第23話 薔薇姫の誓い 前日祭

「セレスそろそろ行くよ〜」


部屋の扉を開けたアレストとセレストがセレスに手招きした


紺色と白色の露出の無いシンプルなドレスを着てバッグを手に持って部屋を出たセレスを見て2人は少し黙ってセレスから目をそらした


「に、似合ってないかな?」

「大丈夫すごい似合ってる」


目をそらした2人を心配そうにしながら聞くセレスに天を仰いだまま2人が声を揃えた


天を仰いだままセレスの方に視線を戻さない2人を不思議そうに見つめていたらサミダレが声をかけた


「大丈夫だとは思いますがくれぐれもお怪我にはお気をつけください」

「気をつける」

❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅

薔薇姫の誓いは3日にかけて行われる


1日目は前日祭と呼ばれ多くの出店が立ち並んでいて買い物を楽しみ薔薇姫にも楽しんでもらうというもの


2日目は本祭と呼ばれ王家から手紙を渡された家の令嬢が薔薇姫のために舞を披露して薔薇姫に祈るというもの

この日の舞で1番優秀だった者にその年の薔薇姫としての称号と王からの贈り物が与えられる


3日目は後日祭と呼ばれ薔薇姫の誓いが無事に開催できたことを感謝し、来年も開催できるように民衆の笑いを薔薇姫に届けるというものだ


そして今日は前日祭で多くの出店が立ち並んでいる


「あれ美味しそう!」


普段は剣の稽古か騎士団の書類の始末で執務室にいて見回り以外で街を出歩かないセレスが目を輝かせて出店の商品を見ていた


「あれだけはしゃいでる子が敵から鬼神って呼ばれてるなんて信じられないだろうね」

「確かにそうだな」


目を輝かせて色々な出店を見てまわるセレスの後に付いていきながら2人が微笑ましそうにしていた


まだ朝なのに出店がたくさん出店されている広場は親子連れなどで賑わっている


「朝でこれだけ賑わってるなら夜とかはもっと人が増えるだろうな」

「確かにそうだね」


セレスから目を離さないで後ろを付いていきながら話していた双子の方にセレスが駆け寄ってきた


「あれ3人でやろ!」

「あれ?」


セレスが指を指した方向を見ると棚に色々な商品が飾られていて間隔を開けて置かれている机の上にあるダーツで使われるバーリップでその商品を棚から落とすというものだった


「ようは当てて商品を落とせばいいんだな?」

「セレストやる気あるね〜」


腕をまくりながらバーリップを手に持って商品を狙うセレストを煽りながらアレストもバーリップ片手に狙う商品を見定めていた


「じゃあ多く商品獲れた人の勝ち!」


セレスがそう言ったのを合図に3人がそれぞれの商品に向けてバーリップを投げた


10本のバーリップを投げ終わったセレスが2人の方を見て絶句した


アレストの方は棚の景品が全て無くなっていて店主が頭を抱えて嘆いていた


逆にセレストの方の棚の景品は全て残って景品に当たって床に落ちたバーリップが沢山あった

セレストが財布を取り出して何回目か分からないリベンジをやろうとしていた


(連れの双子がごめんなさい……!)


申し訳なさそうに下を向いてアレストとセレストの腕を引っ張って店と反対側の出店に向かった


アレストは袋いっぱいに入った景品のネックレスなどに付いてた宝石を眺めながらのんきに呟いた


「ねぇセレス? この宝石って本物?」


セレスの手にネックレスを置いた

そのネックレスは透明のテグスを使っていて中央に赤黒色で雫の形をした宝石のようなものがあるシンプルなデザインだった


「偽物だな」

「なんで分かったんだ?」


宝石のような石を見てすぐに偽物と断言したセレスに首を傾げながらセレストが聞いたからキョロキョロと周りを見て人が少ない場所にあるベンチまで移動した


「多分この宝石はロードライトガーネットっていう名前の宝石って言われて買ったんだろうな」


ネックレスに付いていたタグを2人に見せたらタグに『R.L.G』と小さく書かれていた


「この宝石は別名で薔薇柘榴石(ばらざくろいし)と呼ばれるからそもそも薔薇姫の誓いはこの宝石の価値が上がるんだ」


ネックレスに付いてる宝石を触りながら説明するセレス時々セレスがネックレスを落としそうになってた


「この宝石は不純物が多いから透き通ってないし、そもそも出店の景品として本物の宝石を使ったネックレスを出すとは思えないからな」


「確かに5つあった棚全部にそのネックレスがあったからそんな数の本物を出店に出すとは思えないな」


ネックレスをケースに丁寧に仕舞って蓋をしてアレストに返した


「明日の本祭はその宝石を使う人が多いと思うぞ」


「ねぇセレス」


返されたネックレスのケースの蓋を開けて偽物の宝石を見ながらおもむろにセレスに聞いた


「この宝石って多分セレスがくれたことある宝石だけど、この宝石の宝石言葉って何?」

「確かに貰った赤い宝石に似てるな」


何かを言おうと口を開いたがすぐに閉じてから少し考えてからアレストのおでこをデコピンした


「痛った……え? なんで?」


急にデコピンをされて自分のおでこを抑えながら困惑しながらセレスの方を見るとセレスは自分の口元に人差し指を立てた


「内緒!」


楽しそうに笑ってるセレスを見て双子が顔を合わせて嬉しそうに笑った

❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅

「楽しかった!」


その後も出店で食べ歩きなどを楽しんだセレス達は前日祭の終了の合図の鐘の音を聞いて家まで帰った


「ただいま!」

「おかえりなさいませ」


3人が声を揃えて家に入ったらサミダレが出迎えた


サミダレやキルトへのお土産を渡して前日祭の思い出をサミダレに話した


「本当に楽しかったのですね」


サミダレは楽しそうに思い出を話すセレスを微笑ましく思っていた


(後でキルト様に楽しそうだったと伝えておきましょう)


セレスがあくびをして少し眠そうにしていたからその日はもう寝ることにした


「おやすみ」

「セレスおやすみ」


3人で部屋に戻っていてセレスの部屋に着いたから挨拶をしてセレスは部屋に戻った


セレスの部屋から2部屋離れた所がアレスト

3部屋離れた所がセレストの部屋でセレスと別れてすぐに双子も自分の部屋に戻った


「疲れたけど楽しかった〜!」


ベッドでうつ伏せになって落ち着き無く足を動かしていたセレスがアレストの『セレスがくれたことある宝石』という言葉を思い出していた


「2人とも初めて会った時にあげた宝石覚えてたんだ」


しばらく前日祭の熱が冷めきらなくて落ち着きなくベッドで寝っ転がっていたが急に睡魔がきてぐっすり寝た

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る