この国ってこんな名前だったのか……

 戦後処理が終わって、私はヒゲソリ騎兵隊の七階級騎士へとランクアップしました。今までは見習い騎士だったね。

 なんでもめざましい戦果を上げたからだって。主にサキのおかげだな、うん。

 本部を仕切っていたトテモスゴイ・ヒゲソリ・がおー部隊長が四階級騎士なので、一階級上昇する際に求められてる、強さや、騎士としての立ち振る舞い、これらが相当な物を伺わせます。

 ちなみに二階級や一階級はカミソリ親衛隊所属隊員だったり、伝説の存在だったり、とのこと。実質上限は三階級かな。


 戦後処理が終わって一度宿舎に戻ったあと、私たちは『ツレナイ伯爵領ソレソーレ市』へと向かうことになりましたよ。武者修行を男爵領の外で行って欲しいとのこと。ヒゲソリ騎兵隊の偉功も他領では薄くなるので、本当の力が試されますね。


『ツレナイ伯爵領ソレソーレ市』は都市、しかも伯爵の都市なんですが、その割には『ヒゲソリ男爵領ソリノコ市』より活発な都市ではなさそう。


「男爵領との境目にある都市ですし、発達する力があまりないのではないでしょうか」

「サキのいう通りかもねえ。ツレナイ伯爵領ではどうやって渡り歩こうかね」

「ガンバトル国内ならヒゲソリ騎兵隊宿舎が各地にあり、ギルドのように機能するとのことですので、それを渡り歩いてみてはいかがでしょう」

「ツレナイ伯爵の領土なら整備されていないってことは無いか、腐っても伯爵領土なんだもんね。よしそれでいこう。」



 ソレソーレ都市はツレナイ伯爵領土の中でも端の方で、ヒゲソリ男爵領に近いから存在しているような、存在感の薄い都市みたい。酒場で暴れて聞き出しました。今回も飲み比べで私たちにかなう者はいなかったな。


 次の日商人ギルドに赴く。商売の基本は商人から聞くことだと思う。そんな異世界。

 開拓するような土地はもう無いけど、資源採掘基地があるのでそこで輸送のお手伝いは出来ると商人ギルドの人がおっしゃるので、輸送任務をすることに。


「手始めに水晶が採掘される場所で輸送任務に就くよ」

「わっかりましたご主人様! ちなみにわたくし水晶があると力がアップしますよ。性を水晶で見通すので」

「お、じゃあ報酬で良いやつ買ってみるか」

「やったぁ!」


 ばんざーいばんざいしているサキを見てると美人かわいい過ぎてクラッとくるのでぽち三匹で押し倒して失神させ、さっさと資源採掘基地へ。


「いんや、でっけえ犬だなあ……馬よりデカい。あんたが伝説の犬騎士様かい」

「ええこの子達は犬ですけど、私が犬騎士とかが巷に流布されてるんですか。私きつねなので、覚えておいてくださいね」

「そうかそうか。んでまあ、今は採掘してないから気長に待ってくんな。スタンピードでここも被害を受けちまってよ」


 ちょっと残念そうに顔を落とす採掘基地の受付さん。

 道具ごと無いようで、採掘自体が一から仕切り直しだそうだ。


「同じような鉱山を有している都市から採掘道具調達してきましょうか? 事情を話せば融通してくれるかもしれませんよ」

「そだなあ、そならばここより西のモーレル伯爵領オットトト鉱山都市に行ってきてくれんけ? 事情は先にメールで伝えるけれよ」


 メールあるんだ……。


「わかりました、それでは行ってきます。経費はあとで清算してくださいね」


 ということで隣の領土へ進むことになったのだ! 待ってなさい、採掘道具!


「それじゃーいくかー、と思ったけれども」

「大豆様と小豆様が御成長なされられて、今使っているリアカーじゃ小さいですね」


 大豆と小豆が使っているリアカーは軽トラックの荷台サイズなので、三年前よりもっともーっと大きくなった二匹だとちょっとリアカーが非力に見える。普通トラックサイズが必要だ。


「四頭引きの馬車でももらって改造するかね。ぽちのような馬鹿デカリアカーはちょっと無理だけど、馬車くらいなら何頭引きでも引ける力はあると思うよ」

「商人ギルドに行って借りてきましょう。交渉はお任せください」


 商人ギルドかわいそうにと思いながら交渉に向かわせる。

 そして、何をしたかはわからないが大きな馬車を借りてくることに成功した。


「どうやってこんなシロモノを? サスペンションもバッチリだし屋根もある。荷台はデカいし御者台も快適な作りじゃん」

「お願いしただけです。ちゅるり~ん」


 大体サキが変な語尾を使ったら変なことをしたのをごまかそうとした時である。まあでも良いか。これは良いものだ。


「じゃあサキが御者台に乗って二匹を導いてね。よろり~ん」

「え、私がお二匹様を!? 出来るわけないじゃないですか! お二匹様は肉食動物ですよ!?!? オオカミなんですよ!?」

「せーの、よろしく――」

「「「わん!」」」


 同時にわんわんいう兄妹はかわいいなあ。サキは顔が真っ青だけど。


 そろそろマジックポーチ欲しいなあなんて思いつつ、サキの「お二匹様! あっ、あっ、それやめっ、あっあっ」という泣き言を聞きつつ、一行はモーレル伯爵領オットトト鉱山都市へと突き進むのであった。

 馬車鉄道で繋がっているからそこをなぞるだけだね。何も無ければすぐつくはず。

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