第22話 薔薇姫の誓いへの準備

ある村に腰に薔薇の模様がある魔法を使える少女がいました


魔法を使える優しい少女は頼ってきた人の願いを魔法で全て叶えてました


人々は少女の魔法を天界から遣わされた神の遣いだと信じ崇めました


少女も人々の期待に応えようと来るものを拒まず願いを叶え続けていました


少女の奇跡を起こしてきた魔法には代償があった

魔法を使うたびに少女は自分の寿命を代価として払い続けた


魔法の代償を知らない人々は少女に頼み続けた


ある時は折れた骨を治す

ある時は失明した目を治す

ある時は瀕死の人間の蘇生をする

ある時は足を撃たれた傷を治す

ある時は尽きかけた食料を追加する

ある時は日が続いていたから雨を降らせる

ある時は ある時は ある時は ある時は


人々の願いは底なし沼のようであった


しかし人は強欲とともに簡単に願いが叶うことは無いと思っている


やがて人々はその少女の自作自演を疑った


「あの少女が俺達に不幸を与えて自分で願いを叶えて洗脳するつもりなんだ!」

「こんな簡単に願いが叶うなんてあるわけないんだ!」

「あいつは神の遣いなんかじゃない!」

「殺して神の力を奪って俺達で平和を手にしよう!」


「あいつを殺せ! 殺して神の力を手に入れろ!」


そして人々は寝ているその少女の喉笛を切ろうとした


しかし人々は少女を殺せなかった


少女は魔法で自分の体を守っていたのです


反撃しなかった少女はただただ追い回されて崖から落ちて泥にまみれてボロボロになりました


少女が星が輝く空を見上げて叫んだ


「私は! お前達を常に見ている! そしていつかお前達を殺してやる! 必ず! もう1度お前達の前に現れて殺してやる!」


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セレスが飛び起きて額に滲む汗を手で拭って大きく息を吐いた


「最悪……薔薇姫の話なんてするから思い出した……」


胸に手を当てて『ルーメ』と呟くとセレスの手から小さくて優しい光が灯った

ベットから出て部屋にある姿鏡に手を当てて鏡に映る自分に問いかける


「なんで裏切られて殺されかけても魔法を使わなかったんだ そのお人好しはいずれ自分以外も巻き込むぞ」


鏡に映る自分に問いかけても答えが返ってくるわけはない

鏡に背を向けてベットの方へ歩いたら鏡の中のセレスの顔が黒くなって話しかけてきた


「守護か復讐か中途半端じゃだめだろ 俺はお前がどっちを選んでも手伝うが」


「お前か」と呟いて鏡に映る黒い顔の自分を見て鏡に剣を向けた


「地上で姿を出さないでくれるか?」

「ただお前の影を借りてるだけだろうがよ!」


鏡の中の影は顔に指を当ててとぼけたような仕草を見せる


黙って冷たい視線を送りながら剣を向けるセラスタを見て肩を落として影が喋る


「はいはい 帰ればいいんだろ? 帰れば」


不満気に地団駄を踏みながら文句を言う影にセラスタは呆れたような視線を送る


「今めんどくさいって思っただろ」

「思ってない」

「いやあの顔は思ってた」

「思ってないから……分かった分かった時間があるときに顔出すから」


セラスタがそう言うと影は地団駄を踏むのを止めて満足そうに腕を組んだ


「顔出すってのを聞けたから帰る」


何度も『嘘じゃねぇよな?』と聞いてから騒がしかった影が嘘のように動かなくなった


「あいつと話すだけで無駄に疲れるな」


そう呟きながら剣を収めて疲れた足どりでベットに横たわり天井を見つめていた


「朝になったら……腰の薔薇の模様無くなってないかなぁ」


段々目が開かなくなってきて気がついたら寝ていた


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「何の用でしょうかキルト様」

「ただ世間話をしたいだけだよサミダレ」


追加された書類を片付けているキルトの部屋に他の仕事を終わらせたサミダレがノックをしてから入ってきた


「世間話……ですか」

「そうだよ〜夜も遅いから寝たいなら寝ても良いけど」


『飲み物を用意してまいります』と言ってからキルトの机に置かれてた空のコップを持って部屋を出た


少し経ってからサミダレがキルトと自分の分の2つのコップを持って戻ってきた


キルトの机にコップを置いて

サミダレは部屋の中央にある長机にコップを置いてソファーに座った


「セレスちゃんの剣の腕は上がってる?」

「常に上がり続けています」


セラスタに剣を教えているサミダレからの褒めの言葉を聞いてキルトが自分のことのように嬉しそうに笑った


「しかし、刀が自分への負荷がかかるというのはいただけないです」

「私も何回も剣については言ったけど変える気は無いって言われちゃうんだよね」

「両刀ともに強力ですがキルト様と私以外は本物を見たことがありません」


褒めの言葉の後に続いた指摘に同意するように頷いた


「それと単純にセレス様の命が心配です」


お茶を飲んで一息ついてからサミダレが言った言葉を聞いてキルトの動きが一瞬止まった


「戦闘ってなったら傷を気にしないで突っ込むから危ないよね」


キルトが紅茶を飲みながら言った言葉を聞いてキルトの方へ視線を向けたがすぐに視線を戻してお茶を飲んだ


「さて……そろそろ私は先に寝ます」

「私もそろそろ寝るよ」


しばらく世間話を続けてお茶を飲み干してからサミダレがコップを持って立ち上がった


サミダレが礼をしてから部屋を出てキルトも残りの書類を終わらせて体を伸ばしてから自分の部屋に向かった


「セレスちゃんのドレス楽しみだな〜!」

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