第39話 修学旅行前のある出来事
修学旅行もあと1週間後ぐらいになり、俺ら2年生の盛り上がりも最高潮だ。こういう時に先生は苦労するんだろうな、と思ってるが、先生達もなんやかんやで盛り上がってるというが、テンションが高い気がする。
そんな中、修学旅行前の最後の土日に、俺とカラメルは大型ショッピングモールに来ていた。来週の今頃は修学旅行から帰ってきてるのか、と思うとワクワクしてしまう。
なぜ大型ショッピングモールに来ていたのかというと、修学旅行の買い物をするためだ。俺はあまり買うものはないが、カラメルが付き合ってくれと言うので俺も一緒に行くことになった。あいつ買い物好きだからな……不安でしかない。
「斗真~! 今日はありがとね!」
カラメルはいつも通りの明るい挨拶で俺を呼ぶ。コートを羽織った大人っぽい服装は、カラメルらしくないけどこれもまた可愛い。それにもう12月、なんだなと思う。激動の1年が終わり、また新たな1年が来る。長く感じていると、いつの間にか終わる1年は本当に儚い。
「よし、じゃあ行こうか。ところで何買うんだ?」
「えと、まず新しいキャリーバックでしょ? それにホテルとかの部屋で着るパジャマ的なのも欲しいかな。後は遊べるゲームに、お菓子に……せっかくなら歯ブラシとかも新しく買おうかな……」
「はいはい。盛り上がるのは良いけど、無駄遣いしないようにな」
全く、カラメルはどれだけ買うつもりなんだ。ただこの前、本屋に行ったときに同じことを言われた気がする。うるせぇ、毎月気になる新作が多すぎるんだよ。
「多分大丈夫だよ」
多分と大丈夫はセットにならないし、信用できないんだが。
「買ったキャリーバックと俺を活用するにしても限界があるからな」
「わ、分かってるよ」
こうしてまずはキャリーバックを買うことに。カラメルは、値段やデザインを見ながらあれやこれやと悩んでいる。
ここで俺は、カラメルについて改めて考える。ここ2カ月ぐらい付き合って、特に大きな喧嘩もせず、順調と言えるだろう。ただ、“重い”という言葉がやっぱり引っ掛かる。
確かに思わないこともない。だけど俺だってカラメルの事は大好きだし、これが普通だろうと思っていた。女子ならではの分かる事もあるんだろうか?
まぁ、上手く行ってる内は大丈夫だろう。
「斗真、これどう!? じゃじゃーん!」
カラメルはそう言って、選んだキャリーバックを見せてくる。
「いいんじゃないか? 似合ってるぞ」
「えー斗真それだけー? つまんないの」
カラメルは頬を膨らます。
「他に何を求めるって言うんだ」
確かに、恋愛は難しい。付き合う前も相当だが、付き合ってからも本当に難題だ。ある事で急に冷めてしまったりもしてしまうし、好きな人だからこそ嫌なところが気になったりしてしまったり、しょうもない事で喧嘩したりしてしまう。最近では、蛙化現象という言葉もよく使われる。
それに性格やタイプによっても色々な問題が起きる。無理して高嶺の花と付き合っても合わせるのが大変だし、それこそ愛が重すぎる人は束縛したり、事件になることもしばしば。
ただ、俺とカラメルは良い距離感で付き合えてると思う。だから、きっと大丈夫なはず。多分……
その後、2人で昼食を済ました後はカラメルを止めるので精一杯だった。
「これ人生ゲーム買ったらホテルで遊べるかな? どうしてもホテルだと男子女子別れちゃうけど……瑞希と真緒と遊ぶのに良くない?」
「お前、これでいっぱいになっちゃうじゃねぇかよ。トランプとかで我慢しとけ」
「あっ、これ可愛い! あっこれも買おう! これも!」
「おいこら。何泊するつもりなんだ」
「新しい歯ブラシ買おうっと。あとは新しく買うものは……」
「お前は、修学旅行で新品縛りでもやってるのか」
そして最後にお菓子とかを買う食料品ゾーンに到着。なんとかカラメルの暴走は食い止められた。
「むーつまんないの」
カラメルはずっと不満そうだ。
「ホテルにも一応の備品というかアメニティはあるし、キャリーバッグの空いてるところはお土産が埋まるし。お土産を入れられないと悲惨だぞ?」
あの木刀とかを買って、ただ邪魔になるだけとかな。名産品買いすぎて、もう紙袋持てないですって言う奴も一人はいる。お土産買う時も、カラメルには注意しとかないとな。
お菓子を見に行くと、珍しい人と出会った。同じクラスの、
「「あ」」
俺とカラメルが東雲さんに気付くと、
「あっ、私のクラスの代表カップルじゃないですか。こりゃどーも」
東雲さんもこれまた人気の女子だ。スポーティーかつ清楚な感じもして、大人びた雰囲気もある東雲さんが人気じゃないわけないんだけどな。本当に美人だと思う。
それに真緒のようにサバサバとしていて、冗談とかもよく言ったりしていて接しやすい女の子だ。まさに男子の好きな所の詰め合わせセットといった感じだな。
「あっ、東雲さんも修学旅行の買い物?」
「そーそー。そちらは買い物ついでにデートですか。羨ましいですねぇ」
東雲さんは笑いながら言う。
「東雲さんもすぐ彼氏とかできそうだけどね」
「おや、彼女の前で口説きですか?」
「ちげぇよ。客観的に見ての意見だよ」
「まっ、私に見合う人がいないんでね」
それはそうか、と思う。なかなか東雲さんレベルの男子はそうそういないだろう。というか近寄る男は全部嫌だろうし。
「ほらほら。私たちも買い物しよ!」
俺と東雲さんが話しているところにカラメルが割って入ってきた。
「なら、私はお邪魔なので帰るとするよ。じゃあお二人さん、また学校で」
ただ、東雲さんは最後にボソッと俺にだけ聞こえる声で
「別れた方が良いんじゃない?」
と言った。
俺は、見えなくなるまで東雲さんの背中をただ見る事しかできなかった――
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