3章 文化祭編

第33話 文化祭①

「ただいまより、第32回文化祭を開催します!」


 10月――瑞希の宣言で、ついに文化祭が開催した


 全てはこの日のために準備をしてきた。不安な気持ちもあるし、とても緊張しているが、ここまで協力してくれた皆の気持ちもあるので頑張りたい。



 1日目午前。俺と真緒は一緒に回る約束をしていた。


「あー君嬉しい。ありがと」

「いやいやこちらこそ。てか、あー君呼び」

「いいじゃん。2人なんだし」


 そういった他愛もない会話などをして、


「あっ、生徒会のとこ行きたい。皆の努力とやらを拝見させてもらおうか」


と、真緒が言い出したので、第二体育館に。そこが生徒会ブースだ。




「うわぁ、人多いなぁ。てか凄っ!」

 第二体育館に着くと、真緒は段ボールでできた迷路にとても驚く。


「本当に大変だったわ。瑞希が上手くスケジュールとかを考えてくれて、カラメル達が頑張ってくれたおかげだな」


「あー君は?」


「俺は不器用なのとこういう作業が嫌い、ってのであまり仕事を振られなかった」


「どうやら新会長は有能のようだね」

 真緒の言う通りだ。まぁ、こっちとしても助かったけど。


 受付をしようとすると、

「あっ、先輩。おはようございます」

「斗真先輩、おはようです1」

「斗真先輩! お待ちしていました!」

 などと後輩達から挨拶される。


「人気者だね」


「まぁ、俺は優しいからな」

 自慢げに話していると、


「斗真君は緩いだけ、ってのもあるけどね」

 瑞希が話しかけてきた。


「おっ、おつかれさん。想像以上の人気だな」


「まぁ、毎年人気とは聞いていたけど……」


「まぁ、作業した身として嬉しいよ」


「私のおかげだけどね?」

 本当感謝してます、新会長。


「じゃ、お手並み拝見といこうかな」

 真緒は自信ありげな表情だった。


「あっ、ついでにキーワードが隠されているから探してみてね。全部で5文字と少ないけど、難しいよ」

 謎解き要素を入れることで、より楽しめて難しいものになっている。


「あっ、瑞希さん。そういやキーワードなんてあったね」


「斗真君がどうせ俺たちの頃に皆来るから、良いワードにしようっていたのは夢かな?」


「冗談だって」

 最近、会長になって、より俺の嫌味が多くなったな。


「なるほど……頑張る!」


「真緒、俺は答え知ってるから何も言わないぞ。頑張れよ」

 キーワードは俺が設定したわけだし。


 さんな俺たちの様子を見てか、


「大丈夫?」


 こそっと瑞希が俺に話しかけてきた。


「大丈夫。今日は俺が頑張る番だ」


「そっか」


 瑞希はそれ以上は何も言わずに、再び自分の仕事に戻っていった。




「キーワードなんて本当にあるの?」


 迷路に挑戦してから10分は経ったぐらいだろうか。真緒は、キーワードが見つけられず悪戦苦闘していた。


「あるぞ。位置を設定したのも俺だからな」


「性格悪いって言われない?」


「よく言われます」

 瑞希がこの仕事を俺に頼んだのもよく分かる。まぁ、こういうのは大好物だ。


「ゴールは分かったのになぁ。ヒント! ヒントお願い! 答えを知るよりも自分で見つけたいし」


「しょうがないなぁ。1文字だけだぞ?」

 と言って、あるものを指差す。


「これわかるか?」

 と真緒に問いかける。


「えっ、これただの段ボールじゃん」


 俺が指差したのは、行き止まりを示すために置かれている段ボールの箱だ。


「でも行き止まりを示すのにこの段ボールの箱があるのは不自然じゃないか? 置かなくても行き止まり、ってのはわかるんだし」


 大半の人は違和感を持たないだろう。


「た、確かに。それであー君は何が言いたいの?」


 俺はその置かれている段ボールを持って、真緒に見せる。


「あっ、底になんかある! “が”って書いてある!」


「そいうこと、はい1文字教えたぞ」


「いや性格悪っ!」




 その後も30分ぐらい戦い、真緒はどうにか2文字を見つけ出してゴールした。まぁ、俺が見かねて少し手助けしてしまったけど、


「はぁ……疲れた。あー君に教えてもらった“が”に“り”と“う”か」


「まぁ、3文字分かれば十分か」


「うん。答えは“ありがとう”だね」


 そう、“ありがとう”がキーワードで、俺が一番に伝えたかった言葉だ。皆の気持ちや協力してくれた人たちなど色々な気持ちを込めて。


「難しいだろ? まぁ答えが出回る前に挑戦できてよかった」


「本当ひねくれてたよ。そうそう見つからないよ、あれ」


「これが俺が伝えたかった言葉だ。真緒、話したいことがある。いいか?」


「……うん」




 文化祭はまだまだ続く――

 



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