おっとっとっとっとオットトト

 オットトト鉱山都市へは全くもって順調に進みませんでした。

 スタンピードで道がガッタガタに破壊されてるから進めない進めない。

 なにか良い方法を見つけないと、重い荷物を積み込む帰り道なんか車輪が埋まっちゃって動かなくなるぞ。


「うーん、どうにかしないと……」

「リアカーに馬車さえ無ければ軽快に走れるのですけれども、それらがないと荷物が運べませんからね」

「どうにもならんよねえ。うーん、うーむ。しょうがない、直通を諦めるか。伯爵領土の都市だし数カ所の道が連絡されてるでしょ」


 というわけでオットトト鉱山都市へ直接行くのは諦めて、他の都市を経由してオットトト鉱山都市に行くこととなりました。


 ソレソーレ都市のヒゲソリ騎兵隊宿舎で詳細を聞くと、モーレル伯爵領オット林業都市、モーレル伯爵領オットト水産業都市、モーレル伯爵領オットトト鉱山都市、と繋がっているみたい。オット三連続。

 この淡泊な名前の付け方、モーレル伯爵はかなり事務的な人だなと思いつつ道を聞いて、まずはオット林業都市へと出発。

 最初は道が荒れていたけど、スタンピードの影響がなくなるころには道が復活してすいすいと走れるように。


「そしてオット林業都市へと到着。来るまでの景色が美しかったね」

「整備された里山って感じが本当にとても。都市へ行くのにふるさとへ帰る気分でした」

「魔族でもそう思うんだ」

「魔界も人間界と似たようなもんですよ。グロい風景が広がっているわけじゃありません」


 特にこの世界では環境が悪い土地に追いやられたから魔族は人間を憎んでるとかはなく、単純に住む場所が違う、基本の強さが違う、位の違いでしかないらしい。残念。まあサキ魔族だけどかなり弱いもんね。一点特化で強いけど。


 さてこの都市は林業を営んでいるためか道幅がスゴク広いのが特徴だと思う。舗装は木材だね。建物も木造で、複数階層ある家屋でも木造が主流。実に気の良い、いやいや木のよい使い方をしている都市である。


 大きい道は縦横無尽に走っていてそこを大きな馬車が走って木材を出荷している。大きな道は火災が起きた時に燃え広がるのを防ぐ役目もありそうだ。

 日本も昔はそういう構造だったらしいね。死ぬ前の時点ではみーんな電磁防壁で守られているし、そもそも家屋が空中に浮かんでいたから学んだことでしかないけど。実物ってこんな感じか。


 この都市にはヒゲソリ騎兵隊の宿舎がないので普通の宿に泊まる。三件ほど断られたけどなんとか宿を取ることが出来た。


「それじゃ今日はお疲れ。サキかんぱーい。ごくごく、ぷはーうまい」

「かんぱいです。っかーきくっ。しかしヒゲソリ騎兵隊の影響がないとわたくしたち怪しいというか、怖い存在みたいですね」


 なんかそうみたいなのである。ついに我々は怪しい軍団になってしまったのである。人々は私たちを避けて通るし、声をかけると逃げる。ぽち真っ黒だし二トン位ある体格だからなあ。そりゃあ怖いよね。

 そんなときに役立つのはサキュバスのお姉さん。妖艶な声色で人の心に分け入り、そそのかして何でも情報をさらけ出してしまうのだ。

「そんなことないですよーご主人様の馬鹿ーポカポカポカ」などとじゃれているがこれは表向きの顔。裏では小豆と仲良くなるチャレンジをして毎回失敗している。「ああっ、やめてっ、そんな恥ずかしいこと」

 話がずれた。サキのおかげでまあなんとか人と触れあえているってわけですよ。今回宿取れたのもサキのおかげだしね。

「なんだかんだでサキがいないとやっていけないよ。下僕にして良かったなあ」

「ですよね。わたくしも下僕にされるまで性でしか生活したことがなかったので、今の生活が新鮮です。考えもしませんでした、マッサージで性欲を隆起させるのではなく疲れを取るだなんて。わたくしの魔力も癒しに使いますし、まさかサキュバスが他人を癒やせるだなんて」

「私に感謝するんだなガハハ」

「一生お仕えいたします」


 さて、一晩経って疲れも取れたので次の都市へ進むとするか。

 どうもここの木材で交易が出来るらしく、ぽちリアカーと馬車に積んでいる物は特にないので木材を積んでいこうということになった。


 オットト水産業都市は川に面しているのか海に面しているのかちょっとわからなかったんだけど、とにかく水産業で成り立っているのには間違いがなく、船の材料ということで木材が使われるみたい。大きな船はさすがに金属だけど、小型の船は木材で作るそうだ。

 住宅も基本は木材建築で、重要施設だけ金属や石材を使うみたい。


 私のいた日本だと基本全部電磁防壁で守られていたし、木材というかナノマシン建設だったからこういうのは聞いた話が現実で起こってるんだなあという感じである。住宅だってみんな空中に浮かんでたしね。


 水産業というので、到着したら魚を久しぶりに食べてみたいなあ。

 海ならブリもどき、川ならイワナもどきが良いな。日本じゃないからさすがにイワナは無理かな。ブリもどきはあるだろう、養殖されていれば。あ、養殖技術あるかなあ?

 魚のだしで取った味噌汁、食べてみたいなあ。味噌汁自体は作れるけど鰹節が手に入らないからどうしても日本の味噌汁にはならないのだ。あんなもの鰹節が異世界にあってたまるか。日本でもなぜそんなに工程がかかる物を作ったレベルの食べ物なのに。

 逆に異世界じゃないと食べられないものもあると良いなー楽しみ。


 では出発しますか!

 この都市に問題あったら帰りに聴いて道具を届けたあとに解決しようっと。まずは急いでオットトト鉱山都市へ向かうのだ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る