ざらつく心 ビビリ三人組

 いつもの内線合図が八代から来た。俺たちは19時過ぎに会社を出て駅に向かっていた。

「腹減ってるんだけど」

竹山の言葉につられ俺の腹の虫が鳴った。

「だな。ラーメンでも食うか」

俺たちは行きつけのラーメン屋に入りビールと餃子とラーメンを平らげ気持ちも腹も整えて、いざ新宿へ向かうべく地下鉄に乗り越んだ。

少しして竹山が唐突に呟いた。

「俺緊張してる」

意味は判っていたが、俺はわざと聞き返した。

「へえ~クラブにか?」

「違うよ。本物のや……」

「シッ! それ以上言うな」

八代にブスッと留めを刺された。

確かに普通に話す話しではない。竹山がこれまた唐突に、今のプロジェクトの話しを始めた。

八代と俺は時折チャチャを入れながら仕事モードに切替わった。

「次降りるぞ」

「はいよ~竹山その話し明日練るぞ」

「うひ~了解~」

八代よ今日異常に歩くのが速いんだけど。息が切れて来た。

「なぁ地上に出たい」

俺は先を歩く八代に声をかけた。

「どうした? 別に構わないけど

上がるなら……えっとあの階段だな」

「やっちん、歩くの速いよ……」

俺より後ろを小走りで付いてきてきた竹山が文句を言った。

「なんだよ! お前ら何緊張してんの?」

八代~お前なぁ……緊張って。

「お前は一回会ってるから余裕かもだけど、俺らはその筋の方とは初めてなんだから、緊張して当たり前だ!」

「悪い……俺も実は緊張してる」

「アハハアハハ。やっちんが一番ビビリだ~面白い」

竹山が大笑いしながら八代を突く。

「痛えよ~ んじゃ! 行くか!」

歌舞伎町……人の波は昔しも今も変わらず揺れるネオンのもとへと吸いこまれていく。

それにしても、刹那の時を照らし出す光が突然優しく感じるのは何故だろ。

やるせない気持ちが溢れ出している顔、顔。なのに……一体……

何を求めて来るのか。

誰を求めているのか。

何を置き去りにしたいのか

誰かが……すれ違いざまで良い。ほんの少し自分を見てくれたら、それだけでホッとするのかもしれない。

「着いた!」

八代がビルの案内プレートを指差す。

「クラブ 蒼」

時間は20時を少し回っていた。










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