第51話
「状況は?」
「わかりません、ドローンが銃声を感知しましたが中がどうなっているかは……」
ザラタン・セカンドでは会議場の騒動を察して慌ただしくなっていた。
「私がベオルクスで様子を見てくる」
「待ってください、許可なくドロイドで上陸してしまうと国際問題になってしまいます」
「歯痒い……」
その直後爆発音と大きな振動がザラタンを襲い、アラートが響き渡る。
「なに!?」
「攻撃です! 敵は、なんで? 海洋連所属のレクティス、オルフィクス、バーディアンからです、他国の船も攻撃を受けています」
「状況がわからない、会場組と連絡は?」
「それが、謎のジャミングが発信されていて連絡がとれません!」
わからない、こんな事したら海洋連は世界の敵になってしまう。目的が全く予測できないしメリットがあるとは思えない。
「出る! こうなった以上迎撃する」
「了解です、エミリアさんは無理しないでくださいね」
「わ、わかりました!」
「ミコッタ、ベオルクス出撃します!」
甲板への天井ゲートが開くと同時にミコはスラスターを吹かし勢いよく飛び出した。グレネードランチャー、照準補助を装備したアサルトライフル。エースハートを握り、背中に大型のバズーカを二丁背負い胸部と肩部、膝、脚部などに無数のマイクロミサイル、腕部にも右にストライクカタール左に六連装グレネードをそして腰部に予備マガジンを装備した制圧戦用重装備だ。
「とにかくザラタンに攻撃してきてる奴を黙らせる!」
ミコはアサルトを撃ち込みながら海岸でバズーカを構える海洋連所属である青系迷彩色のレクティスを踏みつける。メキメキと音を立てながら胸部が潰れていく。
「先に仕掛けたのはそっち……」
左腕でバズーカを構え、アサルトとの併用で隣のオルフィクス、レクティスと次々撃墜していく。
「ザラタン・セカンド、周囲にスパイダーネットを展開してください」
レミィは艦内で火器管制を受け持っていく。スパイダーネットは上空に無数に展開し接触した航空機をそのまま細切れにする。早い話が超頑丈なピアノ線のようなもので戦闘機や空戦ドロイドをその運動エネルギーを利用して切断する対空兵装である。練度が高いプレイヤーだと回避されやすいが元々戦闘機に乗っていたパイロットなどには抜群に効いていた。
「エミリアさんはトラップに気づいて制止したバーディアンを狙ってください。大丈夫、落ち着いて」
「わかりました!」
エミリアは甲板から上空でトラップを見て停止した機体を狙い撃ち落としていく。戦闘訓練で気づいたのだがエミリアは目がとてもよく距離感の認識能力がとても高い、スナイパーとして優秀なのだ。
「落ち着いて、確実に……」
レクティスも狙撃戦及びレミィの補助ができる情報処理ユニットを装備したカスタムとなっている。使う武装はSVDドラグノフのような連射式狙撃銃ギルドライグだ。
「いい感じ!」
陸をミコ、空をエミリアが確実に倒して敵を減らしていく。エミリアのデビュー戦ではあるがその腕はプレイヤーに匹敵するレベルだった。
「ザラタンの安全が確保されたら会議場に向かう、他のとこには悪いけど自分のとこは自力でどうにかしてもらう」
「はい!」
残弾の切れた左のバズーカを投げ捨て、アサルトのマガジンをリロードする。すでに周囲の敵はほぼほぼ沈黙していた。
「エミリア、市街地戦になるから装備を変えて」
「大丈夫、用意できてます」
エミリアはギルドライグを背部にマウントし、エースハートを握りミコの隣までやってきた。
「じゃあ私達は会場を目指すね」
「はい、私もあとから向かいます」
「一応バラット達の機体も出す準備しといて」
「お任せを!」
「出発!」
ミコとエミリアは会場を目指して機体を走らせた。
「散開!」
道中ミコはそう叫ぶとスラスターを吹かし急に建物を盾にするように横にそれる。エミリアも声に従うように反対側へと飛び退いた。その瞬間建物に隠れていた敵レクティスが正面に現れ発砲してきたのだ。
「統制は取れてないけど、数が多い……」
「それもあるのですがミコッタさん、なんかおかしいです!」
「えっ?」
エミリアは何かに気づいたようだった。
「こんなに騒いでいるのに、人の気配が全くないんです」
ミコはハッとした。盾にしているビルの中をカメラでスキャンすると人影が全くない、しかもそれだけじゃない道にも動く車どころか人一人居なかったのだ。
「どういうこと? 街に人が居ない?」
正面の機体を撃破して周囲をセンサーでスキャンしつつ確認するもやはり人の気配がなかったのだ。
「嫌な感じ、エミリア急ごう!」
「はい!」
二人は嫌な雰囲気を感じながらもバラット達の居る会場を目指して機体を走らせるのであった。
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