第33話

「バラット!! その機体は?」

「話は後後、とにかくエキドナを倒すよ」

「うん!」

 エキドナも尻尾を斬られて俺を危険視したのか睨みつけてくるようだ。

「額の眼に気を付けて、腐蝕の効果がある視線で攻撃してくる」

 どうやら、めんどくさい能力を持っているようだ。皆が苦戦するわけだ。

「腐蝕の魔眼は私がどうにかする、だから注意を惹き付けて!」

「おっけー、信じるよ!」

 刀を構え、エキドナに向かって踏み込む。すると奴は咆哮を上げて残っている右前足を振りかざし叩きつけてくる。

「さっきまでとは違うからな、オオトカゲ!」

 前足を振り下ろす瞬間、すれ違いざまに指を二本斬り落としそのまますり抜ける。エキドナは指を斬られたことを気にも留めずにグリンと振り向き腐蝕ブレスで追撃してくる。

「当たるかよ!」

 それをスラスターを吹かし高速移動で躱していく。

「ねぇ、私の機体を支えて」

 ミコは近くに居たナイトスレイヤーに機体を支えてもらいながら起き上がる。右腕を持ち上げて狙いを定めていく……チャンスは一度、目が開いた瞬間。最悪バラットがやられてしまう、それだけは絶対に阻止しなければ。

「いくぞ!」

 俺は高く飛び上がりエキドナの鼻さきに刀を突き立てそのまま下顎を一緒に貫き地面に磔た。ドラクスのシリンダーが高速回転してフル稼働しているのがわかる、エキドナのあの巨体を押さえ付けれているのだ想像以上のパワーだった。体をくねらせ束縛を脱しよう暴れるエキドナ、それを無理やり押さえつけていると額の瞼がピクっと動いた気がする。例の視線が来るのだろうか。

「ミコ、任せたよ!!」

「任せて」

 エキドナの額の瞳が開く一瞬に合わせて銃の引き金を引いた。反動に耐え切れなかったのか肘関節が砕け銃ごと吹き飛んでしまった。

「弾は!?」

 エキドナの悲鳴のような咆哮が響き渡った。弾丸は額の瞳を見事に撃ち抜いていた、その激痛に刀で突きさされていた鼻先を引き千切りながらのたうち回り暴れだした。

「流石ミコ、いい腕してる!」

 苦しむエキドナを見据えて地面に突き刺さっている刀を引き抜く。すると機体からアラートが響いてくる。

「なんだ!?」

「機体に装備されているキャストシリンダーがマナを取り込み、エーテルエネルギーとして機体内を高圧循環しています。このままですとオーバーロードで動けなくなります」

「クーナ!? いったいどうすれば……」

「放出してください、辰薙二式には吸収と放出が付与されていますので媒介にすればオーバーしているエネルギーを強力な一撃として放出可能と想定します」

 確かにシリンダーの回転音が異常なのは素人でもわかる、やるしかないか……。

「補助します」

「頼む!」

 暴れるエキドナの正面に立ち、刀を構えなおす。

「全身循環中のエーテルを腕部へ集中させます」

 機体の節々からオーラのような煙のようなものが漏れ出しているようだった。そろそろケリをつけなきゃこっちの被害もシャレにならないだろう。

「エーテル循環のシステムが無いようですので緊急処置ですがワタシが機体の循環を行います」

「頼むよ!」

「了解」

 刀を上段で構える。すると刀身から膨大なエーテルというべきだろう光が噴き出し次第に大きくなっていく。膨大なマナの塊にエキドナも気付きこっちを向き一目散に突撃してくる、これがヤバイと本能的にわかるらしい。

「次で決めようか……」

「了解しました、出力を全開放いたします」

 体はビリビリと大量のエーテルを感じている。刀から放出された魔力の塊をエキドナの体を超えるほどに大きく膨れ上がっていく。

「臨界です!」

「必殺、エーテリオンザンバーァ!!!」

 強大な光の刃をエキドナ目掛けて一気に振り下ろす。エーテリオンザンバーなんてちょっと子供っぽいかもしれないけどついつい叫びたくなった。そんな雰囲気だし勢いだったと思う。振り下ろした光の刃はエキドナの中心を捕え縦一線にその巨体を斬り裂いていくのだった。

「機体温度急増、強制排熱開始します」

 機体の装甲が数か所開き音を立てながら煙が噴き出した、オーバーヒート状態なのか機体が動く気配が無くなってしまった。

「エキドナは?」

 正面を見ると、真っ二つに切断されたエキドナの亡骸が血の海を作りながら地に伏していた。

「終わったぁ……」

 どっと疲れた、座席にもたれ掛かって一息つこうとする。その時ビシャーンと何かが弾けるような音が響く。

「なんだ!?」

「辰薙の刀身が砕けました、耐久値の限界を超えるエネルギーを受けた影響だと思われます」

 クーナの言葉を聞きながら振り抜いたままになっている刀を見る。それの刀身は砕け、本来の半分程度の長さになっていた。

「まただ……」

 整備班の暗い顔が思い浮かぶ……

「あ、ゲンジさんは無事?」

 ふとゲンジさんが吹き飛ばされていたことを思い出した。

「大丈夫です、怪我をしていますが命に別状はないかと」

 すでにティアさんがゲンジさんの機体の方に行ってくれていたようで確認してくれていた。

「皆さん今ウォンバットとフライキャリアーがそちらに向かっていますので到着したら撤収の準備を、後始末は別の部隊が対応してくれるそうです」

 レミィからの通信が入る、すでにフライキャリアーが何機か上空から降りてきているのが確認できた。

「バラット様、お疲れさまでした」

「クーナいつの間にかサポート入ってくれてたけどそっちは大丈夫だったの?」

 正直ぶっつけ本番起動のドラクスを操縦するにあたってクーナのAIサポートがあったのは助かったが、到着した時にガルーディアは半壊していたしいろいろ障害が発生していてもおかしくない状況だった。

「はい、オート操縦のような状態でしたのでガルーディアが戦闘不能になった時点で切断しバラット様のアシストに回りました」

 なんというか、すごくクーナは優秀なんだなと思った。

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