第39話

 しばらくクーナを中心に女性陣は嬉しそうに話していた。

「とりあえず調整が終わったらべオルクスの試験運用も始めるから二人ともよろしくね!」

 話の途中にレイカさんが割って入る。

「わかった」

「了解しました」

 そうしてミコが頷き、ティアが敬礼しているとノールとエミリアがレイカさんの前へ歩み出た。

「レイカさん!」

「ん? どしたの?」

「私達にもドロイドの操作教えてもらえませんか?」

「それってみんなと一緒に戦いたいってこと?」

 レイカさんはドロイドに乗りたいという二人に対して冷静に答えた。

「はい、私は仲間と呼べる人達がここに居る皆さんしかいません、なのに戦いに行く皆さんをここで見送って待ってることしかできないのは嫌なんです」

 エミリアは前に魔法で助けてくれたこともあったし無理して戦う必要はない気がする。

「私は私達は姫様を助けていただき、住む場所まで提供していただいたのに何も恩返ししないというわけにはいきません。姫様からの命もあります、是非共に戦わせて欲しいのです」

 確かにノールの身体能力はめちゃくちゃ高いしパイロット以外に歩兵としても相当優秀なレベルだろう。そして話を聞いたレイカさんがこっちを向いてくる。

「こっち見ないでください」

 そっと目を反らすとレイカさんは少し考えてから口を開く。

「丁度いいかしらね、上層部の指示でザラタン・セカンドはあなた達専用の特殊部隊になる予定なのよ」

「でも俺達って傭兵で作戦の参加不参加も好きにしていいって」

「それでも専用で運用したいくらい強力なのよ。他にも各地で戦ってる元プレイヤーとかも居るんだけど少数でネームドを倒せるようなレベルじゃないのよね」

 そうは言うが、あの戦闘もそうとう無茶した結果であって少数でネームドなんて無理なのが当たり前だ。

「今後の新兵器次第ですね」

 レイカは笑顔で親指を立ててきた。ちょっと不安だ。

「とりあえず練習機のレクティスはあるから好きに使っていいわよ、操縦はバラット君達に教えてもらって!」

「丸投げですね」

「だって、皆に任せた方がいいでしょ? 南米軍の人達の評判良かったわよ?」

「コマンダーバラット」

「それやめて……」

 さきの南米で戦闘訓練を行った結果、向こうのパイロットからコマンダーと賞賛されてしまったのだった。

「とりあえず明日から好きなように使えるように機体用意しておくわね、今日はちょっとまってね」

「ありがとうございます!」

「感謝する!」

「私とティアは機体の調整があるからバラットとレミィに任せる」

「わかりました!」

「じゃあ今日はこれで解散だね」

 こうして俺達は解散した。ミコとティアは早速ベオルクスの調整に入るようでレミィはエミリアとノールに基本的な座学をするらしい。

「ゲンジさん、メディカルセンターまで送りますよ」

「感謝しますぞ」

 俺は車椅子を押してメディカルセンターへ向かった。

「バラット殿は特殊部隊の話どう思われますか?」

「ある程度自由を約束しつつ独断行動を制限したいってとこじゃないですか?」

 ザラタンという超大型の潜水空母を専属運用させてある程度自由に動けることを約束し、その上でそれ以上の独断による暴走を押さえたいここの考えなのだろう。

「特殊な機体の実験ができる優秀なパイロットが揃っていますからな」

「そうですね」

 早い話が俺達は最強のモルモット部隊と言うところなのだろう、組織としての最高戦力及び機体や装備の実験部隊。なんとも言えない立場だが正直ゲームばっかの毎日を過ごしていた俺達には大差ないし待遇的にも全然問題ないし軍人扱いでもない、むしろいい位だった。

「とりあえずゲンジさんは早く怪我直してください! 女性陣多くてただでさえ肩身が狭いんですから」

「はっはっは! いいじゃないですか、楽しんでくだされ」

 何をだよ!

「とにかくお大事に!」

 そんなことを話ているとメディカルセンターに到着し担当の看護婦さんが車椅子を引き継いでくれた。

「ゲンジ様、これを」

 メディカルセンターでゲンジさんと別れようとした時、ついてきていたクーナがゲンジへ何かのメモリーカードを渡した。

「これは?」

「レイカ様よりゲンジ様へお渡しするようにと言われておりました。いい暇つぶしになるだろうとのことです」

 そう言うとクーナはお辞儀してみせた。

「ほう、それではベッドで見させていただきましょう。では二人ともまたですぞ!」

「はい、また来ます」

 俺達はゲンジさんと別れてメディカルセンターを後にした。

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