の準備をする。簡易的、ということで粘土で色々な面白い形を作っていく、ということらしい。


 ここでも俺は、とある事を思い出す。俺は気になって、瑞希の方へ行く。瑞希はとても器用に作業を進めていて、綺麗な形のマグカップを作っている様子だった。


「何?」

 瑞希は怪しむ様子で俺を見る。


「いややっぱお前、何でもセンスあるなって」

 と俺が言うと、瑞希は目をパチクリさせて


「そ、そう」

 とだけ言った。


「安佐川君、これどう? 犬用に」

 そう話しかけてきたのは東雲さんだ。犬の餌をあげる用の皿を作っているらしい、


「おお、そんな手もあるのか。良いな」

 デザインもシンプルで綺麗な形になっている。


「まぁ犬といっても、人間が犬になるかもしれないけどね」

「笑顔で下ネタ辞めなさい」

「束縛きらーい」


 東雲さん、本当に女子? 前世はさぞかしド変態のおっさんだったのだろう。



 その後、陶芸教室を終えて風呂と夕食を済まし、ホテルの部屋でゆっくりする。こういう時ホテルで見るバラエティとかいつもより面白く感じるんだよな。


「斗真、夜更かしするよな?」

「もちろん」


 修学旅行できちんと消灯時間に寝る奴なんているのだろうか。まぁ瑞希ぐらいはきちんと寝そうだけど。



「明日は自由行動か。楽しみだな」


「なんだよ斗真? 明日は俺の勝負の時なんだぞ」


 明日は重要な日だ。俺とカラメルの事もある程度、何か答えや方向性を見出さないといけない。ただ、東雲さんが言っていたこともある。どうなるかは分からない。


 瑞希と祐樹の関係にも一つの終わりが来る。ずっと好きだった祐樹がいよいよ瑞希に答えを伝える。告白を断ったからと言って縁が切れるわけではないだろうが、これも何が起こるか分からない。


「何かと後悔のないようにしたいな」

「ほんとだな」


 俺と祐樹は何かを確かめるように話す。


 人間の関係と言うのは実に脆い。一つの失敗で壊れてしまったり、ある一人の行動でどうとでもなる。喧嘩であったり、恋愛関係のもつれであったり……どうもこうして世界は不器用なのだろうか。


 修学旅行もいよいよ3日目。時が経つのは本当に早い。大人になった時、こんな事もあったなと思い出せれば良いな。



 




 

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