第40話 難題
カラメルとの買い物を終えて帰ってきた俺は、部屋で“ある問題”についてベットで横になりながら考えていた。
「重い、ね……」
真緒や後輩達、さらには偶然出会った東雲さんにまで言われてしまった。気にならないわけがない。
「そんな言うほど問題なのかなぁ」
一人で呟いても答えは返ってこない。人生のアドバイザーとかいたら儲けるだろうな、などとしょうもない事を考えている間に俺はいつの間にか寝ていた。
何事もする前が一番楽しい、と言うのはよく言われることである。ガチャを引く前、旅行に行く前、楽しみにしていたアニメを観る前など……もちろんしている最中も楽しいのだが、その前にあれこれと考えるのは、夢が膨らんで本当に楽しい。
ついに修学旅行前日となった今日、皆の盛り上がりも最高レベルに達していた。
「深夜まで話そうぜ」
「俺、自由行動時間に女の子誰か誘うわ」
「九州で可愛い子いるかな」
などといった色んな声が聞こえてくる。
「ねっ、斗真楽しみだね!」
俺の隣に座っているカラメルが笑顔で俺に言う。今日は前日ということもあり、班ごとに分かれての最終確認や事前学習などとなっている。
「そうだな。思い出いっぱい作れるといいな」
「うん!」
こういった様子を見れば、何も問題はないと感じる。ただ、この前の東雲さんと会った時の後、
『もう、斗真。他の女子と話しすぎ』
と少し怒られたことが未だに引っ掛かっていた――
「はい、じゃあ明日遅れるなよ」
何回同じことを言われたのだろうか……流石に高校生にもなると当たり前のことを言われるばかりの説明が終わり、明日の事もあるので今日は早めに学校が終わった。
カラメル、瑞希、真緒の女子組は女子だけの買い物がある、とか言っていたので、今日は久しぶりに一人で帰ることになりそうだ。部活も休みだし、祐樹を誘おうとしたが
「いや俺には俺の勝負があって、準備があるんだ」
「……そっか」
きっと祐樹は、この修学旅行で告白しようとしているんだなと俺でも察することができた。俺も文化祭という大きなイベントで告白した身だからよくわかる。あまり邪魔はしないでおこう。
前日だし、俺はさっさと帰って休むか、と思ったがここでふと考える。
「どうせなら聞いてみるか」
こうしてまず俺は生徒会に向かった。
「あれ、先輩どしたんすか? 今日は修学旅行前日で部活休みっすよ?」
「あぁ、小鳥遊か。ちょっといいか?」
「まぁいいっすけど。私のお土産は長崎のカステラでいいっすよ」
いやお土産の話じゃねぇよ。まぁ、助けてもらってる分と聞いてしまった分買わないといけなくなったが。
「そうじゃなくてさ、カラメルの事なんだ」
「今日は2年生もいないですし、皆も色々と都合や仕事などあるので生徒会室が開いているので、どうぞ」
「あぁ、すまんな。助かる」
偶然、生徒会室に人がいなかったのは幸運だった。なかなか人のいるところでは話せない内容だからな……
「それで話って何すか?」
「いやさ、カラメルが重いとかの話があっただろ? それが気になってさ」
「ああ、その件についてっすか。カラメル先輩にまた何かありましたか?」
「実はさ、こんなことがあって……」
俺は今思っていることや東雲さんとの引っ掛かっている件などを小鳥遊に話した。
「あぁ、もう限界っすね。一回別れた方が良いんじゃないですか?」
小鳥遊は、俺の言葉を聞いてきっぱりとこう言った。東雲さんの言っていたことと被る。そんなに重症なのだろうか。
「いいっすか? これはあくまで一個人の意見として聞いてほしいんすけどね。カラメル先輩は愛しすぎだと思ってるんすよ。いつか束縛したりするんじゃないですかね?」
確かにカラメルは最近、俺が他の女子と話していると不満そうな顔をする。東雲さんみたいな絡みがない女子ならまだしも、小鳥遊とか親交がある女子でもそういう顔をしていた。
「まぁ、確かにそれは思うけどさ。恋人ってそれが普通じゃないのか?」
「先輩の言う事も分かりますよ。ただ、それ以上です。カラメル先輩にも色々と思う事や愛情があると思うんすけどね。ただこのままだと悪い方向に行きかねません」
確かに愛が重くて起きた事件などもよく見るし、アニメやゲームとかでも描かれていたりしているのをよく見る。
「なるほど、な。ただその問題を解決するのには、どうしたらいいんだろうな」
「本当は話し合う、ってのが一番なんすけどね。だけどリスクが高いっす。先輩ならなんでか分かりますよね?」
「考えの違い、頑固、分かり合えない気持ち……こんなところか」
話し合って、それで解決できたならまだいい。ただ、お互いの考えであったり、望むところであったり、分かり合えなかったり……修復不可能になる可能性もある。
「そうっす。まぁ別れるのもリスクありますけどね。カラメル先輩がダメになっちゃうかもしれません。結局、時間経過とともにゆっくり解決するしかないかもしれないっすね」
「難しいな」
本当に恋愛は難しい。せっかく好きな人と付き合えても、そうそう上手くは行かない。
「まぁ、それぞれの事情もあるっすからねぇ。ただ、限界が来たときは……色々と決断するしかないかもしれないっすね」
とりあえず今は、注意しながら行動していくしかない――
小鳥遊との会話も終わって、俺は帰る事にした。カラメルの件は難しいけれど、今どうこう出来る問題じゃないしな。そうして、正門を出るとある一人の女子と目があった。
「「あ」」
その女子は、この前偶然出会った東雲さんだった。
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