第14話

「レミィ、俺の機体を!」

「了解、今ミコちゃんが抑えていますが状況が良くありません。急いでください!」

 通信を聞きながらティアを見ると頷いて見せた。

「そっちはお願いします!」

 外に出ると狙撃のために隠れていたミコがアサルトライフルに持ち替えて前線に上がっていた。つまり一般兵では対応できない強敵が現れたということだろう。

「ティア達は撤収を急いでください!」

「はい!」

 研究所の出口でティアと別れるとそこにレミィが遠隔操作していた俺の機体がやってきた。差し出された手に飛び乗りそのまま運んでもらいコックピットへと飛び込んだ。

「遠隔モード解除」

「了解」

 機体のコントロールを受け取り状況を確認する。どうやら味方機が損傷しミコが出張っているらしい。

「ミコ、状況説明できる?」

「味方の一機が大破、もう一機が右腕持ってかれてるから後退させながら時間稼いでた」

「了解、俺もやる!」

「気を付けて、この前戦ったレイカーだと思うけど。右腕が見たことない装備」

 ミコの戦っている敵を確認する。それはエミリアを助ける時に戦ったブラックレイカーで間違いない、しかし装備が陸戦用の物へと変更されているようだ。そして何より右腕だ、赤いラインが入り禍々しい点滅発光を繰り返し手首の辺りに玉のような装置が三つ装備されていた。

「あんな装備見たことないな……」

 俺はミコと敵の間に飛び込み腰のアサルトライフルを抜きながら撃ち放つ。敵は攻撃を回避しながら右腕をこちらに向けてくる、すると手首についている玉が分離し手首の周りを高速で回転しだした。

「危ない、避けて!」

 ミコの声が聞こえ急いで回避行動に移った。敵の右腕から光が走る、握っていたアサルトライフルのバレルを光が吹き飛ばしたのだ。

「これは、光学兵器? ビーム?」

「わからないけど、ゲームには無かった兵器」

 破損したライフルを投げ捨てストライクカタールを展開させる。それに合わせてミコが援護射撃開始する。

「レミィ、見えてる?」

「はい、ドローンで状況は確認しています」

「敵の右腕の動きを観測してその延長線を計測してデータを送って! ビームなら手の向いてる方向に真っ直ぐ飛んで来るはずだから」

「了解、敵の右腕の動きを測定し二人にデータを送り続けます」

 これで回避は問題ないはず。一発当たったら致命傷でも、当たらなければどうということはない! というやつだ。

「敵機の残りはその一機のみ、ウォンバットの離脱も順調です」

 レミィの声を聞きつつ敵の懐に飛び込みカタールを突き立てる。しかしカタールの刀身が機体に届く前に破壊されていた、レイカーの右腕から光の剣が発生しそれにより砕かれたようだ。

「なっ!?」

 すかさずミコの援護が入り追撃を受ける前に距離を取ることができた。

「ビームソードって感じ? 万能なことで……」

 破損した右腕のカタール分離、パージする。

「バラット、聞こえますか?」

「ティア? 聞こえてますよ」

「状況を見ましたがたぶん敵の武装は魔法です、フォトンレーザーとフォトンエッジの魔法を何らかの技術で兵器転用してるんだと思います」

「なるほど、ティアありがとう! 魔法ならどうにかできる!」

 俺は背中の刀、辰薙を抜き放つ。これには魔法を撃ち消す術が織り込まれていると言っていた、つまりはあの兵器に対抗できるということだ。

「ミコ! もう一度!」

「おっけ~」

 ミコの射撃を合図に再び敵に向かって突っ込んでいく。敵は右腕を向けてくる、直線のビームが来ると思っていたが違った。今度は光の弾丸が三つの玉からガトリングのように連続して発射されてきた。

「なんの!」

 俺は装備していたマントを脱ぎ捨てそれを盾に光の弾丸を受け止めスラスターを吹かして大きく右に回りながら距離を詰めていく。レイカーもそれに合わせて光の弾幕を止め、再び剣状へと構成し攻撃を受け止めようとしてきた。

「いけぇ!」

 俺は刀を両手で握り、敵目掛けて振り抜いた。受け止めようとした光の剣と接触した瞬間、剣は砕け霧散する。それを確認してそのまま更に踏み込み振り抜いた刀を跳ね上がらせ斬り上げて追撃を狙った。

「浅いか……」

 敵もなかなか目がいいらしく機体を反らせて斬撃を回避し、胸部を浅く斬りつけただけだった。いったん距離を取り仕切り直しだ。

「てめぇ、何しやがった!」

 オープン回線だろうか? レイカーから声が聞こえてくる。

「投降しろ、今なら命は保証する」

「その声……覚えているぞ、あの時のスカイのパイロットだなぁ!!」

 話が分かるかと思い会話に乗ってみたが裏目に出た。声からはっきりと怒りが感じとれた。

「俺は負けねぇ! 覚悟しやがれ!!」

 レイカーは再び右腕に剣を構成して飛び掛かってくる。光の剣を刀で振り払い霧散させる、相手もかき消されるのがわかってるためそのまま切り替えビームを照射してきた。意表を突かれたが辰薙はビームも弾けるようでそのまま受け止めることができた。

「もらった」

 敵がムキになって俺に攻撃してくるようになったおかげでミコがフリーになったのだ。敵の横に回りアサルトライフルのフルバーストを叩き込む!

「こいつもなかなか上手いなぁ」

 何発か命中したが敵はスラスターを吹かし上空舞い上がりそのままバク転をしながら距離を取られてしまった。元々軽いレイカーならではのアクロバティックな動きだ。新兵器があるとはいえ俺とミコの連携をしのいでいるし腕も悪くないのだろう。

「リロードする」

 ミコの声を聞き着地したレイカーに一気に接近し刀を突き刺す。ギリギリで躱された、しかしそれだけで終わるつもりは無い。そのままスラスターを吹かし回転しその遠心力のまま横薙ぎに斬りつけた。

「目がいいな、これも避けたか」

 敵はバックステップでその攻撃も避けて見せた。しかしそれも計算通り、俺とミコは伊達に長い間コンビを組んでいるわけではない。

「もらった」

 着地した瞬間、横からミコの射撃がレイカーを襲う。機体に弾丸は命中しバックパック、脚部そして腹部から煙が上がり関節がやられたのであろう膝から崩れ落ちた。

「くそがぁ! ふざけるなぁ! まだ終わらねぇぞ!!」

 ボロボロになりながらも右腕を振り上げエネルギーを貯めているようだ。明らかにキャパシティオーバーの威力を出そうとしている。ここまで痛めつけられたのだ、なりふり構っていられないらしい。

「バラットまずい、あのままじゃ爆発する」

 未知の兵器、あのような無茶な使い方をしたら何が起こるかわからない。

「その前に終わらせる!」

 俺は踏み込みレイカーの右腕を溢れていたエネルギーの塊ごと一刀のもとに斬り捨てた。

「この右腕は回収しよう、こいつもトドメは辞めといたほうがいいよな? 何か情報を知ってるかもしれないし」

「そうだね」

 目の前で跪き、無抵抗の奴をそのまま殺す趣味は流石に俺には無い。

「ふざけるな! こんなの認めねぇ!! 次はぜっていぶっ殺してやる!! おぼえっ……」

「バラット!!」

 何が起きたのか? オープン回線で騒いでいた声が突然止み、ミコの驚いたような声が聞こえた。

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