第31話
瓦礫を飛び越えながら指定された場所へと走る、ふと上空を見るとガルーディアが戦場へ向かって飛んで行くのが見えた。支援のために誰かが、いや現状あれを使えるのは自分かクーナだけだ。つまりクーナのAI操縦で支援に向かったということなのだろう。
「誰もやられないでくれっ」
上空から指定地点に向かうバラット様が見えた。彼が戻って来るまでにエキドナを討伐、最低でも消耗させるのが目的だ。
「ミコッタ様!」
「クーナ? どうしてここに」
エキドナをどうにか抑え込もうと戦闘中のエリアへ到着した。
「試作品ですが新兵器をお持ちしました、至急で用意したのでどんな欠陥があるかわかりませんが火力間違いなく向上します」
「わかった、ちょうだい。使いこなして見せる」
ガルーディアはミコッタ機の隣に着陸しドロイド用手持ちコンテナを展開、中からまずマガジンを取り出す。
「アルケミックバレットです。貫通、硬度強化の術式が刻まれた特殊弾でデューナスの口径に合わせて作られております」
貫通力と硬度が上がっているなら確かにあの硬い鱗を貫ける可能性はある。ミコは現在装着していたマガジンを外しコッキングレバーを引き、残弾をゼロにしたら新たに渡されたアルケミックバレットのマガジンを装填して再びコッキングレバーを引いてリロードした。
「続きましてこちらをデューナスに装備します」
取り出された物はリング状の物体で、それをデューナスのバレルに通した。するとバレルを中心にふよふよと浮かびながら緑色の光を帯びてゆっくりと回転し始めたのだ。
「これはキャストリングといいまして、銃自体に弾丸加速の術式を付与しています」
更にもう一つ三本の爪のあるリング状の物体を取り出し、それを銃口に近づけると爪が銃口に取り付きリングの中央に緑色の光の幕が構築された。
「こちらはキャストサークルです。射程、精度強化の術式が付与されています。追加武装は以上となります、急ごしらえのため弾丸は五発のみサークルとリングもどう作用するか全く予想できない状態です」
「構わない、現状役立たずも同然だった。打開できるなら使いこなして見せる」
ミコは早速スコープを覗き狙いを定めていく。急ごしらえというだけありスコープの下部にチラチラとリングが映ってくるが的が大きいのだ支障はない。
「バラットに出番はあげない」
重音が響き弾丸が発射された。次の瞬間エキドナの頭部から破裂したように血しぶきが上がった。
「脳じゃない……」
急な痛みにうめき声を上げながらエキドナは悶えている、しかし頭蓋骨の一部を砕いただけで脳には当たらなかったようだ。
「ワタシも戦闘に参加します」
クーナのガルーディアも再び飛び上がりウィングに搭載していたミサイルを撃ち込んでいく。
「我々はミコッタ殿の狙撃を援護しますぞ」
「エキドナは我々が食い止めます!!」
ゲンジはエキドナの腹部に両腕のパイルバンカーを撃ち込み、その場で動きを止めようとスラスターを吹かして抑え込もうとして、ティア達のナイトスレイヤーが追加装備のワイヤーアンカーで前足を捕らえ動きを制限していく。
「スパイダーネット射出、口部を押さえます」
クーナは空中からエキドナの頭部に近づき蜘蛛の巣状に展開するワイヤーネットを発射、口を開けないようにする。
「次こそ」
ミコは再び狙いを定めてトリガーを引く、弾丸はエキドナの首に命中し再び血しぶきを上げた。
「暴れる」
エキドナもタダではやられない。押さえつけようとしてもその巨体で暴れられては無理というものだ。抑えられていない前足で口を塞いでいたネットを剥ぎ取り痛みと怒りに満ちた咆哮を上げた。
「ブレスが来ますぞっ」
全機がエキドナとの距離を取った次の瞬間、腐蝕ブレスが周囲を包んだ。瓦礫はバラバラと崩れ落ち抑えようとしていたワイヤーは朽ちて消え失せる。
「奴も相当怒ってますな」
