修行という名のお気楽生活

 修行は三年出来ました。しかも無限流を!

 近くに無限流道場があったのでそこに通いました。

 この首都には、殆どの流派が存在しているみたい。さすがヒゲソリ騎兵隊本部がある場所。


 首都での生活なのでやっぱりお金が掛かるんだけど、金銭周りはサキが回してくれました。

 サキの整体道場がめちゃくちゃ人気になって、お金がガッポガッポ。

 ここにいるヒゲソリ騎兵隊はみんな修行で滞在しているし、それはつまり体を痛めつけているので、それを完璧に癒やすから高級整体にしても全然オッケー。ヒゲソリ騎兵隊からお金巻き上げてました。あと高級マッサージ店としてお金持ちからも巻き上げてた。サキ便利チュッチュ。


「わたくし便利でしたか。嬉しいです! さあ、愛の口づけを……!」

「しないよぺっぺっ。便利に扱ってやるってこと」

「ああ、わくし便利なだけの存在なのですね。わたくしのM心がゾクゾクします」


 サキ何言っても心にゾクゾクさせるんだよね。強い。


 無限流を三年修行で計六年修行した。中学生で入門して高校生で卒業したくらいかな。

 修行はまだまだ続くけど、初心者くらいにはなったかな。


 無限流って、全身に神経を張り詰めてどうたらこうたらする訓練なんだけど、こう、魔力を鍛えるのも目的の一つかなという感じがする。

 魔力を鍛えたかった私としては十分目的に合っている訓練だったよ。


 それで私、魔法を知らないんだよね。なので魔法をいろいろ『購入』しました。魔法って買って覚えられるんだって。

 水属性の状態だからって火の魔法が使えないわけじゃ無くて、一〇〇パーセントの力が出ないだけ。使えないわけじゃぁない。特に紫色の魔法(念術系統かな……?)はいつだって一〇〇パーセント使える。

 ファイヤボルトから渦潮、サイクロン、強力サイコキネシスまでいろいろと買った。購入資金はサキが稼いだ。サキ助かるナデナデ。


「へ? いきなりわたくしの頭を撫でてどうしたんですか?」

「いや、なんとなく。休憩したらマッサージ屋再開するんだぞ。働くんだぞ」

「わかってますよぉ」


 ああ、武器も新調したよ。今は鋼鉄製六角棒と鋼鉄製短棒に。魔法金属製だと軽いし強靱らしいんだけど、筋力つけたいし重いは武力だから。一応短剣も装備してますがロープ切ったりとか、補助装備になるでしょう。

 もちろんお金はサキから。抱きしめてやるか。


「サーキー。ぎゅううううう」

「くくくくくるし……くびが……し……ぬ」

「悪魔なくせに無様だな」

「げほげほっ。い、意味不明な行動を取るご主人様意味わかんないです。サキュバスは武力じゃないんです、チョークスリーパーとかやめてください」


 ここ楽……修行楽……永遠に修行していたい。

 そんなことを思っていると、カーンカーンカーンとヒゲソリ騎兵隊宿舎に緊急招集の鐘が鳴り響く。なんだろ。


「集まったか。ここより北、『ドドリーマ伯爵領ソレソーレ都市』にモンスターのスタンピードが発生した。これより我らは救援に向かう。二日後には出発するぞ!」


 トテモスゴイ部隊長が厳しい顔でそう告げる。


「「はっ!!」」


 ついにヒゲソリ騎兵隊としてのお仕事が始まるのかぁ!

 存分に鍛えたからな、目に物見せてやる!



 二日かけて食料などの準備をし、他のヒゲソリ騎兵隊と合流する。

 みんなたくましい体、自信に満ちあふれた顔をしている。

 これは私が出る幕も無いな。後ろでのんびりしていよう。


「揃ったな、これより早足走法で向かう。休みなく走らせる。到着は二日後の深夜未明予定だ」


 げえ、関羽。

 寝ずの走りかー当然だけど眠いんだよな。

 ぽちに走りは任せて途中で休憩睡眠しておくか。


 ぽちと大豆は何も引っ張らずに走り、小豆にリアカー引かせてサキと道具、食料を運ばせることに。

 他のヒゲソリ騎兵隊は替えの馬に積んでいる感じだね。替えの馬があるってことにびっくりだけどね。ヒゲソリ騎兵隊は基本的に繁殖が大変なモンスター馬だからねえ……。


 犬が馬についてこれるのかって憤慨していた騎士もいるけど、もう何年も生きているシャインオオカミは大きいんだよ。一五〇センチないくらいのサキの身長を超えるくらいには。

 レア種であるシャインオオカミを舐めちゃいけない。ヒゲソリ騎兵隊の走りに十分ついてこれるのであった。

 ぽちはもう二トンくらいありそうな大きさだしねえ。

 そんなこんなでスタンピードの襲撃を受けているソレソーレ都市へと到着した。

 この異世界は街といえば壁がある城塞都市なんだけど、都市という大きさなので壁の外にまで住宅地が広がっている。破壊された住宅と、充満する血のにおいが鼻についた。


 到着したと同時に狼煙が壁の中から上がる。


「東の門に群がっているそうだ。各員楔形隊形を取れ。突っ込むぞ!」


 トテモスゴイ部隊長の指揮の下、我々三〇名のヒゲソリ騎兵隊が東の門まで駆け抜ける!

 東の門が見える。モンスターの集団が見える。ジャイアントやダイアオオカミ、ストーンゴーレムなど、以前見たスタンピードの比じゃ無いくらい大きいモンスターが門を殴っていた。


「突撃ー! どんなモンスターであろうと我々には勝てない!」


 パーパラパッパッパー


 突撃ラッパが鳴り響く。

 全速力でモンスターにぶつかっていくヒゲソリ騎兵隊。

 ぶつかったモンスターは吹き飛ばされ、槍で串刺しにされ。一気に門の前に騎兵隊が穴を開け、広がっていく。

 呼応するように門が開き、内側から伯爵領の兵士が打って出る。

 戦場は一気に乱戦と化した。


 ヒゲソリ騎兵隊は突撃をして敵の群れを通過したあと、再度引き返して突撃、を繰り返した。

 突撃するたびにモンスターの群れが小さくなっていく。


 私はぽちと連携して、急ぎランスとしてあつらえた棒に、師匠の形見である魔術の杖で先端を作り突撃していた。ぽちはその大きさで敵を吹き飛ばし踏み潰していく。突撃を繰り返すうちに棒が折れたが、鋼鉄の棒を振り回すことで敵を打撃。ストーンゴーレムの頭をかち割るなど、戦果を上げていた。


 サキは大豆と小豆に守ってもらいながら支援魔法を範囲でかけていた。

 魔族は上位種族とも言える存在である。ぶっちゃけ強い。その圧倒的な魔力からなる支援魔法のおかげでこちらの戦闘能力は底上げされている。

 怪我人はサキの元へ運ばれ、強力な回復魔法でケアされていった。

 サキは確実に味方部隊の屋台骨になっていたな。


 一時間もしないうちにモンスターの群れは打ち倒され、掃討戦が始まっていた。


 勝利!


 ヒゲソリ騎兵隊ってつえぇぇー!!

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