ざらつく心 意外に落ち着く雰囲気だ

 歌舞伎町のガヤガヤギラギラした雰囲気を一変させるエレベーターの内装。いぶしたゴールドの地模様に囲まれると、益々場違いな感覚に襲われた。竹もすっかり黙ってしまった。

「おいおい~そんな緊張するなや。誰も取って食うなんてしないんだから」 

判っていてもヤクザやさんとお目みえするわけで……それも超幹部なんだろ。

八階で止まると、扉がゆっくりと開いた。

「いらっしゃいませ」

扉を抑えているのは、中年の男性だった。

「八代様お待ちしておりました。 さあ奥へお席ご用意させて頂いておりますので」

俺達に一礼すると、ボーイに合図し席まで案内させた。

「では、ただいまオーナーがご挨拶に参りますので、少々お待ちくださいませ」

そう言って案内為てくれた男性は立ち上がると一礼して立ち去った。

「オーナーって?」

「お~姉貴の親友はオーナーで、旦那は社長さんなんだよ」

「やっくん今日は有難う! やっぱりガラガラなの。来てくれて本当良かった! それで……お名刺をどうぞ。私この店のオーナーで山田蒼です。

よろしくお願い致しますね」

「こっちは、佐々木恭介 それから竹山政男。俺の同期」

「お二人とも感じが良いわね。雰囲気がとても良いわ」

俺と竹は顔を見合わせて、

「いえいえそんな……」

「馬鹿! お世辞だ!」

「あら! お世辞なんて言わないわよ。本心です。で、何召し上がる? ボトルは入れさせて頂くけど。でも……最初はビールかしら?」

頷く俺達を見て、 

「借りてきた猫ちゃんみたいよ。フフフ」

そう笑いながら席を立っていった。

「いい女だよなぁ。女優の高山華子に似てるよな」

「いや~それより綺麗だろ~」

「だな。着物が良いし」

白地に淡い青が波を打っているように描かれて、金糸銀糸が上品に織り込まれている。

「恐れいりますが、オーナーが改めてお席ご用意致しましたのでこちらへ」

俺達はフロアの真ん中まで進むとオーナーに手招きされて、用意された席に座った。


シャンデリアが煌めく世界。

全体はモノトーンで統一されているが冷たさは無い。所々に優しい花々飾られているせいか。敢えてカトレアや蘭は避けているように見える。季節感を大事にしているのが判る。

それに小さく流れる聞き覚えのある音楽……ああ~この声……誰だっけ……訳わからないジャズでは無いのが嬉しかった。

 ビールが運ばれてきたと同時に女の子が三人テーブルに付いた。

どの子も女優さんのように美しくて。心臓が痛いよ。




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