第16話 水族館デート②
「へぇ、カフェもあるんだな」
「ペンギンカフェっていうの! 可愛いスイーツとか色々売ってるよ!」
しばらくペンギンの様子を見たところで、俺たちはペンギンの水槽の前にあるペンギンカフェにやって来た。
カフェの前にはテーブルがある他、ペンギンの水槽前にソファーがあるため、ペンギンを見ながらも飲食ができるようになっている。
メニューを見てみると、何らかの形でペンギンが飾られているデザートが多いようだ。
絶対に
「ペンギン! ペンギン! ペンギン! ペンギンだらけ!」
案の定、胡桃沢は興奮しすぎて我を忘れていた。
一応高校の制服を着ているが、まるで子供が高校生のコスプレをしているかのように精神年齢が下がっている。
「く、胡桃沢は何を食べるんだ?」
「うーん……じゃあ、『ペンギンおにぎりドリンクセット』と『ペンギンパフェ』と『ペンギン和ッフルソフト』!」
いや、めっちゃ食べるやん。しかも全部ペンギン関係のやつ。
「
「じゃあ俺は『ペンギンフロート』と『ペンギン和ッフルソフト』にしようかな」
「『ペンギンフロート』! 私も飲もうか迷ったんだけど、これ以上はお金が厳しいな」
「なら、俺のやつ一口飲む?」
「…………え?」
完全に無意識だった。
胡桃沢がほんのり赤く染めた顔でこちらを見上げてきて、俺もそれで気づいたのだ。
――間接キス。
胡桃沢とは今まで色々なことをやってきたが、キスはしていない。
『キス』は男子として女子にされて嬉しいことで挙げた一つだ。しかし、さすがに付き合っていない男女がすることではないため、練習として実行はしていない。
今までさまざまな練習をしてきたせいか、胡桃沢との距離感がバグっているのかもしれないな。
「いや、違う! そんなつもりはなくて、もう一本ストローもらってさ」
「……う、うん」
本気出すと言った胡桃沢なら、もしかしたら照れた様子を見せながらも間接キスなど気にせず積極的にくるかもしれない。
そう思ったが、さすがに杞憂だったようだ。
少し気まずくなりながらも、俺たちはレジに向かって会計を済ませた。
そして注文した物が全てできあがり、俺たちのテーブル席はペンギンの食べ物、飲み物で埋め尽くされる。
まず『ペンギンおにぎりドリンクセット』。このペンギンおにぎりにはペンギン型の海苔がのっており、胡桃沢は「可愛い可愛い!」と連呼しながら写真をたくさん撮っている。
次に『ペンギンパフェ』。これはブルーのパインゼリーの上に、ミックスベリーと小笠原の塩バニラソフトがのったパフェだ。上にはペンギンのクッキーがのっている。これも胡桃沢が「可愛い可愛い!」と連呼しながら写真をたくさん撮っている。
次に『ペンギン和ッフルソフト』。これはもちもちの白玉にペンギンサブレののった和スイーツだ。みたらし、黒蜜きなこ、あずきからトッピングを選ぶことができ、俺は黒蜜きなこ、胡桃沢はあずきを選んだ。これも胡桃沢が…………(以下略)。
最後に『ペンギンフロート』。これは青い海をイメージしたブルーハワイ味のソーダの上に、ペンギンが泳ぐ姿を表した氷のペンギンがのっている。
「どれも可愛くて食べれない……」
「いやいや、食べないでどうする」
「だって! 可愛すぎるんだもん! 食べるなんてもったいない!」
「えぇ……」
撮影タイムを終えた胡桃沢はふぅ、と一息つき、ずっと買った物を眺めていた。
ちなみに俺は『ペンギン和ッフルソフト』の黒蜜きなこ味を美味しく頂いている。本当にすごく美味しい。
「どうしよう……ねぇ、どうしよう飛鳥馬くん!」
「いや、早く食べろよ。てか『ペンギン和ッフルソフト』とか溶け始めてない?」
「……え? ほ、ほんとだ!」
俺のもそうだが、胡桃沢のは俺のよりも速いスピードで溶け始めていた。
つい先程までもったいなくて食べれないと言っていた胡桃沢だが、さすがに溶け始めたらそれどころではなくなってしまう。
それに加えて閉館時間もあるため、俺たちは急いで買った物を食べて水族館を後にしたのだった。
「飛鳥馬くん、『ペンギンフロート』ちょうだい」
「ん」
「ありがと」
結局買った物を食べた後、胡桃沢のために残しておいた『ペンギンフロート』は外に出てから飲むことになった。
一応俺が買ったのだが、恐らくほとんどを胡桃沢に飲まれているのは気のせいであると思いたい。
「今日楽しかったなー。飛鳥馬くんは楽しかった?」
「もちろん。連れてきてくれてありがとうな」
「いえいえー。また来ようね、二人で!」
「……おう」
色々あったが、本当に楽しかった。
夜の水族館は初めてだったし、美味しい物を食べれたし。大満足だ。
あとは電車に乗って帰るのみ。明日も学校なため、これ以上この場所に長居するわけにはいかない。
「じゃあ、そろそろ帰るか」
「うん。そうだね」
またいつか二人で水族館に来る日がきたら。
その日は今日以上に楽しもう。
次は胡桃沢からじゃなくて、俺から誘おう。
そう心に決めて、二人で並んで帰路に就いたのだった。
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