4章 恋愛編

第38話 重い

「それでね~長崎駅には行きたいかなぁ! あっ、天主堂も観たいかも。そこら辺で買い物もしたいよね」


 12月に入って、修学旅行も2週間前ぐらいとなり、俺ら2年生はお祭りムードだ。ホームルームでは班長になったカラメルが色々と計画を立てている。


「ねっ、斗真はどこ行きたい!? 出島とかに行く選択もあるし、平和公園をじっくり見る?」

 カラメルは意気揚々に俺に話しかけてくる。


「おみやげとかは長崎駅で買おうかな、って思ってるし、そこで少し時間欲しいかな、って感じかな。あとは任せるよ。移動時間とかもあるし、あれこれ移動はできないけどな」


 自由行動時間は、そこまで長くないので行く場所も限られる。


「私は平和公園とかが良いかな」

「お、俺も!」


 瑞希が言うと、すかさず祐樹も続く。


「まぁバス移動で疲れてるだろうし、ゆっくり移動しようぜ」


 俺らの学校は公立校なので、予算の影響か何か分からないがバス移動がメインだ。九州に行くまでに、バス、新幹線、新幹線、バスという半日の移動がある。四国が断絶されすぎなんだよ、ほんと。


「まぁ、そだね! じゃ、そんな感じで後は各々好きなことしてて」

 カラメルはそう言って、担任の先生に、班の行動や状況を伝えに行った。


「好きな事ねぇ……カラメルちゃんは悪魔なのかな?」

 真緒は、ポツリと嫌味を言う。もちろん嫌ってるとかではないと思うが。


「誠に申し訳ございません」


「いやいや……私だけ外れちゃってるからなぁ。ほら」


 真緒が指を差した方を見ると、祐樹と瑞希が楽しく話をしていた。最近は、祐樹に対して瑞希もよく笑うようになった気もする。心が開けてきた、ということなんだろうか、


「まぁ、最近ますますアタックしてるからなぁ。祐樹は果たして付き合えるのか、ってとこだな」


「いやぁ、無理でしょ。瑞希は落ちないと思うけどなぁ。そういえば、そっちは順調?」


「おかげさまで」

 俺とカラメルも付き合って結構経ったが、上手くやれてると思う。


「カラメルちゃんってさ、少し重いんだよね。だからしっかり支えてあげてね」

 

 俺は、好きな人だから多少は重くなるのではないか、と思った。そう、真緒のアドバイスがこの時俺には分かってなかった。




 生徒会の活動をいつも通りこなし、今日もカラメルと帰る……予定だったが、カラメルは授業が終わった後、用事があるとかで先に帰った。カラメルも複雑な過程だから何事もなければいいと思うのだが。


 という事で、久しぶりに後輩の小鳥遊と来間と帰ることに。ちなみに、後輩2人も電車通学だ。俺とは逆方向だが。


「はぁ、今日は仕事が進みました。なんていっても、イチャイチャを見なくてよかったからっすねぇ」


「おい、小鳥遊。直球を投げるな。ストレートな嫌味は俺にダメージが」


「なら、これはどうっすか? あれ、なんで今日は仕事進んだんだろ? 先輩は分かります?」


「変化球だからいいわけでもねぇよ」

 本当に後輩は生意気だな。


「いやでもほんと木葉の言う通りですよ。特にカラメル先輩の方といったら……」

「ありゃひどいっすね」


 何だよ後輩そろって俺らをいじりやがって。


「まぁ、仲良くやってるからいいだろ。今月はイベントも多いしな」


「イベントねぇ。まぁ、先輩はさぞ楽しいものでしょうけど」

「ねー。そうだよねー」


 くっ、振った立場から強く言えねぇ! 


「先輩は色々まだ気にしてるっぽいすけど、別に気にしなくていいっすよ。振られたっからって距離が疎遠になるわけでもないし。それに、まだわからないじゃないですか」


「うん? わからないって?」


「先輩が別れる可能性も少しはあるっすよね? その時、チャンスだし」

「そうですよ。まだ諦めたわけじゃないですよ!」


 まぁ、その可能性もあるけどさ。そんな不吉なこと言うなよ、って言いたいけどそっか。こいつらにはこいつの物語があるし。野暮なことは言わないでおこう。


「カラメル先輩、重いからチャンスありそうっすよねぇ。私は付き合ってもサバサバしてますよ?」

 その小鳥遊の言葉で、今日の真緒との会話を思い出す。


「あのさ、カラメルって重いか?」

 俺は後輩2人に問いかけた。


「重すぎますね。今はギリ耐えてるって感じでしょうけど。壊れてもおかしくないっすよ。まっ、正論ぐらいは言ってもいいと思いますけど。そうじゃないと続きませんし」

 という小鳥遊、


「そうですね。気持ちはわかりますけど、やはり重いと思います。まぁ、男は恋人にはそこまで重くならないんですよね」

 というのは来間。


「あっ、それ聞いたことあるわ。男は所有したと思って、安心して浮気とかするってやつな」


「です。逆に女子は尽くしたいタイプなので……重くなりがちですね」


 やっぱり、カラメルって重いのかなぁ? まぁ円満に、仲良く付き合ってるから大丈夫と思うけど。


「ま、気を付けてください。付き合ってからや結婚してからの方がトラブル多いっすから」


 小鳥遊のそのアドバイスは何だかとても重要な気がした――




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