第11話 予定説と天職。働く権利を考えましょう。

 プロテスタント…カルバニズムにおいて予定説という考え方があります。要するに天国に行ける人はあらかじめ決まってる。だから現世で善行をいくらつもうが、悪い事をしようが、関係ないよという事です。


 ただややこしいのは天職という考え方で、禁欲的に一生懸命働いている人はひょっとしたら選ばれている可能性が高いんじゃない?一生懸命働いている人って、どうやってわかるの?それはお金をいっぱい稼げる人だよ、と言う事です。お金を稼げる職業がつまり天職です。


 注意すべきは「いっぱい持っている人」ではありません。稼げる人です。で、本来禁欲ですからお金は贅沢するためじゃなくて、神にささげたりします。だからアメリカには寄付文化があるわけです。が、それと同じくらい大事なのが、持っているお金を投資してもっと儲けるという行為は「禁欲的な善行」である、という考え方です。


 これって企業のバランスシートで純資産の利回りを表すROEと全く同じ考えです。つまり、資本主義は非常にプロテスタントと相性がいいというか、そのものという事です。

 アメリカがWASP、ホワイト、アングロサクソン、プロテスタントが経済の中心なのはこれが原因です。なお、WASPは別に秘密結社組織ではありませんし陰謀論でもありません。


 資本を利回りによって増やすのが資本主義です。つまり資本家だけが儲かって大衆は搾取されるのが資本主義の必然な社会が生まれます。今の世界が例外で、第2次世界大戦後の人口増加「人口ボーナス」が大衆の所得増加を支えてきました。

 ですので、例外はいくらでも上げられると思いますが、基本的に資本主義というのは非常にプロテスタント的な宗教観が強く作用しています。


 まあ要するにアメリカの支配階層であるWASPにとっては、金を稼ぐ力こそ神に選ばれた証拠であり、人間の価値に直結するということです。

 さて、こういう社会にいれば働かない人は、つまり神に選ばれている可能性が少ない人ということになってしまいます。そりゃあ「働く権利」っていいますよね。それが絶対規範である唯一神がいない日本に入ってくるとまずい方向に作用すると思いますけど、それはまた後程。


 このプロテスタントの教義が出る前のヨーロッパは皆いかにサボるかが大衆の一般的な考え方だったらしいです。

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