第38話

「あ、バラット」

 レイカさんに連れられて第二格納庫にやってくるとすでにミコとレミィ、車椅子のゲンジさんそしてティアさんにノールやエミリアまでも揃っていた。

「皆お揃いだな。ゲンジさんはお体大丈夫ですか?」

「なに、まだ骨が繋がってないのですが筋肉ギブスでほぼほぼ問題なしですぞ」

 エキドナとの激戦でゲンジさんはアバラ数本に右足と両腕骨折といろいろ重傷だったのだが思いのほか元気でいる。

「これで皆揃ったわね、こっちよ!」

 レイカさんが格納庫を歩いて行き、俺達はそれについて行った。

「まず見せたいものその一!」

 レイカさんは大きな扉の前で止まり振り向いた。この扉は見覚えがある、第三格納庫でガルーディアが格納されていた物と一緒だ。つまり何か機体があるということだろう。

「私達の戦力アップよ!」

 そう言うと指をパチンと弾く。すると扉がゆっくりと開き一つの機体が姿を現した。

「こいつは、べオルクス?」

「正解! つい先日ロールアウトしたばっかの最新鋭よ!」

 レイカさんの眼鏡がキランと光りすごいドヤ顔をしている。

「あれ? 二機あるんですか?」

 よくよく見ると正面のべオルクスの後ろに黒を主体にしたカラーリングのべオルクスがもう一機格納されていたのが見えた。

「正解、この二機はバラット君のドラクス同様の特別仕様でキャストシリンダーが装備されて性能が高く設計されているのよ」

 べオルクス、レクティスをベースに中長距離戦を主軸に再設計された後継機の一種で人狼に見えるシルエットが特徴の高性能機であり。ドラクスと対になる機体で安定性、防御力、精密性で上回る分機動性、運動性は劣っている。

「一号機をミコちゃん専用、二号機を影虎の隊長機ティアさん専用として用意してるわ」

 正直ティアさんの戦闘スタイル的にドラクスの方がいい気はするがべオルクスもレクティスより全体的に性能は上だし装備で補えば問題は無いだろう。

「ちなみにキャストシリンダーなんだけどドラクスのデータを元に数を減らして安定性を上げてるわ、デタラメなパワーは出ないけどバーストモードも用意されてるし扱いやすくはなってるはずよ」

「私の、新愛機……」

「私もいよいよ本格的にドロイドパイロットですね」

 ミコもティアさんも専用機と聞いてどことなく嬉しそうに見えた。

「レミィちゃんとゲンジさんの機体も製造中だから少し時間をちょうだいね」

「それは楽しみにしておきますぞ!」

「わ、私は後方支援がメインなんでそんなにスペック無くても大丈夫です……」

「レミィは俺らの生命線だしそんな遠慮しなくて大丈夫ですよ。あとゲンジさんは怪我をさっさと治してください」

 はははとゲンジさんは大笑いしていた。

「機体の説明だけですか? それならなぜ私達も呼ばれたのでしょうか?」

 確かに新鋭機の紹介ならノールやエミリアを連れてくる必要はなかったはずだ。あと、いつの間にかこっちの言葉がすごく上手くなっていた。

「じゃあ機体の調整とかは後で各個でやってもらうとして次の紹介ね、こっちがメインよついてきて!」

 そう言うと一層メカメカしい機材の並ぶ扉へと移動していった。

「なにこれ?」

「私達の技術と科学と魔術と錬金術のすべてをつぎ込んだ最高傑作よ!!」

 そう言うと再びレイカさんは指をパチンと鳴らし、ゆっくりそのメカメカしい扉が開いた。

「カプセル?」

 そこにはいろいろな機械を繋がれたカプセルが設置されていた。自分達が入るメディカルカプセルに似ているような気がする。

「ふっふっふ、皆絶対驚くわよ~」

 自信満々のレイカさんがカプセルに近づき装置をいじり蓋を開ける。そこからは煙が漏れ出し、なんだか人影のようなものが見える。

「女の子ですか?」

 レミィが呟く、カプセルの中からは黄緑色の綺麗なロングヘアの女の子が入っていて目を開くとゆっくりと歩み出て来た。そして俺は彼女を知っている。

「クーナ?」

「はい、バラット様。おはようございます」

 耳はヘッドホンにアンテナの生えた機械のエルフ耳のようになっているがその姿は前にメディカルチェックを受けた際に話したクーナの姿そのものだった。

「クーナちゃんが現実世界で行動するための体を欲しがってたから彼女からこういう見た目がいいってリクエストを貰いながら作っちゃいました」

 黄緑のロングヘアに綺麗な赤い瞳、白い透き通るような肌のカワイイ女の子にしか見えない。ここの技術半端ない……

「あらためましてクーナです、これからもよろしくお願いいたします。」

 そう言うとクーナはお辞儀し、ニコッと微笑んで見せた。

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