第8話 人工中絶って原因は誰のせい?

 人間の社会規範で一番大事なのは人の尊厳・権利を他人が侵害するのを防ぐことでしょう。で、人工中絶って女性の権利云々が先に立ってますけど、最大の人権侵害である殺人にならない理由ってコンセンサスが得られているんでしょうか?


  生物学的には受精して細胞分裂が始まった段階で生命…というか人間でしょうね。普通に考えれば殺人…に準ずる何かを殺していることになります。

 であるなら生まれた赤ちゃんも経済的余裕や育てる自信がなければ出生後1週間は殺していいって法律にすればいいでしょうか?それと何が違うのか考えてみましょうという話です。


 人工中絶において最大の疑問は行為には責任が伴うという点があまり議論されていないことです。性行為をすれば子供ができるに決まっています。それは避妊をしてもある一定の確率で失敗することが知られています。


 なのに、生命を殺す権利が女性の権利だ、という議論がどうもしっくりきません。きませんが「性行為をする権利」も女性の権利の一つという理解でしょうか。レイプなら分かります。刑事事件となったレイプの証明ができれば人工中絶は女性の尊厳の保護と言う意味では重要でしょう。


 ですが自主的な性行為の「失敗」が生命の尊厳を侵害する=殺人を「女性の権利」として認めていいでしょうか。

 「いつから人間か?」という逃げ道はあります。脳の発生以降は人間として考えるなどですが、これは難しいです。脳死問題や認知症などとの整合性はどうなるでしょう?


 これっていくら議論しても答えは出ません。生命倫理の問題は宗教やその時代の倫理観に深くかかわっているからです。結果的に先に生きている人優先で「女性の権利」の名のもとに殺人を肯定しているというのが現状でしょう。


 言いたいのは「女性の権利」だけ主張して、生命倫理を真剣に考えないで人工中絶の是非を問うのはやめて欲しいということです。権利には責任が伴います。その責任とは生まれてくる子の未来の尊厳を奪っているという自覚を持つことでしょう。

 まず、生命倫理についての議論が尽くされたあとで、どういう理由や方法、時期なら合法とするのか、という順番は絶対に必要だと思います。


 一足飛び「女性の権利」に飛びつくのはどうかと思います。本来は先に「妊娠したら産むべき」があると思います。そこに選択の自由は本来はありません。人間である以上意識のあるなしに関わらず尊厳が存在します。その尊厳に対して妊婦にあるのは「行為」に対する「責任」でしょう。


 そして医者にそんな判断は出来ません。というか誰にも出来ないでしょう。母親の女性の権利と殺人の比較考慮などそれこそ神の領域です。


 そして裁判などでレイプ認定をされるのを待っていたらすぐ臨月です。それに実際望まないで生まれてきた子どもの処理には今の社会では困るでしょう。ですので、結論は理由などは問わずに安全に施術できる基準内で「認める」か「認めないか」を決めるしかありません。その上で法律でおためごかしをするのではなく、手続き論で済ませるべきでしょう。


 それは宗教観などで結論が変わりますので、選挙制度その他で決められた手段で適切に決められた法律で判断するしかないでしょう。自分の頭で考えないでどこか他の国の例を持ち出すのは最悪です。


 その代わり性教育では生命倫理の基本を教えることでしょうね。そして中絶が禁止されたアメリカの州などについては、結論ありきで反対するのではなく、どういう理屈で禁止したのかを読んで考えてから反対してほしいです。


 中絶件数は年間15万人ですからね。そう、件ではなく人と数えるべきでしょう。殺人あるいは未来の子供の権利の侵害が起きた数です。今の年間出生数が90万人を切ったと騒いでいることからすると全員生まれたらなあと思わなくはないです。

 だったら赤ちゃんポストを批判する前にこっちのケリをつけた方がいい気もします。産んだら国が育てますよ、という政策があってもいいかもしれません。

 それと15万人が15万円ずつ使ったら、225億円かあ…まあいろいろあるんでしょう。




 

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