第17話

「なんか、空気が重い空間が……」

 翌日目が覚め、食堂に行くとものすごく空気の重い空間が一か所あった。

「バラットおはよ」

「ミコ」

 すでに座って食事をしていたミコの前に座って自分も食べ始めた。

「なんか空気が重い空間があるけどなんか知ってる?」

「わかんない、ここ来た時からずっと重苦しい雰囲気流してる」

「あれは整備チームですよ」

 声の方を向くとティアさんもやってきた。

「ティアさん、昨晩はお疲れさまでした」

「お疲れさまでした」

 ティアさんは俺の隣に座ってきた。少しミコが不満そうにしているが気のせいだろう。

「彼らは武器の調整などを行ってるチームで、辰薙を製作したとこですよ」

「あっ……」

 察した、あの空気は俺のせいだった。彼らの最高傑作だったであろう辰薙を戦闘でへし折ってしまったのだから、一応回収はしたが刃は欠けてガタガタ刀身は真っ二つ。申し訳ない気がした……

「仕方ないですよ、被害を最小限に抑えられた生贄になったんです」

 そう言うとティアさんは笑ってみせた。ゼロとはいかなかった、しかし今回の作戦で死傷者は少なかったとのことだ。

「皆さんのおかげで仲間達を無事に救助できたんです、ありがとうございます」

「よかったです」

「あ、レイカさんが呼んでましたので後で行ってくださいね、回収した例の右腕のとこに居ると思います」

「わかりました、ありがとうございます」

「それでは私はお先に」

 ニコッと微笑むとティアさんは去っていった。俺達も食事を終えて格納庫へと向かった。

「アオイさん!」

「バラットさん、ミコッタさん体調は大丈夫ですか?」

「はい、疲れはしましたが無傷でしたので」

「そうですか、よかったです!」

 格納庫で俺達の機体を見ていたアオイさんと出会い軽く挨拶を交わし大破した自分の機体を眺めた。

「MAXモード使ったんですってね」

「あ、はい……すみません」

 ドキッとした、あれは機体にとんでもないダメージを与える、つまり整備班泣かせの機能でもあるということだ。

「使わないと戦えない相手だったと聞いています、それでもこんな状況になるなんて見て驚きました」

 武装は全壊、機体も関節を中心にボロボロの状態らしい。

「直せますか?」

「一応修理の方向で考えていますが、機体の動力炉、コアユニットが不安定になってましてちゃんと動くレベルまで修復できるかわからない状況です」

「そうですか……」

 どうも俺は愛着がわきやすいらしく、共に激戦を乗り越えたこいつを大事にしてあげたいと感じているのだ。

「ほかの機体もダメージがありますがやっぱりバラットさんの機体が一番直しがいがありますね」

 アオイさんのいい笑顔がちょっと怖いです。

「とりあえず、お願いします……」

「お任せを!」

 アオイさんはそう言うと敬礼してみせてくれた。

「そう言えばレイカさんって見ました?」

「あ、奥の第二格納庫で例の腕の調査してますよ」

「ありがと、アオイさんあとはお願いしますね!」

「はい!」

 俺達は教えてもらった第二格納庫へと向かった。

「レイカさん」

「お、来たわね!」

「どうですか?」

「どうって言われても見ての通り、ぐしゃぐしゃに壊されちゃって解析が全然進まないわ」

 手を上げてお手上げという動作をみせてきた。

「あ、でも攻撃の要であろう球体は一つ無事なのがあったからそれを解析してるわ」

「何かわかりそうですか?」

「簡単に言うとマナを吸収して魔術を起動させるという機関があってそれを操作することでいろいろな魔法が使えるみたいだけど、設定が必要みたい」

「でも機械でマナ吸収なんて簡単にできるの?」

「機関に血を使うのよ、血を媒介にして魔法を使用できる分のエネルギーを確保しているみたいなのよ」

「それであの施設と?」

「そう、現行の地球人より異世界人特にエルフなどの妖精種は親和性が強い。その血は機能の性能向上に役に立つってわけ」

 つまりマナと親和性の深い異世界人の血を機構として取り組む、それに必要な大量の血を採取するための施設だったということなのだ。

「ところでレイカさん、これからはどうすか決まってるんですか?」

「とりあえず、入手したデータに民間人も居るから一度本部のある島に戻ってからって感じかしらね」

「ザラタンは一度戻るということ?」

「ええ、レクティスの受け渡しも完了したし、任務は全部完了! あとは帰るだけよ」

「じゃあゆっくりしててもいい感じですかね?」

「とりあえず基地についたらいろいろやってもらうけどね」

 すっごく嫌な予感がする、こういう時のいろいろはろくなことにならないのがお約束だ。

「あ、そうそうゲームに居なかった機体がいたんでしょ? 戦ってみてどうだった?」

「正直強かったですよ、重力を恐らく今後あの魔法に対抗できる手段を用意しないと一方的にやられてしまうと思います」

「やっぱ、レクティスだけじゃ荷が重そうね……ありがとう、上層部と掛け合ってみるわね」

 なにを? とは思ったがいい事だろうし頑張ってもらうことにした。

「私達に何か用事だったんじゃないの?」

 ミコの言葉にはっと思い出す。ここには雑談しに来たのではなかったのだった。

「たぶんなんだけどこのまま皆には私達の部隊として今後も一緒に行動してもらうことになりそうなのよ」

「軍属はいやですよ?」

 あんなの性に合わな過ぎる、やってられん。

「もちろん組み込むつもりは無いは、むしろ軍と切り離された特殊戦闘部隊って感じ」

「やることや編成ってもう決まっちゃってたり?」

「具体的にはまだだけどバラット君達を主軸に戦う汎用部隊になると思うわ、あと実験的な側面もあるから新装備や新型機のテストも担当してもらうことになるからよろしくね」

 もうほぼほぼ決まってるじゃん……

「わかりましたよ、今日はのんびりしててもいいんですよね?」

「もちろん、功労者はゆっくりお休みくださいな!」

 こうして俺達はレイカさんの元を去っていったのだった。

「もう一回寝よう……」

 部屋に戻った俺は再びベッドへ倒れ込みそのまま睡眠を取ることにした。この寝ている間に世界がとんでもないことになるなんて考えもせずに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る