第34話

「そういえばレイカさんはなんで来てたんですか?」

「なんでって、つれないわねぇ……」

 エキドナの討伐が完了し後方部隊のウォンバットやフライキャリアーが到着、撤収作業が始まり俺も機能停止しているドラクスから降りて作業の指揮をしていたレイカさんの元へと歩いて行った。

「ネームドのエキドナが出てきちゃったんだもん、こっちも全力で行かなきゃ勝てなかったでしょ? ドラクスだって未完成状態で持ってきてたの無理矢理稼働段階までもっていったのよ?」

 確かにドラクスが無かったらヤバかったのは事実だしそういう無茶ができるのはレイカさんの権限ありきなのだろう。

「ガルーディアの支援といいナイスタイミングでしたよ」

「いざという時のために試作品や未完成品いろいろ持ってきておいて正解だったわね」

「ところで、エキドナの死体回収するんですか?」

 気になっていた、正面ではエキドナが重機ユニットを装備したウォンバットとレクティスにより解体作業が行われていたのだ。

「こんな貴重素材回収しなきゃもったいないわよ! 装備や武器、装甲にだって使えるわよ!」

「エキドナの回収が優先ですか?」

「まずは負傷者の回収、そのあと皆の機体を回収する予定よ」

 レイカさんが指差す方向を向くとそこには担架に乗せられて運ばれていくゲンジさんが見えた。

「重傷だけど命には別条ないって、筋肉がクッションになってくれたみたいね」

 流石筋肉のゲンジさん、あの逞しい体は伊達ではなかった。

「怪我したのはゲンジさんだけだった」

 ミコも機体から降りて歩いてきた。

「レクティス三機にガルーディア一機が大破でドラクスは行動不能だからね、怪我人がゲンジさんだけだったのは不幸中の幸いかな」

「皆さん、大丈夫ですか?」

 話しているとウォンバット二台を連れて後方に居たレミィがやってきた。

「レミィ、大丈夫。みんな生きてる」

「よかったです。すみません、私だけなにもできなくて……」

「そんなことないですよ」

「そうよ? むしろレミィちゃんにはここからがメインのお仕事なんだから!」

「え?」

 レイカさんの言葉にレミィは疑問符を浮かべていた。

「今回の戦闘データ最初から最後まで取ってるでしょ? それを全部まとめて私のメインサーバーに送ってほしいの!」

 バジリスクの殲滅、ダイヤモンドヘッドの討伐、エキドナ戦。ついでに最新鋭機のドラクス、ガルーディアの戦闘データ諸々、とんでもない量になっていそうな気がする……

「結構な量ですから時間かかりますよ?」

「ジャンル分けだけしてくれればいいからお願いね!」

「わ、わかりました……」

 頑張れ、レミィ……

「周囲を見てきましたが残っているバジリスクはいないようです」

 話していると黒いナイトスレイヤー二機が作業中の現場へと戻ってきた。ティアさん達の機体はほぼ無傷だったためエキドナ討伐後全機の確認完了後周囲の索敵に出ていてくれたのだ。

「ありがと~ティアちゃん達もバラット君達と撤収しちゃってね」

「了解しました」

「なるべく早く終わらせちゃうわよ、南米軍にいろいろ盗まれるのは癪にさわるしね!」

「協力関係じゃないんですか?」

「いろいろあるの! 特にガルーディアやドラクスはまだあんま見せたくないしさっさと回収しちゃうわよ!」

 なんとなく察するが協力関係といっても共有したくない情報などいろいろ複雑なのだろう。外交ってホントめんどくさそうだ。

「エキドナ、ゲームの時より強かった」

 ミコが解体中のエキドナを見ながら呟いた。

「ゲームの時はレイドバトルとして対大型魔獣戦装備の機体がすくなくとも十機以上集まってたからね」

 今回はバジリスクの群れを想定して準備をしていたのでエキドナのような大型魔獣は想定外だった。実際種族的に一緒に現れてもおかしくはない、しかしゲームの感覚が強いせいか全く考えていなかったのだ。

「とりあえずお迎えきたみたいですし戻りましょうか」

 ティアさんの声に気づいて上を見上げると迎えのフライキャリアーが降下してきていた。

「ドラクスとガルーディア優先でお願い、大破してる機体も全部回収するわよ!」

 レイカさんがそう指示を飛ばしていた、どうやら俺が最初に乗っていたレクティスも回収してくれるようだ。

「あ、接続手伝います」

 俺は回収のための準備を手伝うためにドラクスの元へと戻って行ったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る