第53話 萌え絵について考える。法律上の問題は?

 よく公の場での萌え絵が話題になります。このことについて考えて見ましょう。論じきれないので、まずわいせつ物と青少年保護育成条例を見ましょう。


○刑法 第百七十四条

公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰 第174条 金又は拘留若しくは科料に処する。


 これが公然わいせつ物陳列罪の条文です。で、要するに「現物」を見せないと罰せられることはありません。行為とありますが性器を見せるなども含まれます。

 公然とは、不特定または多数の人が認識することのできる状態で、175条も一緒です。

どちらかと言えば、こちらの方が今回のケースには当てはまります。


○刑法 第百七十五条

1 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。


2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。


「わいせつか否かの判断は法解釈の問題であり,一般社会において行われている良識,すなわち,社会通念に従って判断すべきものである」

 要するに一般人が見て「わいせつだ」と思えばわいせつだということです。この一般人というのはややこしいですが、社会通念のことで例えば過半数とか8割の人がという程度問題です。「特定の一般人」が「わいせつと思うからわいせつだ」という意味ではないです。


 さて、例えば日活ロマンポルノは疑似的とはいえ実写の性行為を演じていて、わいせつとなっていません。それどころか一般映画内でも性交の描写はあります。現在の感覚だと、性器が直接映っているかどうか?ではないでしょうか。


 萌え絵については、この一般社会の社会通念上の刑法上の罪に問われる「わいせつ」ではないというのは多分「そんなことを言ってるんじゃない」だと思いますが、こういうのは順番を追うのが大事です。


 刑法上ではないにせよ、青少年保護育成条例というものがあります。条例ですから地方自治体が定めているものです。今はある県のものを参考にしますが、ほとんど雛型なのでいいと思います。

 基本的に未成年に性的、暴力的なコンテンツを見せないということが決められています。公的な場に掲載が問題視されるという点ではこれが一番近い根拠ではないでしょうか。


 その中で「性的感情を刺激するもの」を見せてはいけないとあります。この線引きです。グラビアアイドルの水着についてはしばしば論争になります。


 であるなら、テレビにおいて海開きの様子の取材時に女性にはモザイクを掛けているか?レオタードはどうか?ラジオ体操はエロくないのか?陸上の女子選手は?すべて「実写」です。さらに先ほど論じた通り映画には裸はでてきます。性行為も直接性器は映しませんが出てきます。芸術性という観点はありますけど。


 まあ、マインドという観点はわからなくはないです。スポーツ競技上のユニホームの必然性とビキニのティーンエイジャーが際どいポーズをするのは意味が違います。


 ただ、西洋絵画の宗教画とかドガの踊り子とかってエロ目的ですよね?芸術の衝動にはエロスとタナトス、つまり青少年保護育成条例でいうところの、性的、暴力的なものを凝縮したものは多いです。つまり、美術館はR18指定にすべきでしょうか?


 そしてテレビドラマの中では直接女性の乳首を見せることはなくなったかもしれませんが、キスという性行為は出てきます。キスシーンはR18か?ディープキスとライトなキスは区別すべきか?キスと言う行為が性的でないか、といえば結構な割合の人が迷う程度のボーダーな気はしますけど。


 私の感覚だと全年齢でいいかな?と思います。要するに日本の法律はどうも実写3次元の性器のみ意識しているような感じです。これは小説での判例もありますので、必ずしも実写ではないかもしれませんが要するに結合部の描写の話です。



 さて2次元を論じる前に確認しましょう。要するに刑法で罰せられるのは、性行為あるいは性器の直接描写を公の場に開示することです。これを上回る2次元があるかどうか、です。一般的に考えて少女のイラストについて、性器の直接描写があるものは別個論じる必要はあるでしょうが、現状それはアダルトコミックの世界です。


 次にR18、つまり青少年保護の観点から条例として制限されるのは?これはどうも、PTAなる組織が「有害だ」と叫んだ作品のような感じです。要するに人気が出た作品の中にエロか暴力があるもの、と言える気がします。つまり、恣意的な基準な気がします。






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