第4話 5大美少女side

※今回の5大美少女sideは代表として朱莉目線で書きます。ご了承ください。

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「なぁ5人とも。少しいいか?」

いつものように幼馴染5人で固まって話していると、誰かが声をかけてきました。

「あら?桐谷くんじゃない。どうしたのかしら?」

蒼ちゃんの言う通り、声をかけてきた人は、私たちのもう1人の幼馴染である虹くんのお友達の桐谷くんでした。

「実は、5人に少し頼み事をしたくてな」

「なんでしょう?」

「あぁ、実は今日の昼休みに虹と2人きりで話がした………」

「「「「「却下」」」」」

「拒否がはえーよ。せめて最後まで言わせてくれ」

桐谷くんの提案は途中で私たちの声に遮られました。でも、言いたいことは分かります。おそらく、昼休みに虹くんと話がしたいから2人きりにさせてくれ。といったものでしょう。けど、そんなことは出来ません。なにせ、私たち5人は虹くんとできる限りずっと一緒がいいんですから。


「はぁ。まぁこうなることはだいたい分かってたからな。タダでとは言わねーから、交換条件でどうだ?」

「交換条件……?」

桐谷くんの提案に、紫夕ちゃんが反応します。

「あぁ、今日の昼休みは俺が虹と2人きりで話をする。その代わり、お前たちの悩みの相談役を俺が請け負う。それでどうだ?」

「………私たちに相談したい悩みなんてありませんが?」

翠ちゃんが静かに反論します。私もあまり相談事はありませんね。他の人も同じなのでしょう。少し微妙な反応を示しています。

「そうか?俺には、お前たちは虹の攻略が上手くいかずに行き詰まっているようにみえるが?」

「「「「「…………ッ!」」」」」

私を含めた5人が全員息を呑んだのを感じます。それだけ、桐谷くんの言葉が核心を突いていたからです。事実、私たちは誰1人として虹くんに女の子としてみてもらえてません。全員あくまで『幼馴染』の範疇でしかありません。みんな、虹くんに『幼馴染』ではなく、『1人の女の子』として見てもらいたいのです。


「………仮にそうだとして、あなたに何が出来るの?」

少しだけ、不服そうに白亜ちゃんが問い返します。核心を突かれたのが悔しいのでしょう。白亜ちゃんは少し負けず嫌いですから。

「目には目を、歯には歯を。男を堕とすには男を、だろ?」

桐谷くんは、「当然だろ?」というふうに言ってきます。確かに男の子目線の言葉はかなりのアドバンテージとなるでしょう。桐谷くんもそれを分かっているから、こんな風に交換条件として提案してきたのでしょう。


「私たちは、誰が虹くんを堕とすのかを勝負してるんです、本気で。なので、私としては5人同時に相談というのは抵抗があります。場合によっては、自分しか持っていない情報を恋敵に公開してしまうことになりますからね」

私が思ったことを言う。自分しか持っていない情報を恋敵に公開するというのは、私からしてみれば自分の首を絞めるだけになる。そんなことは絶対にしたくない。

私の言葉を聞いた、桐谷くんはニヤリと笑い、挑発するように言った。

「もちろん、そこは個人で相談に乗るぞ?それでどうだ?」

桐谷くんの言葉に、私たち5人は目を合わせる。ここまで好条件を示されているのだ。それに、これから学校で虹くんと関われなくなるわけではない。あくまで『今日の昼休み』のみだ。そうなったら私たちの答えは決まっている。5人で目線で会話した後、私たちは桐谷くんを見据え、声を揃えてこう言った。

「「「「「その話、乗った!!」」」」」


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「………まぁ、こうなるわよね」

呆れたようにそう口にする蒼ちゃん。

「当たり前じゃないですか。私たちは『2人きりで話をする』ことに同意しただけで、『話を聞かない』ということに同意はしてませんからね」

蒼ちゃんの言葉に私はそう返す。

昼休みの今、私たちは虹くんと桐谷くんの後をつけて食堂にやってきていました。どんな会話をするのか気になりますし、もしかしたら虹くんを堕とすためのヒントを得ることができるかもしれませんからね。


「静かにしててよ?2人の声が聞こえなくなるから」

「「「「もちろん」」」」

紫夕ちゃんの言葉に私たちは、声を揃えて返事をします。ここからは、集中モードです。


「なぁ、お前たち6人はいつからの付き合いなんだ?」

桐谷くんと虹くんの話を聞き始めてすぐに、桐谷くんがそんな風に切り出しました。その質問に虹くんは、「幼稚園の時からだよ。家が近所で………」と普通に答えています。この感じで、私たちのことを色々深堀りするつもりなのでしょうか?

「その時からあの5人は可愛かったのか?」

「「「「「…………ッ!」」」」」

桐谷くんの質問に、私たちは息を呑みます。ここで、虹くんが否定をすれば、私たちはみんな立ち直れなくなってしまいます。

「あぁ、確かに。近所の人にはみんな『かわいい』って言われてたな。小さい時は俺にはよく分からなかったが、小学生くらいになってからアイツらがいわゆる『美少女』だっていうことに気が付いたな」

「「「「「ゴフッッッ!」」」」」

虹くんの言葉を聞いた瞬間、私たちは盛大に咳き込んでしまいました。


(美少女………虹くんが美少女って言ってくれた…………///)

私は、虹くんの言葉を頭の中で反芻はんすうしていました。すごく嬉しすぎて、思わず咳き込んでしまいましたし、危うく吐血するところでした。他の4人も同じなのでしょう。みんな表面上は普段通りですが、口元がニヤついています。

ですが、そんな喜びも次に聞こえてきた虹くんの言葉で吹き飛んでしまいました。

「それでもやっぱりあの5人を恋愛対象として見ることは出来ないな。一緒に過ごした時間が長すぎるから、全員家族みたいなものなんだよな」


「「「「「……………………」」」」」

その言葉を聞いた瞬間、私たちはさっきまでのニヤつきを引っ込め、お通夜のような空気になります。それもそうです。たった今、虹くんに「恋愛対象としてみれない」と宣言されたのですから。

「………まあでも、何かのきっかけで5人を恋愛対象として見ることができるようになるかもな」

「「「「「っ!」」」」」

お通夜のような雰囲気の中に飛び込んできた、桐谷くんの言葉に私たちはハッとしました。おそらく桐谷くんは虹くんの言葉をある程度予想していたのでしょう。だから私たちに「相談に乗る」という条件を叩きつけてきたのです。私たちが手詰まりになることまでも予想して…………

(((((これは、強すぎる味方を手に入れたかもしれない。このヒロインレースは、桐谷(くん)を上手く使えた人が勝つ!)))))

私たち、5人の中で『桐谷くん』という強すぎる味方の使い方が上手くないといけない。という共通認識が生まれたのであった。









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橙:「いや、あの5人が盗み聞きしていたのは気づいていだか『上手く使う』って……俺完全に物扱いじゃねーか」

作:「頑張れよ、橙弥。俺はお前を応援しているぞ!」

橙:「てめぇのせいだろうがァ!ふざけんなよぉぉ!」

作:「ギャー!暴力反対!暴力反対ー!」

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