第4話

 掛け声とともに俺達の機体は高速で地上に向けて射出される。日本の市街地の地下によくこんなエリアを作ったものだ。

「そう言えば昔、こんな感じで出撃するロボットアニメあったらしいね」

「あれは人造人間でロボットじゃないらしいよ?」

「今度見てみる」

「面白いからそうしな、っとそろそろ着くよ!」

 機体が地上へと到着した。その瞬間ボルガザウラーに向けてミサイルの雨が降り注ぐ、現代日本の市街地なんでこんな装置があるのか謎ではあった。

「固定ボルト解除、レクティス発進!」

「発進!」

 俺はバーニアを吹かし、上空へと勢いよく飛び出した。状況はまさに怪獣映画を見ているような光景だ、ビルが崩れ、焦土と化し、その中心で半凍結状態のボルガザウラーがゆっくりと動こうとしていた。

「バラット、配置についた。いつでもいいよ」

「おっけー! まずは右足を潰して動きを止める!」

「了解」

 俺は奴の前方に着地し、そのまま距離を一気に詰めていく。狙いは右前足、ボルガザウラー見た目通り硬い甲殻に覆われておりほとんどの攻撃は弾かれてしまう。だが突破口はある、こいつの甲殻には繫ぎ目がある、そこを貫くのだ。

「もらった!」

 甲殻の繫ぎ目にランスを突き立て次の瞬間、高速で刀身が回転しドリルのように貫いていく。奴は突然の激痛に悲鳴のような咆哮を上げる。

「黙れ」

 咆哮を上げる奴の頭が爆発する。ミコの狙撃だ、対魔獣狙撃銃グランドゼロの発砲によりその巨体は大きくバランスを崩した。その瞬間右前足に深く突き刺さったランスをパイルバンカーで更に撃ち込み内部で炸裂させる。

「もう一発!」

 狙撃が頭部を直撃し、右前足に風穴が開いたのもあり轟音を立てて巨体が崩れ落ちた。

「流石ミコ、ナイスショット」

「バラットもタイミングばっちり」

 右腕に残っていたランスの基部をパージし再び距離を取りつつ正面にポジションを取る。片目から煙を出し怒りに満ちた咆哮を上げながら俺を睨みつけてくる、その口からは炎が溢れてきている。

「仕留めるよ!」

「了解」

 奴の火炎放射を耐熱シールドで受け流しながら加速しアイゼンシュナイダーを抜刀し再び距離を詰めていく。タイミングを合わせて再び奴の頭部で爆発が起こり火炎放射が止まりその瞬間俺もシールドをパージしバーニアを吹かして頭部目指し飛び上がる。

「5発で終わり」

 ミコは二発を連続して発射し頭部の中央同じ場所に命中させた。シャープブレイカー二発が命中した頭部を守る甲殻にはいくら頑丈といえどヒビが入り広がっていく。俺はその亀裂目掛けて上空からアイゼンシュナイダーを勢いよく突き立てる。

「ダメ押しだ、もっていきな!」

 生物共通の急所、脳に剣を突き立てられ悲鳴を上げるボルガザウラーに更にもう一本のアイゼンシュナイダーを突き立て止めを刺した。悲鳴が止みその巨体は完全に沈黙したのであった。

「バラット、退避しないと溶けるよ」

「そうでしたっ」

 俺は頭部から飛び退きミコの隣へと着陸する。ボルガザウラーは生命活動が停止すると頑丈な甲殻の内側にため込まれていたエネルギーがその形を維持できなくなりマグマとして体から漏れ出る迷惑な性質があるのだ。

「レイカさん、終わりましたよ」

「確認したわ、残りのフリージングブレイカーで出来るだけ被害を押さえるから二人は戻ってきて」

「了解」

 そして俺達は出撃した地点へと戻っていった。

「お疲れ様、二人とも流石の腕前ね」

 格納庫に戻った俺達をレイカさんが迎えてくれた。

「どうにかなりましたね」

「余裕!」

 ミコがピースサインをしてみせた。正直に言うとボルガザウラー言うほど強敵ではないのだ、ゲームでは序盤から討伐戦に参加できるくらいだ。定期的に体から一定範囲に放出する臨界放射に気を付けていれば動きは遅いし図体がデカくて攻撃も当てやすい、慣れればソロでも討伐可能な大事な資金源だったのだ。

「さてと、これからどうしようかしらね」

「主任、ザラタン・セカンドとの通信回復しました!」

「え? すぐ行くわ! ごめんなさい、二人ともちょっと待っててね」

 そう言うとレイカさんは急いでどこかに行ってしまった。

「ザラタンって大型潜水空母だよね? あれもあるんだ」

 ザラタンとは超巨獣の名前を持つ機動潜水空母でありゲームでは任務地への移動や拠点として利用されていた。セカンドということは2番船つまり複数存在しているのだろう。

「なんかゲームのイベントみたいだよな」

 さっきまで乗っていたレクティスを見上げながら思う。普段やっているボルガザウラー討滅戦となんら変わらない、現実という方が嘘のように感じられる。

「お二人ともお疲れさまでした、簡単なもので申し訳ないのですが少しお休みになってください」

 二人で話していると研究員の一人が軽食と飲み物を持ってやってきた。俺達はそれを受け取り少し休むことにした。

「全員傾注!」

 しばらく時間が経った時、モニターが急についたと思ったらレイカさんが映り話し出した。

「本部との連絡が取れた、本支部は破棄、すぐに迎えが来るぞ、これよりザラタン・セカンドへ撤収をする全員速やかに準備を開始せよ!」

 周りが急に慌ただしくなる。どうしたものかと考えていると再びレイカさんが近づいてきた。

「二人とも申し訳ないんだけど、ザラタンに一緒に来てもらっていいかしら? 申し訳ないけどもう一般人として帰すわけにもいかないの」

「わかってます、それを承知でレクティスに乗ったんですから」

「うん」

 これは現実なのだ、そしておそらく世界は大きく変わっていく。今までとおりとはいかないだろう。

「ザラタンについたら全部説明するわね、気になること、わからないことたくさんあるでしょ?」

「そうですね」

 するとレクティスを見ていた整備員が声を掛けてくる。

「主任、レクティスの装備どうしましょう? 一応空戦装備しておきますか?」

「あ~そうね、バラット君なら空戦も余裕でしょ? 知ってるわよ~貴方のことは」

 なんか嫌な予感がしてレイカさんから目を反らした。実際のところ空戦だろうが水中戦だろうが全部経験済みで問題ないのは確かだった。

「とりあえず何が起こるかわからないし1番機を空戦仕様に、2番機は支援砲撃戦仕様で行きましょう」

「ミコも空戦できますよ?」

「空戦ユニットが一機分しかないのよ、あくまで緊急時の装備として用意してただけだからね」

 正直空戦ユニットを出してくれればボルガザウラー戦ももっと楽だった気がするが黙っておく。

「さぁ、あんまり時間かけてられないわよ! 全員速やかに撤収準備!」

 レイカさんは手をパンパンと叩きながら周りの人達にはっぱをかけていた。

「手伝いますよ、仕様変更にいろいろ機体側の操作も必要ですよね?」

「そうね、二人ともお願いできる?」

「りょーかい」

 俺達は再びレクティスのコックピットへと戻り各種設定をいじり始めた。

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