第46話

「今回は出動無いといいですね」

「どうでしょうね、アニメとかだともう何か起こるフラグでしかないですけどね」

 俺はアオイさんと話しながらドラクスの最終調整をしていた全国首脳会議が明日に迫り、もしもの時のために万全の準備を施しておくのだ。

「あはは……市街地戦が想定されますけど、対魔獣と対人兵器どっちの装備で用意しますか?」

「ん~対人戦は考えたくないんですけどね……」

「バラット」

 装備を考えていると下からミコの声が聞こえた。

「ん? ミコも調整?」

「うん、話し声聞こえたから。対人戦に関しては私達に任せて」

「どういうこと?」

「私達が対人戦を想定した装備を用意してるから任せてってこと。ベオルクスの火力なら最悪大型魔獣にもそのまま対応できるし、バラットは気にしなくて大丈夫」

 確かにベオルクスのスペックなら対応可能だろうしレミィやエミリア、影虎のメンバーもいるしフォローはどうとでもなるかもしれない。

「おっけ~、じゃあ任せるね!」

「うん!」

「バラットさんは要人警護がメインの仕事ですし、出撃は無いと思いますよ?」

 パイロットとしては乗りたいという気持ちが無いわけではないが、それは野暮だし物騒だ。平和が一番なのだ、そうなのだ。

「じゃあアオイさん、これで装備お願いしていいですか?」

 アオイさんのタブレットにデータを送る。装備の換装は整備班任せなのである。といっても例外で現地換装などを行う場合があるから自分じゃできないというわけではない。もちろんシステムアシストもある!

「んと、了解です! 準備しておきますね!」

「お願いします!」

「アオイ、終わったなら次こっちも付き合ってもらっていい?」

「大丈夫ですよ、ちょっと待ってね!」

 女の子というのは、いつの間にか仲良くなっているもんなんだなぁと二人のやり取りを見てると思う。

「じゃあ俺は行きますね」

「はい!」

 俺は機体から降りて格納庫をちょっと眺める。ドラクス、ガルーディア、ベオルクスといい機体が並んでいるのを見ると男の子はかっこいいと感じるに違いない。戦ってる姿が一番というのもわかるがこういう整備中の姿も味があってとてもいい物だ!

「はいちーず」

 Dギアのカメラを起動させ並び立つ三機を画角に収めたらシャッターを押す。影虎チームの機体も後で撮ろうかなと思いつつ格納庫を後にするのだった。

「チーズバーガーセット」

「あいよ」

 格納庫の次に食堂にやってきた。ゲーム時代はゼリー飲料や固形の栄養食品ばっかでほとんど食事らしい食事はしていなかったが、ここに来てからいろいろ食べている気がする。しかもちゃんと美味しい。

「レクティスも写真撮っておけばよかった……」

 チーズバーガーを頬張りながらDギアのファイルを眺めている、今思うと前に乗ってたレクティスの写真は全然撮ってなかったし余裕がなかったのかもしれない。てか一人で食堂で食事をするとかも抵抗があるくらいコミュ障だったのにずいぶんと慣れたものだった。

「美味しい……」

 チーズバーガーは肉がバンズから溢れるくらいデカいしチーズも滴るほどたっぷりで美味しいししかもポテトも山盛りついてすごくボリューミー。飲み物は勿論コーラである。

「ごちそうさまでした」

 食べ終わり、食器を棚に返して食堂を後にする。自分達にはゲームの感覚があるとは言え死が隣り合わせの環境であるのは事実であり、後悔の無いようにと食事など娯楽に関しても高品質で提供してくれているのだ。

「皆忙しそうだし部屋戻るかな」

 機体の準備も明日の手順も問題なし。結構暇な感じになってしまったが緊張して動けないより全然マシだろう。

「あっ」

 自分の、自分の部屋の扉を開けて中に入ろうとする。そこには綺麗な黄緑色のロングヘアーにすらっとした体型に白い肌しかし女性としてのふくらみはしっかりと強調されたしかし生命体には似つかわしくないアンテナの生えた機械の耳を持つ女性、クーナが青と黒の際どいセクシーな下着姿で立っていた。

「……」

 思わず無言のままドアを閉めて自分の部屋かどうかを確認する。自分の部屋で間違いない……改めて扉を開けて部屋に入る。

「おかえりなさいませ」

「クーナさん、その格好は何なんでしょうか? 早く服を着てくださいませんか?」

 クーナは正面を向き下着姿で何事もなかったかのように挨拶してきた。

「サービスです」

 しかも体を見せつけるようにポーズまでとってくる。確かに写真に撮りたいくらい綺麗だけど……

「嬉しくないですか?」

「……」

 なんでこの娘は二人っきりになるとこういうことばっかしてくるのか。

「待ってたの?」

「はい、新しい下着を頂いたので見せて差し上げようと」

「誰に?」

「レイカ様です」

 レイカさん何してくれてんの!!!

「確かにあの人ならいろいろ持ってそうな雰囲気はあるけど……」

「バラット様を楽しませるにはどうしたらいいか聞いたところ、笑ったり泣いたり様々な表情をしながらいろいろ未使用だからって頂きました」

 確信犯かあの人!!!

「どうですか? 似合ってますか?」

「っ……」

「心拍数の上昇を確認、興奮していると確認しました」

 それは反則だと思う!!

「明日は忙しいでしょうしどうぞ、今日はたくさん癒されてください」

 クーナはそう言いながら抱き着いてくる。アンドロイドとは思えないくらい柔らかく温かいそのぬくもりは男として耐えられないものがあるっ!

「お手伝いいたします」

「なにを!?」

「乙女にそんなこと言わせないでください」

「だからなにをっ!?」

 てかどこでそういうの覚えてくるのこの娘!?

「可愛がってくださいね、ご主人様っ」

 前より可愛く見せるの上手くなってるし押しが異様に強いっ何がしたいのか全く読めない、勘弁してくれ……

「まって、理性がっ」

「どうぞ、本能のままに来てください」

「ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁっ」

 全国首脳会議前日、俺はある意味超高難易度ミッションをクリアしなければいけなくなるであった。

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