第32話

「ここだよな……」

 丁度エキドナと戦っている前線とレミィの居る後方の中間地点だろうか、指定エリアまでやってきた。

「バラット君聞こえる?」

「レイカさん?」

「大丈夫そうね! 今から貴方の機体を投下するから受け取って!!」

「え? でもレクティスはさっき大破してますよ?」

「正直試運転もしてない状態だからちゃんと動くかすらわからないけど、今はこれしかないの受け取って!」

 そう言うと上空から何かが降ってくるのが見えた。

「うおk!?」

 それは俺の正面に着地すると片膝をつき、コックピットハッチを開き搭乗を待っている。濃紺の体、二本の角を思わせるブレードアンテナ顔はどことなく魔獣を思わせるいかつさをかもしだしている。体もレクティスと比べてスマートに見え、バックパックには太い尻尾のようなユニットが接続され刀のような武装をマウントしていた。

「こいつは……」

「レクティスだけじゃ戦力不足になると思ってたからね、よりハイスペックの機体を作ってたのよ」

 少し構成が違う気がするがこいつを俺は知っている。ゲームでも大分長い間使っていた機体である。

「ドラクス」

 ドラクス、レクティスをベースに近接戦よりの高性能に再設計された機体でありその機動性、運動性はドロイドトップクラスである。

「あなたの新しい剣よ!」

 俺はドラクスに乗り込みDギアを接続した。システムが起動し順次たちあがっていく……

「OSはバラット君が前回レクティスのMAXモードで戦った時のモノをベースに作ったんだけど、急ごしらえだから少し扱いにくいかもしれないけど我慢してね!」

「すごい、パワーがレクティスの数倍ある。武装は……辰薙? 直ったんですか?」

「それは辰薙二式、打ち直して魔術の無効化だった術式をエーテルの吸収増幅放出へと組み替えたの。硬度も上がってるわよ!」

「普通のドラクスじゃないですよねこれ?」

 スペックを確認していると明らかにゲーム時代には無かった機能やシステムが複数追加されていた。

「錬金術やエーテル工学、魔術を織り込んで強化したワンオフ仕様よ!! 命名するならドラクスエーテリオンって感じかしらね」

 専用機という感じだろうか、なんだかロマンを感じる。

「システム最適化開始……」

 直ぐに動けないのが歯痒い、戦況が見えないから皆を信じるしかない。

「機能をいろいろ積み込んだ影響で機体に熱が溜まりやすいの、背部のテールバインダーはスラスターの他に対策として大型の冷却フィンも搭載していて破壊されるとすぐにオーバーヒートしちゃうから気を付けてね」

 元々新技術を詰め込んだテスト機だったのだろう、ハイスペックの代わりに弱点もできてしまっているようだった。

「大丈夫です、どうにかします」

 最適化が完了し、機体を立ち上がらせる。冷却フィンから煙が噴き出て問題なく冷却されているのがわかる。

「システムチェック、操縦感度調整開始」

 機体の反応を見ながら自分の操縦しやすいように設定を変更していく。腕を動かい修正、一歩踏み出し修正、バランス感覚、修正、修正、修正……コンプリート。

「ドラクス、行きます!!」

 ゆっくりと一歩また一歩、次第に加速して走り出す。スラスターを使わずにこの機動力、レクティスと全然違う。

「ぶっつけ本番、上等!!」

 地響きが、エキドナの咆哮が聞こえてくる、皆の方も危険なようだ。新機能を早速試すことになりそうだが迷ってる余裕すらなさそうだ、辰薙を抜刀し腕部に内蔵されているキャストシリンダーが高速回転して周囲からマナを集めエネルギーとして刀に集めて行く。

「体がビリビリする……機体がマナを集めてるから?」

 エキドナの動きが見えた。ゲンジさんの機体が吹き飛ばされた!? 更に尻尾を振り回している……まにあうか!?

「まにあえぇ!!」

 スラスターを全開に吹かし振り下ろされそうな尻尾の付け根目掛けてマナを貯め込んだ辰薙を振り抜いた。さっきまで傷さえつけれなかった尻尾が包丁で肉を斬るようにあっけなく切断された、威力が段違いに強化されている。

「すっげ……」

 エキドナの正面にポジションを取り、周りを見渡す。ティアさん達のナイトスレイヤー二機は無事、ガルーディアは右半身がボロボロになりミコの機体は左腕と左足を失いゲンジさんは吹っ飛ばされて安否がわからない……だいぶ痛めつけられたようだった。

「ごめんまたせた。皆、無事?」

 俺とドラクスは刀を振り払い、エキドナを睨みつける。

「ここからは俺が相手だ!!」

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