エキドナは体を振り回し、体を持ち上げるながら周囲を見渡すと額の瞼が開き三つ目の眼孔が姿を見せる。その瞳にはミコッタ機が映った。
「っ!?」
ミコは目が合った瞬間、反射的にトリガーを引きそのまま飛び退いた。弾丸はエキドナは左前足が吹き飛び痛みに咆哮を上げながら倒れ込んだ。
「やられたっ」
視線を受けたライフルのバレルが錆びつき崩れ落ちてしまったのだ。しかも右足や右腕もところどころ腐蝕し劣化していた。
「腐蝕の視線……」
「あれは厄介ですぞ、視線を見て避けるしかないし範囲をわからない」
「範囲はそこまで広くないようです。フィルターも機能しています、一点を中心に広がっているようで中心さえ避けれれば軽減可能です」
「ですがフィルターを貫通するということは我々も即死の可能性があります」
「ミコッタ様、戦闘継続は可能ですか?」
「大丈夫、まだ動ける」
「コンテナ内に大口径ハンドカノン、トールサンダーがございます。ご使用ください」
「了解、助かる」
ミコは破損したスナイパーからマガジンを引き抜き、コンテナに向かいトールサンダー二丁を取り出し残っているアルケミックバレットを装填していく。トールサンダーは単発式のハンドカノンであり一発ごとにリロードが必要となってしまう、残弾二発に銃二丁だったのは手間が省けるだろう。
「ミコッタ殿! お気を付けを!!」
ゲンジの声にミコは周囲を見渡す。さっきまで土煙を巻き上げ倒れていたエキドナの巨体が無くなっているのだ。
「迷彩!? レミィ!!」
「ミコちゃん、後ろ!」
ミコが振り向くと迷彩で隠れていたあの巨体が現れ額の視線が完全にミコッタ機を捕えた。
「させません!!」
視線がミコッタを捕らえようとした瞬間クーナのガルーディアが飛び込みレクティスを抱えて飛び上がった。
「させません!」
ティアが額の瞳目掛けてドロイド用苦無ストライクダートを三本投げつけ牽制をかける。向こうもダメージを嫌がり瞳を閉じて外皮で防いでいた。
「クーナ!」
ゲンジ機達前衛が居た場所にガルーディアはミコッタ機を抱えたまま墜落した。
「すみません、継戦不能です……」
ガルーディアは右半身を腐蝕させとてもじゃないがもう戦える状態ではなかった。
「私も、左腕をやられた……」
クーナが飛び込んでくれたおかげで助かった。しかし完全には避け切れず左腕とトールサンダー一丁を持っていかれてしまった。
「ガルーディアを退避させてください」
ティアが部下のナイトスレイヤーに指示を飛ばし、二機の元へとやってくると抱えて離脱しようとする。
「ミコッタ殿は平気ですか?」
ゲンジに聞かれミコは機体を起こそうとする。立ち上がれはしたがガクンと左足関節崩れ倒れかけた。
「足も……」
「掴まってください」
「ありがと」
エキドナは健在、しかしこっちは残弾も少なく二機が良くても中破。確実にダメージは与えているがまだまだ倒れる気配がない。
「危ない!」
ティアの叫ぶ声が聞こえた。四機がまとまっていた場所にいつの間にか近づいたエキドナのテールスイングが迫っていく。
「ぬぉぉぉぉぉ!!」
ゲンジはMAXモードを起動させ、そのテールスイングを咄嗟に殴りつけて弾き返した。しかしその衝撃は相当なモノだったらしくゲンジ機の両腕はバラバラに砕け、機体自体もだいぶ吹き飛ばされてしまった。
「ゲンジさん!?」
「二発目来ます!!」
エキドナは怯まず、再び尻尾を振り回しミコ達を叩き潰そうとする。ガルーディアもミコッタ機もすぐに動けるような状況じゃない、やられるっ!
「えっ!?」
その瞬間だった、エキドナのうめき声のような叫びと共に振りかざされていた尻尾が斬り飛ばされ、濃紺の機体が正面に現れたのだった。
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